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この作品「ビキニ着てTSした話」は「TSF」「シーケンス」等のタグがつけられた作品です。
ビキニ着てTSした話/XJ(改)投棄場のようなものの小説

ビキニ着てTSした話

10,202文字20分

友人から着ると女になるというビキニを着て女になってみよう、と誘われてTSする話です。
こちらのイラスト(illust/114979562)がベースになっています。

2024/01/04~2024/01/10[小説] オリジナルウィークリーランキング6位になりました

ベースになった作品
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「……変態以外何者でもないな」

俺、カズトは手にしたものを持って率直な感想を口にしていた。
何を持っているかって? 女物の水着、ビキニだよ。
それを今から着ろと言ってきたのだ。俺の悪友、ヒロキが。

「ダイジョーブ、オレも一緒に着るから一緒に変態だな」

何の救いにもならないヒロキのセリフ。青筋立てる以外に反応するパターンがあったら教えてほしい。
そもそもなんでそんなことをこいつが言い出したのか? それはヒロキのあまりにもアホな話から始まる。

ある日、ヒロキが見せてくれた画像。そこに映っているのは自撮りしているビキニの女の子の画像。
めっちゃスタイル良くて胸大きくてかわいい子……なのだが、何か違和感を感じた。
多分どこかのSNSで承認欲求強めの奴がアップしちゃった写真かと思ったのだが、よくよく見るとその写真に写っている女の子の顔がヒロキにそっくりだった。

おや? これはヒロキのお姉さんか? と思ったのだが、ちょっと顔が違う。
そっくりさんでも見つけたのか? と思っていたらヒロキの思いもがけない回答が「これ、オレなんだよね」だった。

それじゃあこの写真はアプリとかで加工したやつ? それともお前水着女装始めたの?
その質問にこいつはもったいぶらすような仕方で「これがなぁ、マジで女になれちゃうんだよ」などと供述しており「実は着ると女に慣れちゃうビキニがあるんだなぁ」と続けた。

何言ってるのこいつ。頭おかしくなったか? くだらない冗談はやめれ。
という言葉の応酬に「じゃあ試してみるか?」となってイマココ。
ヒロキの言うことが本当だと確認するため、確認させられるためにヒロキの家に来て、水着着ろって話になりました。

「マジでばかばかしいな」
「そう思うよな普通は」

俺にビキニ手渡しておきながらこの返事。
そこのところはヒロキもわかってらっしゃるようで。こいつ常識あるのかないのかよくわからない。

どっちにしても問題のビキニが俺の手にあるのは事実。
こいつを着るだけで女になるって、いくら何でも滅茶苦茶じゃね?

最近はコスプレ用の衣装とかも出来がすごくなってて、肌そのままに見える着ぐるみもあるらしいけど、そういうのとは違うと。
マジでごく普通の何の変哲もないビキニだ。女用の。

「これを、着ろと?」
「オレも一緒に着るからさ、恥ずかしくないよー」

赤信号 一緒に渡れば 怖くない ってか?
危険な世界に一歩踏み出そうとしている感じは強いけど。

そんなためらいがちに俺に対してヒロキはさっさと服を脱ぎ始めている。
おいおい、マジで着替えるの? このビキニ着ちゃうの?

「ほれほれ、お前も着替えろよ。男は度胸」
「ここで度胸を使いたくないなぁ」

ここまでやられると着替えざるを得ないと思ってしまう自分、押しに弱いかもしれない。
仕方なく服を脱いでいく。ヒロキは手早いものでもう全裸になってるし。

俺も俺で服を脱ぎ捨て全裸になったところで、改めてビキニを手にして悩む。
一方のヒロキはさっさとビキニに足を通しているし。

「ほらほらぁ、ここまで来たんだからさっさカズトも着ろってばぁ」
「あーはいはい、わーったよっ」

うながされ後に引けない感じになったので、覚悟を決めてビキニに足を通す。ビキニボトムを持ち上げ、着用。
上のブラトップも同じく着用しようとするが……くっ、後ろで金具が止めづらいが、なんとか固定できた。
これでオレもヒロキもビキニ着用完了である。


TSびふぉーあふたー ビキニ編
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「……事故だろ」

そうとしか言いようがない。
男二人が女物のビキニを着用。変態だろ絶対。

特に股間のもっこりが怪しすぎる。女物水着ゆえに男のブツの存在感が余計に目立つ。
こんな姿でビーチやらプールに行ったら確実に逮捕案件でしかない。
などと自分の姿に悲観していたら……

「ん?」

なんか、体がむずむずしてきた。
全身を駆け巡る悪寒、言いようのない違和感が全身を駆け巡っていく。

「な、なんか変?」
「おおっ♪ 来たよ来たよぉっ!」


TSびふぉーあふたー ビキニ編
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よく見たら自分の手足が変わってきた。
ろくに運動していないが、それでも男としての筋肉はある程度あった自分の手足が、少しすっきりしたような。
それでいて丸みを帯びてきたような。

自分の手足の変化だけじゃない。目の前にいるヒロキも同じように。
他人の変化だからよく見える。明らかに、体形が変わってきている。
変わっているのはもちろん体系だけじゃない。

「え? わわっ!?」
「わっほーいっ♪」


TSびふぉーあふたー ビキニ編
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胸が特にむずがゆくなった、と思ったらむくむくと膨らんできている。
真っ平な胸板につけているブラトップ、その下が少しずつ少しずつ、それでいて確実に。
な、なにこれ? かゆみとくすぐったさが入り混じって、それでいて先端が敏感になってきているような。

その変化に戸惑う俺に対してヒロキはなんだか楽しそうだ。
これから起こっていく出来事を心待ちにしているような、わかっていて楽しんでいるような。

「あ、あっ……」
「ふふっ、この感じこの感じっ♪」


TSびふぉーあふたー ビキニ編
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ブラトップの下の胸がさらに膨らんでいく。単純に膨らんできているだけでなく、重さも感じてくる。
スカスカだったブラトップの内側は、今は内側から押し広げようとしているぐらいの質量に。
次第に質量を増していくふくらみが、ブラトップによって支えられていくように。

変化は上だけじゃない。下もだ。
さっきまできつかった股間が徐々に緩くなっていく。いや、少し違う。

股間の男の物体がぐりぐりと無理やり押さえつけられ、締め付けられていくような。
逆らうことができずに俺の物体が体の中に徐々に押し込められていく。そんな衝撃。
だというのに、どこか気持ちよさを感じてしまう。これは、やばい。

「あ、う……あうっ!?」
「わっはぁっ♡」

ズンッ、という最後のとどめとばかりに体に伝わり響く衝撃。
その衝撃は上と下と同時に。上はふくらみが質量物を無理やり詰め込むような、下は押し付けられていた股間が強引に押し込められたかのような。
それを最後に体中の変化はおさまった。そして改めて、その変化を確認する。


TSびふぉーあふたー ビキニ編
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「あ……」

見下ろせば着用していたブラトップの内側はこれでもかと膨らんで、質量を増していた。
自分の胸にくっついた二つの双丘、しっかりと谷間が確認できる。なかなかの巨乳だった。

そしてビキニボトムの内側には存在感がまるでなくなっていた。
そっとさわって確認したら、本当に押し込められてしまったかのように男の突起物がなくなっていた。

「ま、マジかよ……」

そうして驚きを隠せない自分の声も、高くなっていた。
自分の聞きなれた低い男の声ではなく、高い声、つまり女の声になっている。

「おう、マジで女にになったろ?」

自分の言ったことが本当だったことを証明できたヒロキはご満悦の様子だった。
そのヒロキもこうしてみたらすっかり女だ。声も変わってるし、体も俺同様たわわになった胸を持った女になっている。

あと、顔も変わっていた。正確には元々の顔の造りは同じだけど、男の顔から女の顔になっていた、という具合で。
あの時見せてもらった自撮り画像の女の子、その子が目の前にいた。

「もう、いろいろ驚きで頭の理が追いつかん」

ヒロキの言った「着たら女になるビキニ」なんて謎アイテムがこうして現実にあるってことが証明されたことと、自分がマジで女になったことへの混乱が大きい。
人間って非現実な出来事に直面したら本能的に頭を文字通り抱えるのな。

「っていうか、これ大丈夫なのか? ちゃんと戻れるよな?」
「ダイジョーブ、脱げば戻れるって」

着れば女になる、脱げば男に戻る。なんてお手軽な。
そういえばヒロキが自撮りした写真を前に見せたってことは一度女になって戻っているってことだし。
とりあえずヒロキの言うところ試したのだからさっさと脱いで……

「おいおい、女になったばかりでもう脱ぐのかよ。まだ楽しんでないだろぉ?」
「楽しむぅ?」
「そうそう、せっかく女になったんだしぃ、このままプールに遊びに行こうぜぇ」
「えぇ?」

体の変化で心的負担が大きいのだが、この状態で外出すると? 遊びに行くと?
そして行先はプール? 確かにビキニな水着着ているから泳ぐことはできるけど。

「ふふんっ、この姿でどれだけ男をひっかけられるか、おもしれーじゃん?」
「男にナンパされるのがおもしれーのか?」

ヒロキの価値観がいまいちよくわからなかったけど、結局また押しに負けてこのままプールに行くことになってしまった。
















「で、これはどういうことだ?」
「ど、どういうことだろう……」

押しに負けてプールに行った俺だが、今はヒロキに対して圧をかけている。
今のこの現状をよーくOHANASHIしたいからね。

あれからプールに行くことになってしまいましたよ。ビキニの上に服を着て、しかもご丁寧にヒロキのお姉さまの服を拝借してスカートとキャミソールとブラウスとで女装して、って女になっているから女装って言えるか知らんけど、とにかく着替えてプールにGO、そして迷うことなくヒロキは女子更衣室に突入して俺は止めたけど「今の姿じゃむしろ男子更衣室アウトだろ?」と言われては反論できずに女子更衣室に潜入、女性たちがいる中でバレやしないかとびくびくしながら服を脱いでいたら「いやカズトも今は女だからな」と平然と着替えているヒロキになんか腹立ちながらも、けど結局プールでひと泳ぎしたら楽しくなってはしゃいでしまって疲れたところでちょっと一休みしていたら案の定ナンパがやってきて「よーカノジョたち遊ばない?」ってチャラい男たちがひねりもなんもないお誘いしてきたから容赦なく断りアンドボコボコにする案件が6件ほど、で帰るってところで「そういえば替えの下着は?」って話でそんなものあるわけないとここでビキニ脱いだら男に戻って大惨事ってことで一生懸命上から水着の水気を拭き取ってその時に触っちゃった自分のおっぱいにドキドキしながらなんとか女子更衣室を出て、濡れたまんまのビキニを下に着て帰路についていたら妙に視線を感じて「あれ? まさか水着の水分で濡れ透けしてね?」って危機を感じて二人であわてて必死になってヒロキの家についてようやく男に戻れるとビキニをはずしてイマココ。

今現在何故に俺が圧をかけているかって? そりゃ大問題が起こっているからだよ。
何が問題かって? ビキニ脱いでも、男に戻らないんだよっ! 女のままなんだよっっ!!

「脱げば戻るんだよなぁ?」
「も、戻るはずなんだよっ! 第一最初に試したときにちゃんと戻ってるしっ!!」

圧をかけ続けている俺にヒロキは必死だ。
だがその回答自体は間違いないかもしれない。なぜなら一度こいつが女になって自撮りを見せてきたってことは、その時は戻っているはずだ。
だが、今は戻っていない。俺たち二人は女のままだった。

「戻らねーぞ」
「も、戻らないなぁ……」

ビキニをお互い脱いで素っ裸になってかれこれ数分。一向に戻る気配はない。
俺もヒロキもたわわになった胸はそのままだし、下も男の物体の存在感は微塵もない。女になった時のようなムズムズした悪寒のようなものも、体の変化を感じ取ることはできない。
マジで、女のまま。

床に正座して対面し、じっとヒロキを見つめる。その視線に耐えきれないヒロキはすっと視線をそらす。
気まずさゆえの視線そらしだが、一方の俺も目の前にあるヒロキの女の裸体が、特にたわわな生おっぱいが視界に入ってしまいちょっと気まずい。
やはりそこは俺も男。女の裸にはドキドキしてしまう。

「と、とりあえず裸のままはアレだから、服着るか?」
「お、おう」

俺からの提案にヒロキはすぐさま返事し、自分の衣類の方へと向かった。
気まずい視線から逃れる手段が俺から与えられて安心したかもしれない。

ただ、今度は俺の方がちょっと気まずい。ヒロキがくるりと後ろを向き自分の衣類へと向かってしゃがんでいる結果、ナイスなおしりがこっちを向いたので。
ボリュームのある素っ裸なナイスなおしりです。結構眼福。

あまり見ているわけにもいかないのでこっちもとりあえず服を着ることにする。
先ほどのプールに行ったときは借り物のスカートだったが、そちらではなくて俺自身の本来の男物の衣類と下着を……

「なあ、ヒロキ」
「なんだい、カズト」

お互いくるりと振り返れば、やはりそこはナイスなおしりが。
しかしおしりを鑑賞している場合ではない。そんなことより確認したいことがあるのだ。

「念のため聞くけど、お前俺の服どっか隠した?」
「何言ってるんだい? ずっとそこに置いてただろ?」
「そうだなぁ。それじゃあ俺って普段トランクスだったよな?」
「確かにビキニに着替える時カズトはトランクスだったなぁ」
「ちなみにヒロキはボクサーパンツだったか?」
「おう、オレはボクサーパンツ派だぜ」
「なるほど、それじゃあ確認したいのだけど……」
「奇遇だな。オレも確認したいんだけど……」

「「なんで女物の下着になっているんだよっっっ!!」」

ああそうだねぇ、まとめておいた俺の衣類のところにあった下着が、俺のトランクスじゃなくてショーツとブラになっているんですけどっっ!!
ブルーのちょっと派手な大人なデザインの奴。確かに色は合っているけどさぁ!

「お前がすり替えたのかっっ!」
「んなわけあるかっ! それを言ったらこっちだってっ!!」

俺が手にしたブルーのショーツを突き詰めてみれば、ヒロキも同様に赤いちょっと派手なデザインのショーツとブラを突き付けてきたし。
もちろん俺はすり替えてなどいない。なんだってこんな手のこんだイタズラ……

「ん?」

などと言い合っていれば衣類のポケットから落ちてきたのは俺の学生証。
何ともない俺の学生証、のはず。なのだが、見えてしまった。

「なあヒロキ君。学生証まですり替えてないよね君は」
「そんなご丁寧なことするわけないだろぉ? 大体下着だってすり替えていないし」
「ほほう、ということは……」

自分の学生証の中身。特に証明写真と性別欄。
顔写真が、今の俺の女の顔になっているし、性別欄も「女」って書いてあるのですけど?

「これは、どういうことだ?」
「どういうことでしょうねぇ……」

処理が追い付かない。頭の回転が進まない。何かよくわからない不思議な出来事が。
そこのところでヒロキがおもむろに「まさか」といって立ち上がる。

素っ裸のまま、ふらふらと歩いて行った場所は自分の部屋のクローゼット。
先ほどからナイスおしりが気になるけど、そんな鑑賞している場合ではない。

がちゃ、とクローゼットの扉を開けて、ヒロキはしばしの硬直。
そしてその中から服を一つ手にして、ぎぎぎ、とさび付いた扉のような音を立てたかのようにして首がこっちに振り返る。
ぶっちゃけ、今だったら俺も首が同じ音出そう。なぜならヒロキが手にしていた服は……

「お、女物の制服があるのですが?」

ウチの学校の、女子の制服だったから。

「な、なんでそんなものがあるのかなぁ?」
「か、かわりにオレの男子制服がないのですが?」
「つまり、変わっちゃったってこと?」
「学生証と同じく、ですかねぇ」

続いてその女子制服から取り出したのは、ヒロキの学生証。
差し出された学生証の名前は間違いなくヒロキだが、やはり写真は今の女の顔で性別欄が「女」になっているし。

立て続けに起こっている怪現象。男に戻らない、だけでなく身の回りの物が女になっている。
考えたくない、最悪の結論。

「ま、まさか俺たち、元から女ってことになってる?」
「そ、そんなまさか、なぁ」
「……………」
「……………」

「「マジかよっっ!!」」

最悪の展開だ。それしか考えられない。信じたくない。
ただ水着着て女になっただけでは? なのに男に戻れず元々女だったってことに?
こうなると下着や学生証や制服だけでなく、俺たちを知る人間全員が元々女だったと記憶している可能性だってゼロじゃない。

なんなのこれ? どういう怪現象? どう考えても水着が原因でしかないよな!?
ていうかこの水着なんなの? そもそも男が女になるだけじゃなくて元々女だったってことになるってさぁ!?

「もう水着の呪いだろこれ。ていうかお前どこでこの水着手に入れたんだよっ!?」
「ちょっとAm○zonで面白そーだなーって買ってみまして……」
「Amaz○nでそんな呪いのアイテム売ってんのかよっ!?」

何でも売ってる密林のECサイトって、いくらなんでも品ぞろえ良すぎるだろがっ!

「とりあえずそれ売ってるやつに文句言わなダメだろっ!」
「お、おうっ問い合わせ先は……あ」

慌ててスマホ取り出して画面操作していたヒロキから漏れた「あ」という一文字の言葉。
「あ」といってはいけない職業の医者とパイロットに匹敵する危険な予感。でも念のため確認する。

「ど、どうした?」
「買ったページどころか、購入履歴すらない」

やーっぱりー。俺ら女にするぐらいだからねこーなるよねぇ。
ということは、これは絶望フラグ以外何物でもないのでは?

「どーすんの?」
「どーしよ」

元に戻る方法も何もわからない、それどころか俺たちがまるで元々女だったかのような状況。
そんなことはない、元々女だったなんてことはない。間違いなく俺たちは男だった。その記憶もしっかりと存在しているし。
とにかく一体これからどうすればいいのか。呆然とするしかない。
そんな硬直した空気を打ち破ったものがいた。

「くぉらヒロキぃっ! あんた人の服を勝手……に?」

いきなり部屋のドアを勢いよく開いた人物、どうやらヒロキが勝手に持ち出したであろう衣服の件で文句を言いに来たらしい。
そう、その相手は……

「ね、姉ちゃん……」

ヒロキの姉、ミノルさんだった。
しかし一人だけでない。その後ろからひょっこり顔を出したもう一人がいた。

「なんだぁ? どうしたん?」
「あ、姉貴まで……」

なぜか俺の姉貴のアキラまでいた。
何故ここに? といっても俺とヒロキが仲いいのと同様、姉貴同士も仲がよかったりする。
お互いの家族で古い付き合いでもあるからね。しかし今はそれどころではない。二人に対してこの状況は非常に説明に困難なモノであり。

ミノルさんの女性服を持ち出したのは置いとくとして、弟の部屋にいたのは二人の素っ裸の女の子二人。
先ほど脱いだ水着に俺たちの着替えの服、こんなものが散乱している部屋の光景をどう説明しろというのか。

明らかに事案である。弟二人が女の子連れ込んでよからぬことしようとしていたと思われても仕方ない。
どう説明したものか。しかし、思いのほか懸念は少なくなかった。

「あー、あんたらヒロキとカズト君かぁ」
「「え?」」

ミノルさんがこの部屋の様子を観察して、いとも簡単に部屋にいる女の子が俺とヒロキだと理解してしまった。
あれか? 下着や制服や学生証が変わったからすべての人間が俺たち二人が元々女だったと認識していると思ったけど、人間の記憶は対象外かな?
それとも身内だからノーカンとか? というにはちょっと違うような?

「その水着着てカズトもヒロキ君も女の子になっちゃったんだろぉ?」
「「え?」」

そして後ろで見ていたアキラ兄貴が出来事の根本原因をあっさり見抜いてしまった。
水着が犯人ってよくわかったな? ちょっと推理事件解決早くない?

とはいえ状況把握理解は助かる。この光景をどう説明すればいいのか、いきなりでは対処できなかったし。
下手したら本来の俺らを性犯罪者にしかねない光景なわけで。

「お、オレがわかるのか!?」
「あーうん、顔は間違いなくバカ弟だしねぇ」

ヒロキはヒロキで自分が妹ではなく弟だと認知されたことで感動の表情である。
ああ、持つべきものはやっぱり姉! 姉弟だからこそ心で通じ合うんだぁ! などと謎の感動を覚えている様子である。
しかし自分が姉の服を勝手に持ち出したことは都合よく忘れているかもしれない。

「よ、よく俺とヒロキだってわかったね?」

一方の俺は冷静である。いくら 姉弟だからといっても、顔が面影のこっているとはいっても男だった弟が女になって妹になっているのは非常識なわけで。
それも原因がここに転がっているビキニ水着ってところまで特定しているし。
学生証に下着に制服まで女物になって元々俺らが女だったかのような変化で他人や家族の認識まで変わっていると思ったが、そうではなかったのか?

あれ? なんだか嫌な予感がしますよ? まさか……
そのまさかを、アキラ兄貴が口にした。

「そりゃあオイラとミノルも同じ水着で女になっちゃったからねぇ」
「「………え?」」

え? 女になっちゃった? ちょい待ち、ということはひょっとして……

「ね、姉ちゃんたちは本当は、兄ちゃんたちだったの?」
「うん、ヒロキもカズト君もすっかり元々姉だったって思ってるみたいだけどね」
「「な、なんだってーーーーーーーっっ!!」」

と絶叫してしまいましたが、俺にとっては嫌な予感的中でして。
水着の事を知っていたし、俺らが弟だったとあっさり認識できたし。

「その水着さぁ、着て何もしないで脱げば元に戻れるけど、プール入ったりして濡れると女で固定されちゃうみたいなんだよねぇ」

という既に女になってしまったミノルさんの原因解説。
そういうことか、だからヒロキが自撮りしただけの時はちゃんと戻れて、今回のプールに行って泳いだ時は戻れないと。
何て設定なんだよっ。

「言っておくけど多分アタシら以外は全員あんたらが元々女だったと認識してるよ」
「どういう原理なんだろうねぇ。オイラたちの時ももう大変だったしぃ」

という経験者のお言葉。つまりのところ、俺ら男だった経歴や記録どころが記憶までもが全て女になっていると?
なんとなく予想はしていたけど、体だけでなく記憶まで世界の認識まで書き換えられるって、どんな高度な呪いのアイテムなんだよこの水着。

「ってことはもうオレらは男に戻れない?」
「うん、一生女のまま。アタシらと同じでね」

あははー。完全に死刑宣告ですよこりゃ。
男としての人生終了、文字通り。できればカノジョ作りたかったなぁ女になる前に。

でも仮に彼女がいたとして、今回のように女になってたらどうなったんだろ?
恋人から友達に格下げされるのか? それとも百合な関係になるのだろうか? そんな感じに世界が改変されるのかな?

「けどまぁ、女も悪くないよ?」
「ん?」

今後一生女確定という絶望に落とされたと思いきや、ポジティブシンキングですかね?
女も悪くないとは? 男と比較して利点って何ですかね? やっぱレディースデーとか?

「男より女の方が100倍気持ちいいって話あるだろぉ? そういうやつ」
「そーそー、ミノルと試していい感じになってさぁ、今じゃすっかり百合セフレ」
「お、おいアキラっ♡」

あ、姉貴たち仲いいなとは思っていたけどそういう関係なのですか?
あれ? さっき恋人がいたら友人に格下げかと思ったけど、逆に友人は百合な関係に格上げするのですか?

ていうか元男同士でいいのか? いや自分からしてみれば相手は女で自分は男認識だから男女っぽい関係に思えるかもしれないし、出も見た目は体は女同士であるし……どうなの? いいのか?

「まーそういうわけでぇ、女もいいモノだよ?」
「ふふんっ、アタシらと一緒で水着の効果か二人ともスタイルいいしねぇ」
「う……」

撫でまわすような視線。そういえば混乱で俺もヒロキも素っ裸なままでした。
そうすれば俺らのスタイルのいいボディは当然のように二人の元兄な姉たちの目に入るわけで。

「せっかくだしぃ、このまま女の子のコト、教えてあげようか?」
「ふふっ♡ オイラたちの方が女の子のセンパイだからいっぱい知ってるよ?」
「そうそう、女になったばかりだったら特に新鮮だしねぇ」
「男とのギャップをすっごく楽しめるよ?」

「「…………………」」


そんな感じでおねーちゃんたちに色々女の子のコト、教えられちゃいました。
結果、俺とヒロキもおねーちゃんたちと同じく百合セフレな関係になってしまいました♡

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