どうなる?2024年度調剤報酬改定〜ぺんぎん薬剤師がR6.1.12 中医協の資料を読んで妄想してみた。
タイトルに「妄想」って入っていますが、自分は中医協委員や厚労省の方々と親しいわけではないので何か事実を知っているわけではありません。
ただ、常に中医協の議論や業界のニュースを追っている者として、今ある情報の中から診療報酬改定がどうなるかを「妄想」しています。
こうなるんじゃないかなぁに加えて、こうなったらいいなぁも入ってしまっています。
とは言っても「妄想」の根拠は集めているので、皆さんなりの解釈を考えていただくきっかけにしていただければ幸いです。
改定はただ点数が変化するものではなく、これからの薬剤師(医療)が進む道を示すものです。
今ある道をただ歩むだけでなく、その先を見据えて未来を目指すためには、改定に込められたメッセージを読み取る必要があります。
そんなきっかけになれば嬉しいなと思って書きました。
はじめに
令和6年度診療報酬改定の議論もいよいよ大詰め。
2024年1月12日の中医協で公開された資料(これまでの議論の整理(案)について)では短冊の原案とも言える内容となっています。
今後、さらに議論が進められ、1月の終わりに点数や施設基準に関する数字が●(黒丸)の短冊(個別改定項目(その1)について)が公開され、2月の上旬に答申という流れになっています。
ということで、慌てなくても2週間もすれば令和6年度診療報酬改定の全貌が見えてくるのですが、今わかっている資料をもとにあれこれ気を揉むのも診療報酬改定の醍醐味だと思います。
「そんなのお前だけだ!」という声が聞こえてきそうですが、資料を目にするたびに、改定後の薬局、国が求める薬局・薬剤師の姿を想像しておくのは、決して無駄なことではないと思います。
調剤報酬改定は誰のためのもの?
診療報酬改定の議論が進むにつれ、「国は何もわかっていない!」、「一度現場を見てみろ!」なんて声を見かけることがありますが、本当にそうでしょうか?
自分は全くそうは思いません。
財務省からの限られた予算、医師会、歯科医師会、さらには支払側(保険者)との駆け引きの中、薬局に対する予算を勝ち取るために、専門家や厚労省技官の方々が考えぬいて作り出したもの。
自分は調剤報酬改定の内容をそういうものと思っています。
もちろん、立場によっては意にそぐわないこともあると思いますし、経営を持続することが困難になるほどのダメージを受けることもあると思うので、そういう立場の方を否定するものではありません。
ですが、基本的には、調剤報酬は国が薬局に向けて出したパスだと思います。
それをどう受け取り、どう活用するか?
国民や他の医療職種、国からの評価に繋げることができるかどうかは、薬局、薬剤師にかかっています。
新設された点数の算定要件が、患者さんの理解を得られるものではないと感じるのであれば、算定要件を満たした上で患者さんに納得してもらうためには、どう行動すればいいか?どのような薬剤師であればいいかを考えるべきです。
なので自分は、調剤報酬改定は「薬剤師のため」のものだと思っています。
薬剤師がどう変わっていくべきか、そのために何を行っていくべきなのか、そこを明確に示してくれるのが調剤報酬改定です。
国からの、厚労省からのパスをしっかり受け取り、シュートに繋げて、得点を取れるかどうかは薬剤師次第です。
令和6年度診療報酬改定の背景
資料を読む前に、令和6年度診療報酬改定における背景を簡単に整理しておきたいと思います。
ポスト2025年を見据えた最後の改定(地域包括ケアにおける薬局の姿が描かれる)
介護報酬・障害福祉サービス等報酬改定と合わせたトリプル改定(6年に1度)
診療報酬改定DX(医療DX)が盛り込まれる初の改定
オンライン資格確認が義務化されて初めての改定
診療報酬改定の後ろ倒しが実施され、改定は6月に実施される(薬価改定は従来通り4月)
第8次医療計画と同時に実施される改定(病院薬剤師の確保や薬局における新興感染症対策が盛り込まれる可能性が高い)
ざっとこんなところでしょうか?
これとは別に(別ではないかも)医師のタスクシフトシェアも大きなテーマになっている気がします。
令和6年度診療報酬改定の改定率
改定率については2023年12月20日に開催された中央社会保険医療協議会 総会(第574回)の中ですでに公開されています。
○令和6年度診療報酬改定の改定率等について
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001180717.pdf
診療報酬改定本体の改定率は「+0.88%」で国費800億円程度が該当します。
本体改定率だけを見ると過去10年で最大の改定率になります!
ただ、手放しで喜ぶわけにもいきません。
というのも、0.88%の中には以下の内容が含まれているからです。
1、看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種の賃上げ(+0.61%)
令和6年度にベア+2.5%、令和7年度にベア+2.0%を実施していくための特例的な対応
2、入院時の食費基準額の引き上げ(+0.06%)
1食当たり30円(うち、患者負担については、原則、1食当たり30円、低所得者については、所得区分等に応じて 10~20円)
3、生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等の再編等の効率化・適正化 (▲0.25%)
リフィル処方の促進や外来管理加算の廃止が議論されてますね・・・。
ということで、この1〜3を差し引いた、いわば真の本体改定率は「+0.46%」になります。
各科改定率は
医科:+0.52%
歯科:+0.57%
調剤:+0.16%
となっており、「1:1.1:0.3(医科:歯科:調剤)」は今回も固辞されました。
が、上で紹介した3(▲0.25%)は以下を中心とした実質引き下げとなっており、実際の改定は各科改定率の比とは異なるものになりそうです。(これはすごいことだと思う・・・)
そして、さらに。
真の本体改定率は「+0.46%」と書きましたが、この中には
40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者の賃上げに資する措置分(+0.28%程度)
が含まれます。
ということは、真の真の本体改定率は「+0.18%」ってことになってしまいますね。
賃上げ対応とは言ってもプラス改定には変わりはないのですが、特別ボーナス的な部分を差し引けばこれまでの改定で一番厳しい改定になります。
+0.18%・・・。
実質的な点数評価については、プラスの部分があれば同じくらいマイナスの部分が出てくる。
そんなイメージがいいんだと思います。
新しい評価ができても、元の点数が分けられるようなものになる可能性がありますね…。
これまでの議論の整理(案)
さあ、それでは資料を読み進めていきましょう。
Twitter・・・じゃなくてXでは見逃してて触れていないものもあるので、そこも触れていきますね。
中央社会保険医療協議会 総会(第578回)議事次第
○これまでの議論の整理(案)について
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001189275.pdf
薬剤師の賃上げについて
Ⅰ 現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進
Ⅰ-1 医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取組
(1) 看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種について、賃上げを実施していくため、新たな評価を行う。
(5) 地域の医薬品供給拠点としての役割を担い、地域医療に貢献する薬局の整備を進めていくこと、職員の賃上げを実施すること等の観点から、夜間・休日対応を含めた、薬局における体制に係る調剤基本料等の評価を見直す。
病院薬剤師の賃上げについては改定率の資料で明確に示されています。 ※1 40 歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者の賃上げに資する措置分(+0.28%程度)を含む。
※2 うち、看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種(上記※1を除く)について、令和6年度にベア+2.5%、令和7年度にベア+2.0%を実施していくための特例的な対応 +0.61%
気になるのは「夜間・休日対応を含めた、薬局における体制に係る調剤基本料等の評価」です。
夜間・休日対応については、中央社会保険医療協議会 総会(第562回)の調剤(その2)についてに資料が掲載されています。
24時間調剤・在宅業務についてはそれを周知することが地域支援体制加算の施設基準に含まれています。
ですが、地域支援体制加算を算定していなくても24時間対応を行なっている薬局は多いですし、実際ニーズもあるはずです。
議論の中では複数の薬局と連携して夜間・休日対応を行うことがあげられていましたが、これが改定の中でどう評価されるのでしょうか?
地域支援体制加算の評価から分離される形で、輪番制の地域体制に参加されたら加算される新たな点数が設計され、さらにそれは賃上げに割り振ることが明記されるのか?
賃上げに回すことを踏まえても(ここはそんなにこだわるところではないかもしれません)、新しい評価になる可能性が高いので注目したい部分です。
輪番制が盛り込まれるのであれば、夜間・休日対応の方が(後に出てくる感染症の話よりも)よっぽど連携強化加算っぽいけどなあ・・・。
病院薬剤師の評価の見直し
Ⅰ 現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進
Ⅰ-2 各職種がそれぞれの高い専門性を十分に発揮するための勤務環境の改善、タスク・シェアリング/タスク・シフティング、チーム医療の推進
(3) 病棟における多職種連携によるポリファーマシー対策をさらに推進する観点から、業務の合理化がなされるよう、薬剤総合評価調整加算について、要件を見直す。
(4) 病棟薬剤業務に関して、チーム医療の推進と薬物治療の質の向上を図る観点から、地域医療に係る業務の実践的な修得を含めた病院薬剤師の研修体制が整備された医療機関の病棟薬剤業務について、新たな評価を行う。
(5) 悪性腫瘍の患者に対する外来における安心・安全な化学療法の実施を推進する観点から、外来腫瘍化学療法診療料について、要件及び評価を見直すとともに、診察前に薬剤師が服薬状況等の確認・評価を行い、医師に情報提供、処方提案等を行った場合について新たな評価を行う。
薬剤総合評価調整加算においては、必要に応じて医師から薬剤師への照会が行われることが必要とされてます。
今回の資料では、薬剤師に関連する部分が改定に含まれるかどうかはわかりませんが、ポリファーマシー対策において薬剤師の存在は欠かせないものなので、その役割が強くなるような改定が期待されます。
薬剤師の病棟業務に対する新たな評価については、研修体制の評価と思われるので、加算が新設されるのでしょうか?
外来腫瘍化学療法診療料における薬剤師の評価ついては中央社会保険医療協議会 総会(第559回)の個別事項(その2)についてに記載されています。
これは薬剤師の専門性を活かすと同時に、タスクシフトの観点においても重要と思うので、しっかりと評価してもらいたいところですね。
オンライン資格確認等システムの活用に関する評価
Ⅱ ポスト 2025 を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療 DX を含めた医療機能の分化・強化、連携の推進
Ⅱ-1 医療 DX の推進による医療情報の有効活用、遠隔医療の推進
(1) オンライン資格確認等システムの活用により医療 DX を推進し、質の高い医療を提供する観点から、以下の見直しを行う。
① 保険医療機関・薬局におけるオンライン資格確認等システムの導入が原則義務化され、オンライン資格確認に係る体制が整備されていることを踏まえ、医療情報・システム基盤整備体制充実加算の評価の在り方を見直す。
② オンライン資格確認の導入による診療情報・薬剤情報の取得・活用の推進に加え、「医療DXの推進に関する工程表」に基づき、利用実績に応じた評価、電子処方箋の更なる普及や電子カルテ情報共有サービスの整備を進めることとされていることを踏まえ、医療DXを推進する体制について、新たな評価を行う。
③ 居宅同意取得型のオンライン資格確認等システム、電子処方箋及び電子カルテ情報共有サービスにより、在宅医療における診療計画の作成において取得された患者の診療情報や薬剤情報を活用することで質の高い医療を提供した場合について、新たな評価を行う。
医療情報・システム基盤整備体制充実加算の評価見直しについては、まあ、当然ですよね。
すでに義務化されており、経過措置も終了したわけですから、評価するのであれば一歩進んだものにしないといけません。
となるとマイナ保険証の利用(マイナ受付)を行なってもらい、薬剤情報や診療情報を活用することが次の目標になるわけですが、マイナ受付についてはすでに補助金が決定しています。
マイナ保険証利用促進のための医療機関等への支援について|厚生労働省
となると、評価されるとすれば、実際に薬剤情報・診療情報を活用した場合になるのですが、そこはどうでしょうね。
4月からは居宅同意取得型のオンライン資格確認の運用が開始されます。
これについては導入を進める必要があるので医療情報・システム基盤整備体制充実加算のような評価が設定されるのではないかと思っていましたが、文章を見る限り、あったとしても少し限定されたものになりそうですね。
補助金が出ることが決定しているものではあるので、調剤での評価はないかもしれませんね。
老健(介護老人保健施設)等入所者に対する薬学管理の評価
Ⅱ ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進
Ⅱ-2 生活に配慮した医療の推進など地域包括ケアシステムの深化・推進のための取組
(4) 医療と介護の両方を必要とする状態の患者が可能な限り施設での生活を継続するために、医療保険で給付できる医療サービスの範囲を以下のとおり見直す。
③ 保険薬局の薬剤師が介護老人保健施設等に入所する患者に対し、専門的な薬学管理が必要な薬剤の調剤や服薬指導等を行った場合の医療保険と介護保険の給付調整の範囲を見直す。
Ⅱ ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療 DX を含めた医療機能の分化・強化、連携の推進
Ⅱ-8 質の高い在宅医療・訪問看護の確保
(31) 介護保険施設における適切な薬剤提供や服薬管理等を推進するため、短期入所を含めた介護老人福祉施設入所者に係る薬学管理の評価を見直す。
中央社会保険医療協議会 総会(第560回)の個別事項(その3)についての中で老健についての話題が掲載されています。
このように従来、老健における投薬は介護保険の範囲に含まれており、基本的に院外処方により薬局が調剤を行うことはありませんでした。
ただし、一部例外として、抗悪性腫瘍剤(内服)、疼痛コントロールのための医療用麻薬、B型肝炎・C型肝炎等に対する抗ウイルス剤(新型コロナウイルス治療薬を含む)、人工透析患者に対するエリスロポエチン、ダルベポエチン、B型肝炎・C型肝炎に対するインターフェロン製剤、血友病の治療に係る血液凝固因子製剤、血液凝固因子抗体迂回活性複合体等については院外処方による対応が可能となっていました。(介護老人保健施設入所者に対する処方せんの交付について)
今回、医療保険で対応可能な範囲が見直されることになりそうです。
特に薬学管理についての評価はこれまで存在しなかったので期待したいところです。
振興感染症等への対応
今回の改定では新型コロナウイルスのパンデミックで行った対応を、平時の対応としていくための改定が行われる予定です。 Ⅱ ポスト 2025 を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療 DX を含めた医療機能の分化・強化、連携の推進
Ⅱ-6 新興感染症等に対応できる地域における医療提供体制の構築に向けた取組
(6) 薬局における新興感染症発生・まん延時に対応する体制整備の観点から、第二種協定指定医療機関の指定要件等を踏まえ、連携強化加算について、要件及び評価を見直す。
(7) 感染症に係る対応として、薬局が自宅・宿泊療養者等の患者に対して行う服薬指導・薬剤交付について、新たな評価を行う。
連携強化加算
まずは連携強化加算に関する部分です。 〇 第二種協定指定医療機関の指定要件
第二種協定指定医療機関の指定要件は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律」の一部の施行等について(通知)に以下のように記載されています。
⑶ 外出自粛対象者への医療の提供を実施する薬局について(指定医療機関基準第4の3関係)
・ 当該薬局に所属する者に対して、最新の知見に基づき適切な感染防止等の措置を実施することが可能であること。
・ 新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間において、都道府県知事からの要請を受けて、外出自粛対象者に対して医薬品等対応(調剤・医薬品等交付・服薬指導等)を行う体制が整っていると認められること。
また、感染症については中央社会保険医療協議会 総会(第550回)の感染症について(その1)、中央社会保険医療協議会 総会(第570回)の感染症対応について(その2)に記載されています。
第二種協定指定医療機関はその名前からもわかるように、都道府県と医療機関が協定を締結することで指定される仕組みになっています。
平時に協定を締結、指定を受けた薬局は当然、感染症発生時には都道府県の指示に従い、夜間・休日等の時間外の対応や必要な薬の患者への迅速な供給が求められるためその評価が必要であるという意見が出ています。
少し気になるのは、「指定されている薬局」ではなく、「指定要件等を踏まえ」となっていることに意味があるのかないのかです。おそらくは「指定されている薬局」になるとは思うのですが・・・。
そうなると、連携強化加算を算定できる薬局は明確に分けられることになりますね。
あと、備蓄に関する部分はどうなるんでしょうか?
自宅療養等を行なっている患者への緊急訪問について
上記と重複する部分もありますが、自宅等で療養する新型コロナウイルス感染症患者に対して、緊急訪問を行った場合の評価について、あくまでも特例的なものであり、恒常的なものにするための評価が必要という意見が出ています。
かかりつけ薬剤師に関する評価
Ⅱ ポスト 2025 を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療 DX を含めた医療機能の分化・強化、連携の推進
Ⅱ-7 かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師の機能の評価
(5) かかりつけ薬剤師の業務を推進するため、かかりつけ薬剤師指導料と個別に評価されている薬学的管理の業務、算定している薬剤師の業務実態等を踏まえ、かかりつけ薬剤師が算定できる評価とともに、かかりつけ薬剤師としての要件を見直す。
(6) 服薬情報の一元的・継続的把握の推進の観点から、同一薬局の利用をさらに進めるため、かかりつけ薬剤師指導料等を算定する患者に対して、かかりつけ薬剤師以外がやむを得ず対応する場合に係る要件について見直す。
(7) 薬剤師による充実した薬学管理を推進し、質の高い薬物療法が適用できるようにするため、地域における医療機関と連携して行う、調剤後の薬学管理に係る評価を見直す。
かかりつけ薬剤師については、中央社会保険医療協議会 総会(第550回)の調剤について(その1)と、中央社会保険医療協議会 総会(第562回)の調剤(その2)についてに資料が掲載されています。
中医協の議論の中で、かかりつけ薬剤師に対する評価はとても高い印象でした。
かかりつけ薬剤師指導料が新設された際は点数化するには無理がある制度じゃないかと思いましたし、少し強引な形で契約数を増やす例も問題となりましたが、実際に契約し、算定する以上は何かしなければいけないと思う、薬剤師の真面目なところがいい形で結果に結びついているんじゃないかと思います。
薬学的な管理を担う責任もですが、対人関係を深める意味もかかりつけ薬剤師にはあると思います。
地域包括ケアシステムを考える中で、なんでも相談できる薬剤師が一人いるという状態を作っていくことはとても大切だと思います。
当たり前のことだから点数を取るべきではないなんて声を耳にすることもある制度ではありますが、やっているのであればしっかり点数を取るべきですし、点数に見合う価値を作り出せばいいと思うので、かかりつけ薬剤師の推進は大賛成です。
かかりつけ薬剤師と連携する薬剤師が対応する場合の服薬管理指導料の特例は極めて限定的な算定となっています。
事前に契約が必要ですし、点数としての魅力もそう高くはないので仕方がない気がします。
これについては、対応可能な薬剤師に関する要件が緩和されるものと思っています。
その際に問題になるのが、いかにして普段から患者さんの情報を共有できるかということになりますが、ここをしっかり決めておかないと、制度として意味のないものになりかねないので、ちょっと注目しているところになります。
続いて服薬フォローについてです。
調剤後薬剤管理指導加算についてはほぼ間違いなく対象疾患が増えるものと思われます。心不全と認知症ですね。
元々、かなり高い評価が設定されている加算なので、積極的に算定していきたいものになります。
服薬フォローのスキルは今後の薬剤師に不可欠なものになるはずです。
在宅に関する評価
Ⅱ ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療 DX を含めた医療機能の分化・強化、連携の推進
Ⅱ-8 質の高い在宅医療・訪問看護の確保
(28) 悪性腫瘍以外の患者も含むターミナル期の患者に対する薬剤の提供を含む適切な薬学的管理のニーズの増加に対応するため、薬剤師が行う訪問薬剤管理指導を充実する観点から、医療用麻薬等の提供体制、急変時の夜間・休日における対応等を含めた在宅患者(緊急)訪問薬剤管理指導について、要件及び評価を見直す。
(29) 在宅医療において、薬剤師が医療・介護の多職種と連携しつつ、質の高い薬学管理を推進するため、退院後の在宅訪問を開始する移行期における薬学的管理、医師等との連携による処方内容の調整、介護関係者に対する服用薬等に係る情報提供等について、新たな評価を行う。
(30) 医療用麻薬の持続皮下投与では医療用麻薬を希釈せず原液で投与する実態があることを踏まえ、これらの無菌製剤処理に係る業務が評価できるよう、無菌製剤処理加算について、評価を見直す。
薬局の薬剤師が行う在宅については、中央社会保険医療協議会 総会(第568回)の在宅(その5)についてに資料が掲載されています。
ターミナルにおいて算定不可能な訪問が増えることについてまとめられており、訪問看護においては算定回数の制限が免除されるルールがあることが紹介されています。
また、夜間・休日の対応を行った場合でも、在宅自体に対する加算がないことについて、医科の往診料と比較する形で紹介されています。
医療用麻薬の備蓄については、中央社会保険医療協議会 総会(第562回)の調剤(その2)についてで紹介されています。
廃棄や回収に関する問題についてまとめられています。
なんらかの形で評価されればありがたいですね!
在宅移行時の薬剤師の関わりについては在宅(その5)についてで紹介されています。
また、医師との連携による処方内容の調整に関する例。
往診同行についても紹介されています。
在宅を積極的に行なっている薬局にとって、評価されればかなり嬉しいものばかりなんですが、在宅がかなり手厚く評価されそうな反面、他への影響が少し心配になりますね。
医療用麻薬の無菌調剤についても、調剤(その2)についての中で紹介されています。
少なくとも麻薬に関しては、無菌調剤時に混合(希釈)を行わない場合でも無菌製剤処理加算を算定可能になりそうです。
在宅、麻薬関連では医科でも気になる文章があります。 Ⅱ ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療 DX を含めた医療機能の分化・強化、連携の推進
Ⅱ-8 質の高い在宅医療・訪問看護の確保
(6) 在宅における末期の悪性腫瘍の患者以外の患者に対する緩和ケアを充実させる観点から、注射による麻薬の投与に係る指導管理について新たな評価を行う。
在宅における麻薬注射の促進につながる内容になりそうですね。
薬学管理料の評価
Ⅲ 安心・安全で質の高い医療の推進
Ⅲ-7 薬局の地域におけるかかりつけ機能に応じた適切な評価、薬局・薬剤師業務の対物中心から対人中心への転換の推進、病院薬剤師業務の評価
(1) 薬剤師による患者の処方状況に応じた服薬指導の推進とともに、これらの業務の合理化を行う観点から、服薬管理指導料、服薬情報提供料等の薬学管理料について、業務実態に応じた要件及び評価の在り方を見直す。
(3) 調剤に係る業務の実態を踏まえ、嚥下困難者用製剤加算等の薬剤調製に係る評価の在り方を見直す。
まずは服薬管理指導料についてです。
服薬管理指導料における薬歴記載について、中央社会保険医療協議会 総会(第550回)の調剤について(その1)と、中央社会保険医療協議会 総会(第568回)の調剤(その3)についてに資料が掲載されています。
資料が公開された時は、薬歴の記載内容が見直される!やった!
って思っていたんですが、「患者の処方状況に応じた服薬指導の推進」、「服薬管理指導料について、業務実態に応じた要件及び評価の在り方を見直す」という書き方を見ると、do処方等の点数ダウンを意味している気もします。
しっかり指導すべき時に指導してその記録を残せば評価アップ、逆にそうでないときは無理やり指導して薬歴を記載する必要はなく、それに見合った点数(ダウン)になるんじゃないかと思います。
で、必要な指導の例じゃないかと思われるのが、RMP資材を用いた指導や認知症の方に対する服薬管理です。
服薬管理指導料の基礎的な点数が減る代わりに、加算の種類が増えることになるんじゃないでしょうか?
個人的にはそうなればいいなとは思います。
長期的にみた場合、必要な時に求められるものをやってこそ評価されるという風土を作るのは大事です。
(まだそうなるかどうかはわかりませんが)これは間違いなく薬剤師の未来の評価につながることと思います。
つづいて服薬情報等提供料について。
服薬情報等提供料については、中央社会保険医療協議会 総会(第550回)の調剤について(その1)、中央社会保険医療協議会 総会(第562回)の調剤(その2)についてで紹介されています。
服薬情報等提供料の算定回数は年々増加していますが、令和4年度改定で新設された服薬情報等提供料3の算定回数はあまり進んでいません。
そのため評価アップと促進策が追加される可能性があります。
また、服薬情報等提供料2についてケアマネや訪問看護士への情報提供でも算定可能となっていますが、その対象を拡大し、薬局からの情報提供を促進させるような変更が加わるのではないでしょうか?
嚥下困難者用製剤加算等(自家製剤加算)について。
おそらくはこれかな?
中央社会保険医療協議会 総会(第562回)の調剤(その2)についてで紹介されています。
自家製剤加算との明確化に加えて、供給不安で散剤が手に入らない場合の算定可能になる可能性があります。
現在、タミフルDSの供給不安に対して、タミフルカプセルの脱カプセルを行なって散剤として調整した場合に次回製剤加算を算定可能ですが、それが恒久的なものになるのかもしれません。
調剤基本料についての改定
Ⅲ 安心・安全で質の高い医療の推進
Ⅲ-8 薬局の経営状況等も踏まえ、地域の患者・住民のニーズに対応した機能を有する医薬品供給拠点としての役割の評価を推進
(1) 調剤基本料について、損益率の状況等を踏まえ、特定の医療機関からの処方箋受付が集中しており、処方箋受付回数が多い薬局等の評価を見直す。
(2) 地域におけるかかりつけ機能に応じて薬局を適切に評価する観点から、地域支援体制加算について、要件及び評価の見直しを行う。
(4) いわゆる同一敷地内薬局への対応として、医薬品の備蓄等の効率性、医療経済実態調査に基づく薬局の費用構造や損益率の状況、同一敷地における医療機関との関係性等を踏まえ、特別調剤基本料を算定する薬局の体制等や、同一敷地に薬局を有する医療機関であって一定の基準に該当するものが行う処方について、評価を見直す。
調剤基本料ならびに地域支援体制加算に関しては、中央社会保険医療協議会 総会(第550回)の調剤について(その1)、中央社会保険医療協議会 総会(第568回)の調剤(その3)についてで紹介されています。
まずは調剤基本料について。
令和4年度改定後に損益差額が増えたのは特別調剤基本料と調剤基本料1の薬局です。とは言っても調剤基本料1は極々微増です。
また、単純に損益差額が多いのは調剤基本料3のロと特別調剤基本料の薬局です。
現在、調剤基本料1を算定している薬局について考えてみます。
まずは受付回数4,000回以上で集中率70%未満、つまり調剤基本料2を免れて調剤基本料1を算定している薬局が注目されています。
多くの場合が薬局近隣に複数の医療機関が存在する場合に該当するものと思われますが、このケースに対してなんらかの対応が行われそうです。
続いて地域支援体制加算について。
現在、地域支援体制加算1〜4の4つに分かれており、調剤基本料1を算定する薬局は1・2、調剤基本料1以外を算定する薬局は3・4が対象となります。1・2と3・4で実績要件に差があることが問題視されており、特に実績要件が存在しない1についても実績要件が設けられるのかもしれません。ひょっとしたら、調剤基本料による差はなくなる可能性もあります。
麻薬の調剤実績、重複投薬・相互作用等防止加算、服用薬剤調整支援料。
調剤基本料1の場合でもこれらの実績を求められるようになるのかもしれませんね。
要指導医薬品・一般用医薬品の備蓄状況、禁煙・たばこの販売、地域住民への取り組み等の状況が施設基準に設けられる可能性もあります。
地域支援体制加算の改定については、調剤基本料1の施設基準がどう変化するかにもよるかもしれません。
調剤基本料1を算定できない薬局が増えるのであれば、地域支援体制加算を逃げ道にするために、調剤基本料1以外でもハードルをクリアすることで算定できるよう、調剤基本料1かどうかによらず同じ点数にするかもしれませんね。
いずれにせよ、国は地域支援体制加算を算定できるような薬局を目指していることは間違い無いので、これまで以上にそちらを促すような改定になるはずです。
特別調剤基本料について。
損益率が増えていることに加えて、新規開局が減少していないことから、今回も厳しい見直しが行われると思います。
敷地内薬局の定義については、さらに対象が広げられるのかもしれません。
敷地内薬局を運営しているのは大規模チェーンで、特定のグループが多くを占めていることが明らかになっています。
特定のグループが多いと分かった上で、敷地内薬局を有するグループに所属する全ての薬局の調剤基本料を下げるという案が出ているので、もし、これが決まれば、特定のグループを狙ったものになってしまいそうですね・・・。
敷地内薬局についてはイタチごっこのようになってきていますね・・・。
そのほか
そのほか気になるものを簡単に紹介していきます。 Ⅳ 効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上
Ⅳ-8 医師・病院薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用等の推進
(3) 投薬時における薬剤の容器等については、衛生上の理由等から薬局において再利用されていない現状を踏まえ、返還に関する規定の見直しを行う。
容器代についてです。
中央社会保険医療協議会 総会(第568回)の調剤(その3)についてに資料が掲載されています。
要は容器代について、返還時に返金するというルールが廃止されることになりそうですね。
続いて薬剤費・薬価関連。 Ⅲ 安心・安全で質の高い医療の推進
Ⅲ-9 医薬品産業構造の転換も見据えたイノベーションの適切な評価や医薬品の安定供給の確保等
(2) 医療保険財政の中で、イノベーションを推進する観点から、長期収載品について、保険給付の在り方の見直しを行うこととし、選定療養の仕組みを導入する。
(3) 「医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会」で取りまとめられた「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」の改訂を踏まえ、医薬品の適正な流通を確保する観点から、保険医療機関及び保険薬局の医薬品取引状況に係る報告の見直しを行う。
(5) イノベーションの促進の観点から、一般的に侵襲性が低いプログラム医療機器の特性も踏まえつつ、薬事上の第1段階承認を取得したプログラム医療機器及びチャレンジ申請を行うプログラム医療機器の使用又は支給について、評価療養として実施可能とする。
まずは長期収載品。
長期収載品の選定療養については、中央社会保険医療協議会 総会(第567回)の長期収載品(その1)について、中央社会保険医療協議会 総会(第569回)の長期収載品(その2)について、中央社会保険医療協議会 総会(第573回)の長期収載品(その3)についてに資料が掲載されています。
対象となるのは後発品上市後5年未満、置換率50%未満を除く、後発医薬品が上市している先発医薬品になりそうです。
計算方法は少しややこしいです。
保険給付範囲がどこになるか、保険給付範囲内で自己負担・保険負担が決定し、さらに給付範囲外についてが自費(課税対象)となります。
単純に保険給付範囲を越した分だけプラスになるというわけではないのが混乱を招きそうです。
まら、給付範囲外は課税対象となるので領収書やレジ打ちがかなり複雑になりますね・・・。
つづいて医薬品の取引。
医療用医薬品の流通改善に関する懇談会(第36回)に【資料1-1】 流通改善ガイドライン改訂案、【資料1-2】流通改善ガイドライン新旧対照表が掲載されています。
薬局の立場から注目したいところを抜粋しておきます。 ◯「医薬品の安定供給」を確保する観点から、特に医療上の必要性の高い医薬品として基礎的医薬品、安定確保医薬品(カテゴリーA)、不採算品再算定品、血液製剤、麻薬及び覚せい剤については、価格交渉の段階から別枠とし、個々の医薬品の価値を踏まえた単品単価交渉とすること。
◯これまでも単品単価交渉を行ってきた新薬創出等加算品等についても、引き続き単品単価交渉を行うものとし、流通改善が後戻りすることのないよう注意する。
後発品関連。 Ⅳ 効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上
Ⅳ-1 後発医薬品やバイオ後続品の使用促進、長期収載品の保険給付の在り方の見直し等
(1) 医療 DX、医薬品の安定供給等に資する取組を更に推進する観点から処方等に係る評価体系の見直しを行う。
長期収載品が選定療養の対象となることから、後発医薬品調剤体制加算等の役割は終了と言いたいところだとは思いますが、制度が始まらないと本当にそうかどうかわかりませんし、医薬品の供給不安がある中、あっさりと加算を切るわけにはいかないのかもしれません。
ですが、点数が下がることが避けられないと思います。
リフィル処方の推進について。 Ⅱ ポスト 2025 を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療 DX を含めた医療機能の分化・強化、連携の推進
Ⅱ-5 外来医療の機能分化・強化等
(1) 生活習慣病に対する質の高い疾病管理を推進する観点から、生活習慣病管理料について要件及び評価を見直すとともに、特定疾患療養管理料について対象患者を見直す。
(2) リフィル処方及び長期処方の活用並びに医療 DX の活用による効率的な医薬品情報の管理を適切に推進する観点から、特定疾患処方管理加算について、要件及び評価を見直す。
(3) かかりつけ医機能の評価である地域包括診療料等について、かかりつけ医と介護支援専門員との連携の強化、かかりつけ医の認知症対応力向上、リフィル処方及び長期処方の活用、適切な意思決定支援及び医療DXを推進する観点から、要件及び評価を見直す。
生活習慣病管理料や特定疾患療養管理料の見直しが(ついに!)行われます。
その中でリフィル処方という言葉が出てきているので、管理料の算定を通じて、なんらかの形でリフィル処方を促す仕組みができるんだと思います。
申請関係の電子化。 Ⅰ 現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進 Ⅱ ポスト 2025 を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療 DX を含めた医療機能の分化・強化、連携の推進
Ⅰ-3 業務の効率化に資する ICT の利活用の推進、その他長時間労働などの厳しい勤務環境の改善に向けての取組の評価
(2) 医療機関等における業務の効率化及び医療従事者の事務負担軽減を推進する観点から、施設基準の届出及びレセプト請求に係る事務等を見直すとともに、施設基準の届出の電子化を推進する。
Ⅱ-1 医療 DX の推進による医療情報の有効活用、遠隔医療の推進
(13) 医療 DX を推進する観点から、診療報酬上、書面での検査結果その他の書面の作成又は書面を用いた情報提供等が必要とされる項目について、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の遵守を前提に、電磁的方法による作成又は情報提供等が可能であることについて明確化する。
(14) デジタル原則に基づき書面掲示についてインターネットでの閲覧を可能な状態にすることを原則義務づけするよう求められていることを踏まえ、保険医療機関、保険薬局及び指定訪問看護事業者における書面掲示について、原則として、ウェブサイトに掲載しなければならないこととする。
届出等が電子化されればかなり楽ですね!
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