「凄い……ここが、“レストラン”という所ですか?」
お昼が訪れて、透たちは某有名チェーン店に来ていた。
安価でイタリアン料理が楽しめる、“入りやすい”が有名なお店だ。
「涼しい……、しかも良い匂い。これが一般向けの食堂だなんて」
「その代わり人は多いけどな、でもすぐ入れそうだ」
都内でアクセスしやすいこともあって、やはり少々混んでいる。
入店待ち票に名前を書いてすぐに座れたのは、幸運だった。
「よっし、めしメシ〜。ほいメニュー」
3人ともすっかり腹を空かしているので、足早にメニューを取る。
この際2枚しか無かったので、2人で1枚、1人で1枚に分配した。
ちなみに席配置は、透とテオドールが隣同士。
それを映すため、四条が対面に座っている。
「す、凄いです……! これが全部食事ですか? 色んな種類があって全部美味しそうですよ透っ!」
「そうだな。迷うか? テオ」
「はい、正直どれも捨て難いです」
初めてのレストランに、テンションが上がるテオドール。
隣に座っていた透に、グイッと身を寄せた。
近すぎて彼女の良い匂いが鼻を触る。
なんていうか、見れば見るほど端正な顔立ちだと思った。
こんなに可愛いなら、モデルやアイドルをやっていてもおかしくない。
「透、透! これ、ミラノ風ドリアっていうの……すごく美味しそうです! わたしの直感が美味だと言っています!」
「なら選べば良いと思うぞ、それ。実際人気メニューだし」
「はい! じゃあこれにします!」
ルンルンと、ショートパンツから出た細い足をプラプラ揺らす執行者。
ご機嫌なのが、体にまで現れていた。
ここまでずっと歩きっぱなしだったので、動きやすく涼しい体操服は正解だったと思う。
まぁ、そのせいで完全にロリドールなのだが。
「四条はどうする?」
「わたしは……そうですね、ペペロンチーノにします」
「意外だな、しょっぱいの好き?」
「こう見えて麺類が好きなんです、小さい頃好き嫌いが激しくて……唯一食べれたのがそれでした。あっ、もちろん今は克服してますよ」
「子供の頃の好き嫌い……わかるわーそれ、じゃあ四条も決定っと」
あとは自分だけかと思った時、透は真横で体を揺らす少女に聞いた。
「テオ、もう1品好きなの頼んで良いぞ」
「ほえ? どういうことですか?」
「せっかく来たのに1品で満足はもったいないだろ、俺の分とシェアして、色んな料理を楽しめば良い」
「そっ、そんな贅沢……許されるのですか!?」
「良いじゃん贅沢、観光客もてなすのに財布の金ケチるほど、日本人は貧相じゃねえぞ」
「じゃっ、じゃあ……イタリアンハンバーグ食べたいです! こんなお肉の塊……食べたことないので」
「オッケー、ハンバーグね」
透へ抱きつくように密着しながら、メニューを指差すテオドール。
注文票に該当する番号を書いて、店員さんに渡す。
さて、料理が到着するまで少し時間があった。
透は、さっきから気になっていたことを聞いてみる。
「ところでテオ」
「はい、なんでしょう」
お冷を美味しそうに飲み始めた少女へ、ぶっちゃけ聞いてみる。
「前から思ってたんだけど……、何で日本語わかるんだ? メニュー読むのも普通だったし」
そう、彼女の言語能力だ。
よほどのセンスが無い限り、外国人が日本語をここまで流暢に嗜むことは不可能。
まして異世界人––––透は不思議でならなかった。
「……本当は秘密なのですが、せっかくここまでおもてなしをしてくれたのです。……ちょっとくらいなら、教えてあげても良いですよ?」
「サンキュー」
錠前立案の懐柔計画成功が示された瞬間だった。
これで、ダンジョンの未知のベールが少し知れる。
「わたしや姉のベルセリオン、他の執行者も……みんなダンジョンマスターの“加護”を受けているんです」
「加護?」
「はい、祝福……とでも言いましょうか。その中の効果の1つに、あらゆる言語の自動翻訳があります」
「んー、つまり……」
ファンタジー感溢れすぎる答えに、透はスマホへメモしながら聞き返す。
「お前は端的に言えば、日本語自体はしゃべってないのか?」
「そうなりますね、わたしが口にした別の言語を……祝福が誰にでも伝わるよう変換しています」
「じゃあ口の動きがなんで一致してるんだ?」
「それも能力のおかげです、因果を捻じ曲げて日本語を喋ったように見せているだけですよ」
凄い力だった。
どうして異世界人が完璧に日本語を使いこなせるのか、これでハッキリした。
そこで、唐突に四条が喋りかける。
「Understood, I'll ask one question: Can you comprehend this even though it's in English?」
突然の英語、だがテオドールは微塵も動揺せず返した。
「はい、理解できています。それは英語というのですね?」
四条の顔が強張る。
「どうやら本当のようですね、驚きました」
「っとなると、テオは全世界の通訳者顔負けってわけだ。なんだ……こっちで飯食ってけるじゃん」
これがダンジョンの力……。
あまりにもファンタジーだが、現実ならば受け入れるしかない。
今は技研お手製の魔法手錠で魔力を縛っているが、本来の力が解放されれば……こんな少女でも軍人を体術で容易に上回る。
この際、聞けるだけ聞いてみることにした。
「なぁテオ、そもそもお前たちはなんで日本に来たんだ? 教えてくれると––––」
言いかけたところで、スマホが震える。
それは四条も同じようで、画面を見て思わず凍りつく。
【速報、九州南方で中国海軍の軍艦2隻が撃沈か】
付属していた動画には、この世のものとは思えない映像が映っていた。
竜のような怪物が、レーザーを吐いて中国軍艦を蒸発させているのだ。
それを見たテオドールが、顔色を変える。
「“アノマリー”……、もう目覚めていたなんて。いくらなんでも早過ぎる……ッ」
予定外だが、詳しく聞く必要があった。
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