【特集】考える女子、支える知の拠点…玉川聖学院

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自由が丘の閑静な住宅街にある玉川聖学院
自由が丘の閑静な住宅街にある玉川聖学院

 中高一貫のミッション系の女子校として60年を超える歴史を刻む玉川聖学院中等部・高等部(東京都世田谷区)。同校は自主的な学習や読書を支援するために学校図書館を「情報センター」とし、生徒の「考える力」を育むことに力を注ぎ、大きな成果を上げている。

学校行事で課題作文…自分で考え表現する

安藤理恵子学院長
安藤理恵子学院長

 玉川聖学院中等部では、生徒に自分の内面をみつめ、自分で考え表現する力をつけさせるために、生徒自身が文章を考え、組み立てさせる機会を多く設けているという。

 「文章を書くことは考えて表現することそのものですから、学校行事やさまざまな取り組みなど、ことあるごとに感想文や作文を課して、生徒の思考力と表現力を磨いています。本学では、中等部の1年に2年の学習を先取りするというカリキュラムはいっさい組んでいません。中学生に大切なのは心を養うことと考える力を育むことという理念のもと、中等部の1・2年には調べ学習、3年には修了論文に時間を割いています」と語るのは、玉川聖学院の安藤理恵子学院長。

ネットはNG!…中等部1年の調べ学習

司書教諭の鳴川浩子さん(左)と歌川美歌さん
司書教諭の鳴川浩子さん(左)と歌川美歌さん

 調べ学習は、中等部1年の夏休みに、歴史上の人物や出来事の中から調べたい項目を三つ選び、B4用紙にまとめるという課題。ここでの約束事は、インターネットを使って調べてはいけないということ。その狙いについて、情報センターでの授業を担当する司書教諭の鳴川浩子さんに話を聞いた。

 「今の子どもたちはインターネットについて何も学ばず、ただ何となく使っているだけで使い方を理解しているとはいえません。本を読む機会も少なく、本から情報を集めた経験のない子が多いです。そこで、中学1年から本に触れる機会を設けて、本の中から必要な情報を選びとり、自分で文章を組み立てることに慣れてもらうようにしています。中3で取り組む修了論文では、必ず本を使いますので、その練習でもあります」

 この調べ学習は、インターネットだけでなく教科書や学習参考書の類いも使ってはいけない決まり。そんな生徒たちを支援するのが、情報センターである。ここには司書教諭が常駐。さらに、4万5000冊の書籍がそろえられている。生徒たちはここを訪れ、先生に相談したり、自分の力で必要な書物を見つけ出したりしていく。一見、本を探す時間は無駄のように思えるかもしれないが、そうした時間が課題のまとめ方や資料の使い方などについて考える時間となり、書架の間を歩きまわるうちに面白そうな本を見つけ、新たな発見をする機会にもなるという。

 中1で、こうした授業を通して本を活用してリポートを作成する方法を学ぶ。中2ではグループでの研究を行い、自分らしいテーマを見つける難しさとその方法を学び、中3で修了論文へと進む。この論文は学習の集大成として位置付けられており、その意義は非常に大きい。

自由なテーマで自分と向き合う…中3修了論文

情報センターの自習スペース
情報センターの自習スペース

 修了論文では、生徒がフィールドワークなども織り交ぜながら、自分の興味あることについて、大学の卒業論文さながらの論文をまとめる。テーマは自由で、「ジブリが人気の理由とは」といった身近なものから「人間の死と心の問題」といった哲学的なものまであるが、どれも、自分の力で書き上げる。実際に修了論文を書き上げ高校に進学した生徒に話を聞くと、情報センターが大きな助けになったという。

 「私は、『太宰治におけるキリスト像』というテーマで修了論文を書きました。『走れメロス』を読んで以来のファンだったので、太宰治について取り上げるのはすんなり決まったのですが、どのような切り口にするかでずいぶん悩まされました。そんな時に、助けてくれたのが情報センターでした。そこには先生もいますし、私と同じように悩む生徒がたくさん集まってきていましたから、みんなで意見を交わし、いろいろな発想を得られました」

 このようにテーマについて深く考えることは、生徒にとって大切な経験になる。

 「修了論文を書くことは、論理的に文章を組み立てるのはもちろんですが、興味のあることについて『なぜ興味があるんだろう』と考え、自分と向き合う機会にもなります。また、考えるだけでなく、友達や先生と話す中で新たな発見をするという体験も大切です」と語るのは情報センターの司書教諭の歌川美歌さん。

 情報センターは私語禁止の図書館とは違い、友達や司書の先生ともおしゃべりができて、気軽に立ち寄れる図書館づくりをしているという。

 「心が柔らかい若いうちに異文化を認める寛容な心を持ってほしいと思っています。しかし、ただ受け入れるのではなく、自分の考え方との共通点や違いを見いだし、相手にしっかり自分の価値観を説明できるようになってほしいですね。そこまでできるようになって初めて、本学がめざす、人と人との間に調和を作り出し、異文化の人たちをつないで協力しながら共に生きていける女性になれると思います」と理想とする女性像を語る安藤学院長。

 同校では、グローバル化時代に世界で通用する考える力と対話力を兼ね備えた女子力育成をめざしている。

 (文と写真:葛西由恵)

 玉川聖学院中等部・高等部について、詳しく知りたい方はこちら

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403804 0 玉川聖学院中等部・高等部 2014/07/18 12:51:00 2022/07/08 10:08:19 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20140718-OYT8I50058-T.jpg?type=thumbnail
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