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ロックバンド「X JAPAN」のリーダー・YOSHIKIさんが、読売新聞のインタビューに応じた。「AIによって別の誰かの声で歌えるようになったが、法整備がされていない」と述べ、著作権などを巡るルール作りを進める必要性を訴えた。インタビューは昨年12月5日、英ロンドンで行った。(聞き手・ロサンゼルス支局 後藤香代)
YOSHIKIさんのインタビュー詳報
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早送り
AIの台頭をどう見るかは、正直すごく難しい問題だ。AIは人類がA地点からB地点まで行くのに100年かけてやってきたことも、1年、1か月、または1日でやってしまうということだと思う。AIは、早送りしているだけなのではないか。職業によっては有効な使い方ができるが、人間の仕事を奪ってしまう恐れもある。
AIと共存するには、AIを扱う人類が争い合うのではなく、助け合い、愛し合っていかないといけない。人類が互いに愛し合えれば、AIが人類の知能を上回る「シンギュラリティー」は来ないと思う。僕らの行動によって避けられるのではないか。僕は結構、ポジティブシンキング(物事を前向きに捉える考え方)だ。
ただ、ここ数年で爆発的に出てきた例として、「チャットGPT」に代表される(対話型)生成AIが挙げられる。「夜の海辺で星を見ながら」などとキーワードを入力すれば、曲ができてしまう。
■ 技術革新
音楽業界では、テクノロジーを何十年も前から使っている。録音したボーカルの音色や音程を変えるといったことは、日に日に質が上がってきている。
例えば、バンドのメンバーが一緒にレコーディングするのが初歩段階だとしたら、今はそれぞれのパートで別々にレコーディングして(編集で)合わせるなど色々なことができるようになってきている。ボーカル撮りをやっても、たくさんの編集の過程がある。ファースト・テイク(一発撮り)も実は色々なやり方がある。
クラシック音楽は、ほぼその場で(演奏を)やるが、ロックのショーの場合、色々な音を重ねることもある。AIは音楽業界にずっと前から入り込んでいる。昔はアナログテープに録音したのが、デジタルになり、その過程で(コンピューター上でシンセサイザー機能を提供する)ソフトウェア・シンセサイザーなど色々なテクノロジーが絡んでいる。
どこまで人間が作ったか、選別難しく
テクノロジーは緩やかに進歩してきたが、生成AIの登場でそのカーブが急に上がった感じがする。
何十年も前、インターネットが現れた時も同じような議論が起きた。音楽の世界だと、例えばアナログで記録されていたものが、CD、デジタルになり、簡単にコピーできるようになった。続いてダウンロードが出てきた。
今度はAIによって、(ネット上で音楽を配信する)ストリーミング・プラットフォームに色んな曲がたくさん出ている。どこまで人間が作った曲で、どこからAIが作った曲なのか、選別が難しくなっている。AIによって、別の誰かの声で歌えるようになったが、法整備がされていない。
(カナダ出身のミュージシャン)グライムスは、AI生成で自分の声を使っても構わないと公言している。うまく使った場合は印税の50%を分けても構わないなど彼女なりのルールをつくっている。
勝手に使われる前に、自身の著作権や肖像権を申請しておくという方法もあると思う。
ネット上に音楽あふれ収入は減少
AIを使えば、誰でも音楽を作って世界中に配信できる。そうすると1年かけて作り上げた曲と、30分で作った曲が同じふるいにかけられる。収入が期待できないと、ヒット曲を作りたいというインセンティブ(動機付け)が弱まる。
CD(が全盛)の時代、自分の作った曲が大ヒットしたら、今では考えられない額のお金が入ってきた。あの頃は業界全体が活性化し、その過程で良い芸術作品もできた。
音楽制作の現場でもAIが台頭してきた今、どういったインセンティブで芸術ができるのかという視点が大事だと思う。
ストリーミングの普及で音楽を聞く人は増えた。しかし、選ばれたものだけではなく、色々な音楽がネット上にあふれ、ミュージシャンの収入は減った。音楽制作のエンジニアも経済的に苦しくなってきている。
配信だけでなく、生身に近いステージ上でもAIが台頭する日が来るのだろう。
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