“国防も疎かにせず!” 今年の「降下訓練始め」世界8か国による国際演習に 陸上自衛隊
乗りものニュース / 2024年1月7日 17時12分
我が国唯一の落下傘部隊である陸上自衛隊第1空挺団の降下訓練始めが2024年1月7日に行われました。今回の特徴は世界約10か国からの人員参加だそう。しかし能登半島地震の災害派遣も続くなか、なぜ実施したのでしょうか。
即応対処能力を維持するために
陸上自衛隊の第1空挺団は2024年1月7日(日)、「令和6年降下訓練始め」を千葉県の習志野演習場において実施しました。
同部隊は我が国唯一の落下傘戦闘部隊であり、航空機からパラシュートを使っての空挺降下や、ヘリコプターと連携した迅速な展開、いわゆる「ヘリボーン」などといった空中強襲を戦い方のメインにしています。
「降下訓練始め」は第1空挺団が実施する年始の恒例行事となっていますが、その目的はその年1年を通じての降下安全を祈願するためのものです。なお、例年であれば開始当初に団長や最先任上級曹長などが空挺降下を行う「指揮官等降下展示」が行われますが、今年は行われず、国土防衛を想定した空挺・ヘリボーン作戦を行う「地上訓練展示」のみ行われました。
また、「降下訓練始め」は他国軍隊の空挺部隊との交流の機会にもなっており、昨年はアメリカ、イギリス、オーストラリアが参加しています。今回の「令和6年降下訓練始め」では、さらに輪を広げて世界11か国の空挺部隊にも声をかけ、最終的に昨年参加した米英以外に、カナダ、フランス、ドイツ、オランダ、インドネシアの兵士も訓練展示に参加していました。
行事は、第1空挺団への理解を得るため一般公開され、さらに木原 稔防衛大臣らも見学し、訓練終了後には訓示も行いました。
震災直後なのに開催なぜ?
ただ、今回の「降下訓練始め」については、その開催を疑問視する面もあった模様です。その理由は6日前の令和6年1月1日に発生した能登半島地震です。石川県能登地方で発生した最大震度7の大地震は、この地域に大きな被害をもたらし、多くの被災者が今なお救援を求めている状況です。防衛省では中部方面総監を長とする陸海空自衛隊約1万名体制の統合任務部隊を編成し逐次部隊を被災地域へ投入。同地域では1月7日現在、約2000名の隊員が活動を続けています。
震災対応が現在も行われている状況下で、このような行事が中止されずに行われた理由。そこには2つの観点があるようです。
ひとつは、この「降下訓練始め」自体が貴重な実働訓練の機会であり、その練度を維持することは、今回の大地震とは別のより大きな有事に備えるという点から重要だと考えられたからです。能登半島地震はあらためて説明するまでもなく大災害です。しかし、自衛隊の本来任務は国防です。大災害が起きたからといって安全保障を疎かにすることはできませんし、事実、この間に国土や国民に脅威が迫ったら即座に対処する必要があります。
また、大規模災害についても同様です。能登半島地震への対処が継続しているからといって別の場所への災害派遣がないとは限りません。別の大地震や風水害、雪害などが起きないとは言い切れないないのです。
現在、能登半島を中心とした被災地では第1空挺団が多用する自衛隊の各種ヘリコプターが数多く活動していますが、それでも空挺団の隊員は「空挺団としての即応体制は維持され、別の有事があればただちに対応することができる」と説明していました。
現場レベルの連携が外交安全保障の向上にも
もうひとつの理由は、各国の空挺部隊同士による関係の強化と、それによる多国間での安全保障での連携です。
「降下訓練始め」の前々日、1月5日(金)には各国の空挺部隊の指揮官が集まった「国際空挺指揮官会議」が開催されました。ここでは「インド太平洋地域の平和と安定のために空挺部隊が果たすべき役割」というテーマを元に、第1空挺団と、令和6年降下訓練始めに参加した7か国、さらにオブザーバーとして来日しているカンボジア、これら国々による空挺部隊の指揮官が参加していました。日本を含め合計9か国による空挺部隊の指揮官が一堂に会する機会は、世界的に見ても珍しいといえるでしょう。
現在の防衛や安全保障の政策は、一国単独でこれに対応するのではなく、複数の国々で連携して行う国際的なものとなっています。それは、2022年に始まり現在も続いているロシアにのウクライナ侵攻でも明らかで、圧倒的な兵力で国土に攻め込んできたロシア軍に対してウクライナが頑強に抵抗できているのは、NATO(北大西洋条約機構)を中心とした国際的な支援が続いているからでもあります。
日本においても、国土や周辺地域において軍事的な衝突が起きた場合には、アメリカを始め、さまざまな外国の支援や連携が不可欠になるのは間違いありません。
国際的な安全保障の枠組みでは、国としての外交安全保障政策だけでなく、このような現場レベルでの日々の交流も重要となってくると、今回の「降下訓練始め」や「国際空挺指揮官会議」を取材して、筆者(布留川 司:ルポライター・カメラマン)は改めて感じました。
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