先日行われた本因坊戦第六局で、右下にセキの形が現れました。
局後に六浦雄太七段がツイッターで、右下のセキは日本ルールだと黒地2目、中国ルールだと黒地が4~5目であると述べています。
何故そのようになるのかが分からなくてずっと悩んでいたのですが、やっと分かりました(多分)
まず、日本ルールで黒地が2目というのは簡単です。日本ルールではセキはお互いに0目ですが、アゲハマにまではその効力は及びません。なので、白の17-19のホウリコミを黒が抜いている1目と、14-19の1目は黒から取ることが可能なのでアゲハマとしてカウントできます。
白にはアゲハマがないので、セキの部分に関しては差し引き黒地が2目あると言えます。
次に中国ルールですが、中国ルールでは盤上の生きている石数と陣地の数の合計を競います。これはセキの部分も含まれますので、セキの部分に関して双方の石数と陣地を数えてみます。
黒の石数=10 黒の陣地=3.5(純粋な黒の陣地は3目ですが、19-19の共通ダメはお互いに0.5目として折半されます)
なので、黒はトータルで13.5目です。
次に白です。
白の石数=7 白の陣地=1.5
トータルで、白は8.5目です。
13.5-8.5=5 つまりセキの部分には中国ルールで黒地が5目あることになります。
では何故六浦七段は4~5目と言っているのか?これが分からなくてずっと悩んでいました。
セキの部分だけを見れば黒が5目有利です、これは間違いありません。しかし使われた石数が違っていました。黒が使った石数は盤上にある10個ですが、白は盤上にある生き石7個とホウリコミの1個と黒地の中にある死に石1個で、合計9個です。つまり、黒より1個少ない分はどこか他に打てているのです。なので盤上全体の計算という意味では右下のセキは黒地4目となるのです。
つまり、この形態のセキが存在する場合は、日本ルールと比較して中国ルールは黒が2目有利になります。しかし実際にはコミ6.5→7.5によるマイナス分があるので2目有利は1目有利になります。
実はこの話には続きがあります。
それはダメに関することです。日本ルールではダメは無価値なので意味はありませんが、中国ルールではダメに打った石も目数としてカウントされるので重要です。
最後のダメを白が打ったとするとお互いに使った石数は同じになりますが、最後のダメを黒が打ったとすると黒が白よりも1個余計に石を使ったことになり、ここで黒が1目分得をします。
最後のダメをどちらが打つことになるかはランダムなので、黒側に0.5目の期待値があります。
これはセキに関係なく、中国ルールである限り全ての対局で適用されることです。
つまり、セキなどがなく通常の形態の対局である限りにおいては、日本ルールコミ6.5目は中国ルールコミ7.0目と同等ということになり、中国ルールコミ7.5目は日本ルールコミ6.5目と比較して白が0.5目だけ有利ということになります。
そんなわけで、先ほどの黒が1目有利に黒が0.5目有利を加えて、この手のセキが存在する場合は、中国ルールコミ7.5目は、日本ルールコミ6.5と比較して黒側に1.5目有利に計算される、ということになります。
囲碁AIのKataGoを使って分析してみると、ほぼ1.5目の差を示しています。KataGoがルールの違いやセキの数え方を正確に計算できているということですね。