ごみっと・SUN63号
ごみかん理事 小野寺 勲
そこで、同書の内容の真偽をめぐって議論を戦わせてもらうため、武田さんを始め8人のパネリストを迎えてのシンポジウムが急遽開催されることになり、ごみかんはこれを全面的に支援しました。 当日は、定員300人の会場が満席となる盛況で、質疑応答も活発に行われました。
◆ リサイクルはうまくいっていない
私にとってリサイクルする意味は、大量消費に歯止めをかけ、資源を節約することにあります。ペットボトルについては、プラスチック全体もそうですが、残念ながら、 リサイクルは消費の抑制にも資源の節約にもなっていません。 この事実を正面から受け止め、これからリサイクルを進める際にも、このことを心しておくことが大切なのではないかと思います。
◆ ペットボトルの輸出は止めよ
ペットボトルの半分以上が開発途上国に持ち出されています。そもそも、リサイクルは、自分のごみは自分で片付けようとして始めたわけですから、それをちゃんとやらないと誠意にかかわります。 先進国は、環境を汚すから片付けようとしているごみを、処理する能力もない開発途上国に持ち込み、キロ40円で売れているのだからいいじゃないかというのは全く納得できません。 ごみは豊かな生活の代償として出てくるわけですから、処理の仕方は焼却でもリサイクルでも何でもいいですけど、自分たちで処理すべきです。
◆ 紙のリサイクルは無意味
私は紙のリサイクルに全く反対です。日本は紙を使いすぎだと思っています。日本では森林が67%を占めていますが、日本人は材木としても紙としても日本の森林をほとんど利用せず、外国の森林を使っています。 だったら、紙のリサイクルを止めて、日本の森林を使い、せめて紙の消費ぐらいは自分たちの森林で賄える範囲で我慢したらいいと思います。
それから、紙をリサイクルすれば森林を守れるというウソを子供に教えてもらっては困ります。
◆ 材料リサイクルとバージン樹脂製造の比較
材料リサイクルの1Kg当たり使用エネルギーは4,412.4キロカロリーで、発電寄与分を差し引くと2,706.9キロカロリーとなります。 バージン樹脂を新しく作る場合の15,521.5キロカロリーと比べて1/6で済みます。
◆ ペットボトルのリサイクルは石油の無駄遣い?
1本のペットボトルを1回使って焼却する場合の石油消費量は95g(この本では96g)、リサイクルする場合の石油消費量は62.5g(同238g)で、石油消費量はリサイクルより焼却の方が多いのですが、この本ではリサイクルの石油消費量の数値が著しく大きく、逆転しています。
◆ ペットボトルの分別収集が進むとごみが増える?
平成11年~17年のペットボトルの分別回収量増加率とごみの増加率との間には相関関係がありません。分別回収を進めたからペットボトルの販売量が増えたのではなく、単にペットボトルが便利だから増えたのであって、リサイクルをやめて焼却しても販売量が減らないリスクの方が高いと思われます。
◆ 結論
単純焼却よりはリサイクルした方が石油も節約でき、受益者負担の原則を守れば税金の無駄遣いもありません。現実的には、リサイクルしつつリデュース・リユースできるような施策を打っていくべきです(分別収集費用を特定事業者負担にする等)。
◆ 意味・根拠が不明
この本には意味や根拠が不明な記述が多い。例えば 「分別回収するとごみが倍になった」(14p) 「資源を7倍使い、ごみが7倍増え、資源はほとんど再利用されていない」(19p) 「ペットボトルの形をしたごみはリサイクルによって4倍に増えた」(21p) 「1本のペットボトルのリサイクルに3.5倍の石油を使う」(22p)
◆「プラスチックはまとめて集めて焼却した方がよい」(36p)について
焼却に対する功罪の比較検討もなく、経済性だけで焼却を推奨していますが、焼却は大気汚染につながるだけで、何も得るところがなく、資源の節約にもなりません。
◆「ごみはごみ、分別しても資源にはならない
焼却するのが合理的、効率的」(50p)について
古紙・缶・びん等の分別収集や生ごみの堆肥化などによって資源化が進み、ごみ減量化に貢献しています。また、ヨーロッパのように焼却により80%程度のエネルギー回収をしている場合は、化石燃料がその分節約できますが、日本のようにほとんどエネルギー回収が行われない焼却は、資源の浪費と環境汚染そのものといえます。
◆ ペットボトルの輸出はバーゼル条約違反(63p)について
バーゼル条約は、有害物を含む廃棄物の越境移動を禁じたものであって、有害物質を含まないペット樹脂などは対象外です。廃ペットボトル(フレーク)は、古紙や金属スクラップと同様に、国際的な資源として流通しています。 廃棄物であったら、処理費を払わなければ外国へ輸出できません。
◆ リサイクルは消費を促進したか
この本では、リサイクルがペットボトルの大量生産・大量消費を促したと決めつけていますが、結果から見ると、確かに生産量は増えています。しかし、リサイクルしなかったとしても変わらなかったと思われ、これは決してリサイクルが消費を促したのではなく、ペットボトルの利便性が支持されたからだと思います。 ただし、小型ペットボトルが解禁される際に、リサイクルが免罪符となったという一面は否定できないと思います。
◆ リサイクルの意味
リサイクルは、自治体の廃棄物処理の観点から見れば、自治体のごみ処理量、すなわち焼却処理量と埋め立て処理量を減らすことに意味があります。リサイクルするということは、焼却施設や埋め立て処分場への持ち込みを中間で止めるわけですから、その点では大いに効果があります。
容リ法ができて、リサイクル量はかなり増えてきました。
◆ 転機を迎えたリサイクル
容リ法見直し論議の中で、リサイクルについては、社会全体のコストや環境の負荷を如何にして低減するかが検討されました。自治体にとっても、リサイクルには多額の費用がかかっていることから、これを契機に、単にごみ処理量を減らすということから、処理コストや環境負荷を減らすためにはどのようなリサイクルをしていけばいいのかを総合的に考えるべき段階に来ています。
◆ 家電リサイクルに対する誤解
この本では、家電リサイクル法ができるまでは自治体が1台500円で処理していたのに、法律ができて、販売店が回収するようになってから3,500円もかかるようになったといっています。しかし、500円でできるわけがなく、3,500円は自治体が税金で処理していたのです。
◆ この本の人気の秘密
どうしてこの本は人気があるのか。この本で「分別なんかやる必要がないんだよ。「そんなことやっても環境にいいわけがないのだから」といわれると、分別はいやだと思っていた人が爽快感を味わうわけです。 だが、これだと、何もしないことが一番いいことになります。
◆ リサイクル批判について
この本には「ペットボトルは3万トンしか再利用されていない」とありますが、実際には10万トン強(2006年度実績)が再利用されています。また、再利用することで、その分資源を節約することができます。
◆論理の飛躍について
例えば、この本では、明確な論拠を示さずに、「リサイクルを止めることが日本の環境をよくするためには欠かせない」(57p)と記しています。しかし、リサイクル率の上昇によって、1990年に6,103万トンだった最終処分量は、2000年には1,988万トンと67%も減少しています。
◆ ダイオキシンの犠牲者
ダイオキシンは史上最強の猛毒だとか、毒性は青酸カリの6万倍とかいわれています。野焼きもダイオキシンができるとして禁止されました。
所沢産のホウレンソウがダイオキシンに汚染されていると、テレビ朝日に報道された事件は、報道はウソだったと最高裁判決で決着がつきました。
◆ 毒物はダイオキシンだけではない
ダイオキシンは、ある程度の毒性はあるが、含まれていてもごく少量なので、お酒、タバコなどよりはるかに安全です。工業製品は、蛍光灯の水銀やテレビの鉛など多くの毒物を含んでいます。
しかし、便利な生活をするためには毒物を使わざるを得ず、多少の毒物は許容しながら生活していかなければいけません。
◆ 狂牛病の教訓を生かせ
イギリスでは、狂牛病の牛が一時4万頭に達しました。屠殺した牛の骨などを、捨てるのはもったいないとして、子牛に食べさせたのが原因です。リサイクルするために共食いさせたわけです。自然界の営みを大きく逸脱した行為には必ず異変が伴います。
スーパーやコンビニなどで売れ残った食品は、破砕・乾燥されブタやトリの飼料にされています。
◆ 「ダイオキシンは猛毒ではない」について
①「強い発がん性を持っているとも思われないし、急性毒性が非常に弱い」(和田攻東大名誉教授)⇒IARC(国際がん研究機関)は、ダイオキシンの中で最も毒性の強い2,3,7,8-TCDDを発がん性を有する物質に認定しており、低い用量で毒性が出ることは事実です。 毒性は急性毒性、致死毒性、発がん性だけではなく、次世代の生殖毒性、中枢神経毒性、免疫毒性が重要な問題なのです。
②「ベトナム戦争時に散布されたダイオキシン量の60倍が日本の水田にまかれたにもかかわらず、人が死んでいない」
◆ 「ダイオキシンは自然界に普通にあるものであり、数億年前から地上にあった」について
①「今では魚介類からもあまり検出されない」⇒養殖魚などから高濃度のダイオキシンが検出。
②「ダイオキシンが数億年前からあるのなら、進化の過程で、生物はその処理ができるはず」「ダイオキシン入りのご飯を食べても、死人どころか、患者も出ていない」
◆ 「毒物にしたいために行われる実験」について
①「ダイオキシンには毒性があるが、その影響は一定しているわけではない。これまで猛毒だと信じられていたのはどうしてか」⇒体内に毒物が入ってくる条件により、毒性の現れ方が多様なことは、毒性学の常識。 現在は、死亡や発がんではなく、次世代への影響とその毒性が出るメカニズムの解明が重要な研究課題です。
②「ある時、誰かが亜鉛を毒物にしたいと思い、亜鉛は毒物だと騒いだため、亜鉛不足で味がわからなくなる病気、味蕾障害が出るようになった」
◆ 「ダイオキシンは毒性がほとんどない」について
2001年に国連がストックホルム条約(POPs条約)を採択し「個々の化学物質(ダイオキシン、ジベンゾフラン、ヘキサクロロベンゼン、PCB)について、人的な発生源から放出される総量を削減するため、その放出を継続的に最小限にし、実行可能な場合には究極的に廃絶することを目標とした措置をとる」ということを締結国に義務付け日本も批准しています。ダイオキシンにはさまざまな毒性があって、その排出量を削減しなければならないことは、今や国際的常識です。
◆ 「水田中のダイオキシンの大部分は農薬起源であり、ダイオキシン汚染米を20年間食べ続けても誰も死ななかった」について
水田には農薬(PCPとCNP)由来のダイオキシンが残留していることは事実であり、農用地土壌基準の設定などさらなる対策が求められます。
ダイオキシンは土壌から稲への移行することはほとんどなく、コメの汚染濃度は他の食品に比較して極めて低濃度です。
◆ 「焼き鳥屋のオヤジさんはダイオキシンを吸い続けているのに健康である」について
ダイオキシンが大量に発生するのは、塩素系プラスチックなどの有機塩素化合物を混合焼却した場合だけであり、焼き鳥屋さんでダイオキシンが発生するはずがありません。
|