「AIとどのように共存していくか」「法整備よりテクノロジーが早く進化」…YOSHIKIさん

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守りに入らない

芥川賞の九段理江さん「ぐらぐらしている小説」「5%くらい生成AIの文章」…「完成度高く稀有」と評され

 CDやストリーミングが登場した時、「簡単にコピーされる」「ダウンロードはダメだ」と流れに逆らったアーティストがたくさんいた。しかし、その流れは止められなかった。

 ネットの普及によって、自分の音楽を世界中に広められるようになった。昔みたいにレコードショップで購入しなくても、気軽に音楽を聞ける。どんな局面でも長所と短所はあるが、もし僕がストリーミングの流れに反旗を翻していたら、今の自分はなかったと思う。

 僕はメンバーのhide(「X JAPAN」のギタリスト)を亡くしている。X JAPANの再結成コンサートを行った時は、hideのホログラム(立体映像)を使った。2023年に公開したドキュメンタリー映画では、hideが約30年前に演奏した映像と僕の演奏を合体させた。コンピューターを使ってテンポやピッチを合わせた。テクノロジーなしではできなかったことだ。

インタビューに応じるYOSHIKIさん
インタビューに応じるYOSHIKIさん

 僕は結構、オープン・マインド(先入観にとらわれない)なので、両方の観点から物事を見るようにしている。芸術にとって守りに入ることが良いのかというと、クエスチョンマーク(疑問符)だ。

 僕らがベートーベンの時代から進化していなかったとする。これはエレクトリックの機械を通してはいけない、バイオリンはバイオリンの音のままでないといけないという考えだったら、今のEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)はなかっただろう。

行き過ぎ

 僕は元々クラシック音楽が大好きだ。僕も楽曲を作るときは譜面に書くし、自分の音楽を通してファンと心を通じ合わせてきた。生成AIを使って「青と赤のイメージで」と言っただけで曲ができてしまったら、それは行き過ぎだ。ミュージシャンやアーティストとして、どこまで認めるのか。音楽業界はAIの定義をある程度決めた上で議論しないといけない。

 僕のこれまでの経験を全て学んで僕の音楽を完璧に再現するAIのYOSHIKIが現れ、本物の僕との違いが分からなくなったらどうだろう。僕ではない誰かが、僕を装ってAIに曲を作らせてしまうという懸念がある。自分の音楽がコピーされたら、著作権の侵害だ。プロとしては、プライドの問題でもある。

法律だけではなく、問われる意識

 AIによって俳優のライクネス(肖像)だけでなく、声まで勝手に使われてしまう。俳優を簡単に若返らせたり、年を取らせたりできる。ハリウッドが直面している問題は、AIを巡る著作権や肖像権などの法整備が進んでいないことが根底にある。今はどう考えても、法整備よりテクノロジーのほうが早く進んでいる。ただ法律を作るだけではダメで、人々の意識も問われていると思う。

 米グラミー賞の主催団体は23年、「選考、受賞の対象は人間のクリエイターのみ」とする新たなルールを設けたが、僕も主催団体の会員として、現時点ではそうあるべきだと思っている。

 ただ、最近の作品には多かれ少なかれ、デジタル技術が使われている。比率の問題だ。選考する側も技術の進歩に合わせて選考基準を変えながら、臨機応変に対応しないといけない。

 とはいえ、受賞後に実はAIが作ったものだと判明するケースも出てくるだろう。AIの技術はそれくらいのレベルに到達している。実際には作り手が人間なのか、AIなのかを選別するのは難しい。僕のようなプロが聞いても、分からなくなると思う。

業界が発展か壊滅か岐路に

 音楽も映像もテクノロジーにあふれ、混乱に陥っている。まさしく今、皆が暗闇の中を必死に走りながら議論しているところだ。

 「AIはダメだ」と言っても、この流れは止められない。AIとどのように共存していくのかということだ。音楽や映像など各業界でルールを決め、作る側も見る側も、AIによって業界が発展するか壊滅するか(岐路に立っていると)理解しておく必要がある。

 素晴らしい芸術が生まれる環境かどうかを基準に考えれば、今後取るべき対応が分かるだろう。芸術家が人に感動を与える芸術作品を作れる環境であってほしい。素晴らしい芸術作品が生まれれば、皆さんに還元される。

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4906215 0 音楽 2024/01/07 05:00:00 2024/01/07 05:22:32 2024/01/07 05:22:32 https://www.yomiuri.co.jp/media/2024/01/20240105-OYT1I50071-T.jpg?type=thumbnail
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