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くまクマ熊ベアー 作者:くまなの

クマさん、新しい依頼を受ける

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786 クマさん、氷竜と戦う その3

 わたしの代わりにカガリさんが氷竜が吐く冷気に飲み込まれた。

 わたしがミスをしたせいでカガリさんが。

 酒飲みの幼女。

 危険があっても、一緒に戦ってくれる人。

 困ったときには助言をくれる人。


「カガリさん!」


 突き飛ばされたわたしは地面に転がり、すぐにカガリさんを探す。

 だけど氷竜から冷気が吐き出し続け、カガリさんの姿は見えない。

 普通の人が氷竜の冷気の直撃を喰らえば……。

 わたしのせいだ。

 わたしが氷竜と戦おうと言い出したからだ。

 クマ装備があるから、なんとかなると思っていた。

 カガリさんの一緒に来てくれると言う言葉が嬉しかった。

 やっぱり、断ればよかった。

 サクラになんて言えば……。

 氷竜から吐き出された冷気が収まる。


「カガリさん……」


 冷気が収まった場所に、カガリさんが浮かんでいた。


「カガリさん……」


 カガリさんは狐になっており、その狐の体から湯気が立ちあがっていた。

 浮かんでいたカガリさんの体がゆっくりと地面に降りていく。

 それと同時に、元の幼女の姿に戻る。

 わたしは駆け寄って、カガリさんを抱き止める。

 カガリさんの目がゆっくりと開く。


「妾の体に触れるな。火傷するぞ」


 カガリさんの体から湯気が出ている。

 どうやら、自分の体を熱くして冷気に耐えたみたいだ。

 本当に無事で良かった。

 自分のせいで、カガリさんにもしものことがあったら、自分が許せなくなる。


「大丈夫だよ。わたしの防具は特別だからね」


 わたしはカガリさんの体を抱き抱える。

 抱きしめるとカガリさんは嬉しそうにする。


「それで嬢ちゃんは大丈夫か……」


 危険な目にあったのはカガリさんなのに、わたしの心配をしてくれる。


「うん、わたしは大丈夫だよ。カガリさんこそ大丈夫なの?」


 今も体から蒸気があがっている。

 カガリさんの体から出る熱のせいか、周辺の雪や氷は溶けている。

 それだけ、カガリさんの体は熱いってことだ。

 だからこそ、氷竜が吐き出した冷気に耐えきることができた。


「大丈夫じゃ。じゃが、これ以上は戦えそうもない。すまない……」

「ううん、あとはわたしに任せて」


 わたしはくまゆるを召喚する。


「くまゆる、カガリさんをお願い」

「くぅ~ん」


 くまゆるは心配そうにカガリさんに寄ってくる。


「妾は熱いぞ」

「くぅ~ん」

「大丈夫だって」


 わたしはカガリさんをくまゆるの背中に乗せる。


「少し離れていて」


 カガリさんを乗せたくまゆるは離れていく。

 まさか、わたしのことを命を懸けて守ってくれる人がいるとは思わなかった。

 なんだろう。

 この世界に来て、わたしを助けてくれる人が増えた。

 わたしが守りたいと思うと同時に、わたしのことを守ってくれる人がいることに、少しだけ嬉しい気持ちになっている自分がいる。

 でも、自分のせいで、大切な人たちが傷つくのは自分が許せなくなる。

 あとで、ちゃんとカガリさんにお礼を言わないとね。

 それには氷竜を倒さないといけない。

 わたしは氷竜に目を向ける。

 先ほどから、視界の端には氷竜を入れていたけど、動いていない。

 もしかすると、冷気の連射は体の負担が大きかったのかもしれない。

 無茶をするほど、わたしを殺したかったのかな。

 二発目の冷気もクマの土が街を守ってくれていた。

 カガリさんの熱が弱めてくれたこともあって、耐えられたんだと思う。

 カガリさんは、わたしだけでなく、街も守った。


 氷竜は、わたしのことを睨むつける。

 首を上げ、空に向かって咆哮をあげる。

 空は暗くなり始めている。

 暗くなる前に決着を付ける。

 氷竜の周りを走る。

 炎がダメなら、電撃は?

 氷は温度が下がれば下がるほど電気は流れにくくなる。

 でも、氷竜は生物だ。

 なんでも確かめてみないと分からない。

 クマの電撃!

 クマの形をした電撃が氷竜の顔に向かって、飛んでいく。

 電撃のクマは氷竜の腕に弾き飛ばされる。

 痺れた様子はない。

 氷竜の尻尾が動く。

 尻尾を躱し、背中に回り込み、今度は土魔法を使う。

 先の尖らせた無数の槍が氷竜を襲う。

 だけど、氷竜の硬い皮膚に阻まれ、弾かれる。

 一本も刺さらない。

 なら風魔法。


「クマの風魔法」


 クマの刃となった無数の風魔法が氷竜を襲い、氷竜の体に命中するが、刃のスジができるだけだ。

 どれだけ硬いんだ。

 火、雷、土、風。

 どの魔法も効果がない。

 どうするか、氷竜を見ながら思考をフル回転させていると、氷竜の些細な行動に違和感を覚える。

 カガリさんが冷気を受けた場所。

 氷竜が避けているように感じだ。

 気のせい?

 今考えると、尻尾もそこまで延ばしてこなかった。

 わたしはカガリさんがいた場所に移動する。

 氷竜の動きに戸惑いみたいなものが起きる。

 なぜ。

 周囲はカガリさんの熱によって、周辺の氷や雪は溶け、水浸しになっているだけだ。

 冷気も熱によって、水に変わっている。

 もしかして、水を嫌がっている?

 氷竜の足を見る。

 氷が張り付いている。


「…………」


 思い返す。

 今までの戦いでもわたしが炎で雪や氷で溶かした場所を避ける行動をしていた。

 逆に冷気を吐き出して炎で溶けた水びたしの地面を氷らせていた。

 どうして、気づかなかった。

 氷竜は、随時、内から外へ冷たくしている。

 それが魔力なのか、氷竜の特有のものなのか分からない。

 ただ一点。

 体を冷やし続けているってことが分かれば問題はない。

 つまり、水を浴びれば凍る。

 氷に水は効かないって勝手に思い込んでいた。

 実際に、水では氷竜にダメージを与えることはできないと思う。

 でも、わたしの考えが間違っていなければ倒すことはできる。


 わたしは魔力を集める。

 そして、サッカーボールほどの大きさの水の玉を作り出す。

 水の玉を見た氷竜の翼が動く。

 逃がさない。

 水の玉が氷竜の横を通り、翼に命中する。

 水が命中したところが凍る。

 氷竜は無理矢理に翼を動かし、氷を砕くが、わたしがさせない。

 次々と水の玉が命中して、翼を凍らせていく。

 翼が動かなくなる。

 さらに足、手、いろいろな部位に水の玉を命中させて、氷らせていく。

 氷竜は無理矢理に体を動かし、体に付着した氷を砕いていくが、もう遅い。

 すでに魔法は完成している。

 氷竜の上にはクマの大きな水が作られている。


「これで終わりだよ」


 大きなクマの水の玉を下ろす。

 氷竜を包み込んだクマの水はバリバリと音を立てて、凍っていく。氷竜は逃げ出そうとするが、ただの水じゃない。

 わたしが作り上げたクマの水魔法だ。

 逃すわけがない。

 氷竜が移動するほうへ、クマの水を移動させるだけだ。

 氷竜の冷たい体によって凍っていく。さらに追い討ちをかけるように、わたしはクマの水を凍らせる。

 氷竜は自分の魔力で内側から、外側からわたしの魔力で凍りついていく。

 翼を動かすが凍りつき、動きを止め、足を動かそうとするが、凍っていく。

 腕を動かしもがくが、次第に氷竜は氷漬けになって動かなくなる。

 氷竜が氷漬けって、笑い話にもならない。

 でも、これで終わった。

 こんなことに気づけなかった自分のバカさ加減に、なんとも言えなくなる。

 もっと早くに気づいていれば、こんなに苦労はしなかった。

 カガリさんも危険な目に合わすこともなかった。


「嬢ちゃん、倒したのか」


 くまゆるに乗ったカガリさんがやってくる。

 あのまま倒れたままじゃなくてよかった。


「うん、見ての通りにね」


 氷竜は凍って動かない。


「でも、正確には氷の中に封じ込めただけだよ」


 さきほどから、探知スキルを使っているけど、氷竜の反応は消えない。

 つまり、氷の中で生きているってことだ。

 氷竜はただ凍りついただけだ。

 つまり氷が溶けて、解放されれば、動き出すってことだ。


「……確かに魔力を感じるのう」

「どうしたら、いいと思う?」

「そんなこと知らん。お主が凍らせて捕まえたのだろう」

「別に捕まえるつもりはなかったよ。ただ、水を凍らせるのを見て、もしかしたら、自分の冷気で自分自身を凍らせるんじゃないかと思って」


 さらにわたしの魔力で凍らせた。

 わたしが思っている以上に氷を壊すことはできないのかもしれない。


「じゃが、このままにしておくわけにはいかぬじゃろう」


 氷りを溶かせば、大変なことになるのは分かっている。

 だからといって、永久的に凍らせることはできない。

 氷竜が体から冷気を出すのを止めて、外部からも冷やすことを止めれば、氷は溶けると思う。


「だからと言って、カガリさんが大蛇の封印を見守ってきたように、ずっと氷竜の氷を見守ることなんてできないし」

「妾も嫌じゃぞ」

「誰も、カガリさんにお願いをするつもりはないよ」


 ムムルートさんにお願いして、半永久的に冷気がでる魔法陣を用意してもらうとか?

 そんな魔法陣があるか、しらないけど。


「口に向けて氷に小さい穴をあけて、毒でも流す?」

「お主、怖いことを思いつくのう」


 だって、倒す方法が思いつかないんだもん。


「それじゃ、カガリさんはなにかアイディアある?」

「海に落とす?」

「氷竜が冷気を止めれば、溶けると思うよ」


 氷竜が体温調整を自由にできればだけど。

 まあ、普通に考えればできると思うけど。


「本当にどうしようか」

「妾たちに解決することができないなら、あの氷竜に任せるしかないじゃろう」


 カガリさんは夕日が沈みかけているほうへ目を向ける。

 そこには、こちらに向かってくる氷竜がいる。

 しかも、二頭がこちらに向かっている。


「戦っていないよね?」

「戦っているようには見えんのう」

「追いかけているわけでもないよね?」

「追いかけているようにも見えないのう」


 さっきまで戦っていたよね?


「もしかして、仲良くなって妾たちを倒すことになっていなければいいが」

「怖いことを言わないでよ」


 二戦目はいやだよ。

 しかも、二頭同時なんて。

 そんなことを言い合っていると、氷竜がわたしたちの前に降りてくる。


氷竜と戦いが終わりました。たぶん……。


申し訳ありません。次回の水曜日はお休みにさせていただきます。

あと、フィナのねんどろいどが発売になりました。お店で見かけましたらよろしくお願いします。

明日には届くかな?(ネット注文済み)


【発売予定表】

【フィギュア】

フィナ、ねんどろいど 2024年1月20日予定 

KDcolle くまクマ熊ベアーぱーんち! ユナ 1/7スケール 2024年3月31日

グッドスマイルカンパニー、POP UP PARADE ユナ 発売中

【アニメ円盤】

1巻2023年7月26日発売

2巻2023年8月30日発売

3巻2023年9月27日発売

【書籍】

書籍20巻 2023年8月4日に発売しました。(次巻、20.5巻予定、作業中)

コミカライズ11巻 2023年12月1日に発売しました。

コミカライズ外伝 1巻 2023年6月2日発売しました。(2巻2023年3月1日発売予定)

文庫版9巻 2023年12月1日に発売しました。(表紙のユナとルイミンのBIGアクリルスタンドプレゼントキャンペーン応募締め切り2024年3月20日、抽選で20名様)


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。

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