イーロン・マスク(ロイター)

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 新年早々に発生した能登半島地震で数多くのデマ投稿がSNS上にあふれ、救助活動への悪影響が懸念されている。岸田文雄首相は2日、「悪質な虚偽情報の流布は決して許されるものではない」と呼びかけたが、デマ情報の拡散は続いている。背景にはX(旧ツイッター)の仕様変更も影響している。

 地震発生直後から人工地震とあおる投稿や、実在しない地名からの救助要請をする投稿、さらには中国人窃盗団がマイクロバスで特定地域に襲来しているといったものまで、さまざまなデマが相次いだ。

 Xは昨年8月に「クリエイター広告収益分配プログラム」として、一定の条件を満たしていれば自身の投稿を収益化する機能を開放。当初からこの収益化を目当てにモラルに欠けた投稿が危惧されていたが、それが能登半島地震をきっかけに顕在化した形だ。

 震災を扱ったデマ投稿が収益化されてしまうのか? ITジャーナリストの井上トシユキ氏はこう解説する。

「Xは自社のホームページにも載せているように、自然災害など一定のコンテンツの収益化を禁止しています。なのでインプレッション(閲覧数)稼ぎで震災のデマ投稿をしても、収益にはならないでしょう。それどころか今後、悪質デマ投稿と判定されたアカウントが凍結されたり、警告を受ける可能性がある」

 問題になりそうなのは、X側が悪質なデマ投稿と認定するための真偽判定だ。

「生成AIの登場で誰でも精巧なデマ画像を簡単に作れるようになり、過去画像の“借りパク”のように真偽判定することは難しくなっています。今後、デマ投稿をしたとされるアカウントが何らかの処分を受けたときに、反論を許す余地ができてしまう」(井上氏)

 デマ投稿を繰り返すアカウントの中には、一部事実を交えた“半デマ投稿”でインプレッションを稼ぐものもあり、巧妙化が進んでいる。被災地は物資が不足し、いまだ救助を待つ人たちが多数いる。こうしたデマ投稿で現場を混乱させることがあってはならない。