カード会社は、クレジットカードで購入された商品の情報を、どの程度まで知ることができるのでしょうか?もし、ワイシャツが購入されたとしたら、そのメーカーやサイズまでわかるのか、あるいは、ワイシャツであることしかわからないのか、はたまた、それすらわからないのか。
クレジットカードで新幹線回数券などの「換金性の高い商品」を購入すると、カードを利用停止にされる場合があります。すると、少なくとも購入された商品が「どのようなものか」という情報は、カード会社も把握できているはずですね。
この情報は「商品区分コード」と呼ばれる3ケタの数字によって、カード決済を受けた加盟店から伝えられます。今回は、この商品区分コードについて説明していきます。
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商品区分コードとは、クレジットカードで購入される商品やサービスを、タイプ別に分けて3ケタの数字で表わしたものです。「衣服」は「830」、「飲食代」は「320」など、商品やサービスは、全部で50~60の項目に分けられています。
商品の区分はけっこう大雑把。例えば「衣服」には、ワイシャツもスカートもジーンズも含まれ、すべて「830」のコードで処理されます。(つまり、冒頭の問いは「ワイシャツであることすらわからない」が正解。)そのため、基本的に、購入された商品が「どのようなものか」はわかっても、具体的に「何か」までは、カード会社はわかりません。
では、カード会社は「どのようなものか」といったアバウトな情報で、クレジットカードの利用停止などの措置を行っているのでしょうか?
そうではなく、具体的に「何か」を把握する必要がある商品には、独自のコードを設定しているのです。まずは、商品区分コードの一覧をチェックしてみましょう。
コード | 項目 | 細目 |
---|---|---|
0 | 海外一般利用 | |
010 | 海外キャッシュサービス | |
020 | 海外通販(電話) | |
021 | 旅行・運用 | |
022 | サービス | |
023 | 高換金性物品 | |
024 | 準高換金性物品 | |
025 | 金券類 | |
030 | 海外通販(郵便) | |
031 | 旅行・運用 | |
032 | サービス | |
033 | 高換金性物品 | |
034 | 準高換金性物品 | |
035 | 金券類 | |
040 | 海外医療 | |
050 | 海外学費 | |
060 | 海外宿泊 | |
070 | 海外レンタカー | |
080 | 海外交通費 | |
090 | 海外飲食 | |
100 | キャッシュサービス | |
110 | ローン | |
120 | 通販 | |
121 | 旅行・運用 | |
122 | サービス | |
123 | 高換金性物品 | |
124 | 準高換金性物品 | |
125 | 金券類 | |
130 | インターネット通販 | |
131 | 旅行・運用 | |
132 | サービス | |
133 | 高換金性物品 | |
134 | 準高換金性物品 | |
135 | 金券類 | |
136 | プロバイダ利用料 | |
137 | デジタルコンテンツ | |
200 | 鉄道・バス運賃 | |
201 | 鉄道回数券 | |
202 | プリペイドカード | |
203 | 定期券・周遊券 | |
210 | 国内航空券 | |
211 | 航空回数券 | |
212 | 国際航空券 | |
220 | 乗船券 | |
230 | 国内パッケージ旅行 | |
231 | 国際パッケージ旅行 | |
240 | レンタカー・タクシー・ハイヤー | |
250 | 引越 | |
300 | 宿泊 | |
310 | 食事・宴会 | |
320 | 飲食 | |
330 | 施設使用料・結婚式場 | |
331 | ゴルフプレー | |
332 | 遊園地入場料 | |
333 | カラオケ | |
340 | 入浴(サウナ) | |
350 | 不動産 | |
351 | リフォーム | |
400 | 修理・営繕・車検 | |
410 | 理美容 | |
411 | エステ | |
412 | ネイル | |
420 | 医療 | |
421 | マッサージ・カイロプラクティック | |
430 | 通話料 | |
431 | 国内通話料 | |
432 | 国際通話料 | |
433 | 携帯電話PHS通話料 | |
440 | 受講料・学費 | |
450 | 保険料 | |
460 | 新聞購読料 | |
470 | 公共料金 | |
480 | [フリー] | |
490 | [フリー] | |
500 | 宝石・貴金属 | |
510 | 指輪 | |
540 | 時計類 | |
541 | ライター | |
560 | カメラ・レンズ | |
561 | ビデオカメラ | |
562 | デジタルカメラ | |
570 | 事務用品 | |
590 | [予約済] | |
610 | 工具、園芸用品 | |
650 | 電気製品 | |
652 | 音響製品(ステレオ・ラジオ) | |
653 | ビデオ | |
654 | テレビ | |
655 | エアコン | |
656 | DVDプレイヤー | |
657 | 液晶テレビ | |
660 | 照明器具 | |
670 | 携帯電話・PHS | |
680 | OA機器 | |
681 | パソコン | |
682 | OA周辺機器 | |
710 | 自動車・自動二輪 | |
720 | 自転車 | |
730 | 中古車 | |
750 | ガソリン類 | |
760 | タイヤ・カーエアコン・自動車用品 | |
770 | カーナビ | |
790 | 眼鏡・コンタクト | |
810 | 薬・化粧品 | |
820 | 家庭用雑貨 | |
830 | 衣服 | |
831 | 毛皮・生地 | |
832 | 呉服 | |
840 | バッグ・カバン | |
850 | 靴 | |
860 | 寝具・カーペット | |
870 | 身近雑貨品 | |
880 | 家具 | |
890 | 食料品 | |
891 | 健康食品 | |
892 | 酒類 | |
893 | 土産 | |
894 | 花 | |
910 | スポーツ用品・玩具・人形 | |
911 | ゴルフボール | |
912 | クラブセット | |
913 | ゲーム(ハード・ソフト) | |
914 | ペット | |
920 | 書籍・レコード・CD | |
921 | レンタルCD | |
950 | 楽器 | |
970 | 美術・骨董品・古銭・切手 | |
971 | 陶磁器 | |
980 | 進物・歳暮・中元 | |
981 | 金券類 | |
990 | 区分不能 |
この一覧は、猫頭氏(Twitter|Facebook)がまとめてくださっていた情報を拝借したものです。随時、追加更新されているようなので、本家のページもご確認ください!
一覧を見てみると、独自のコードが設定されている商品には、「換金性の高い商品(お金に換えやすいもの)」が多いことがわかります。
例えば、「鉄道・バス運賃」には「200」のコードがあるにもかかわらず、「鉄道回数券」だけ「201」のコードが設定されています。同じように「スポーツ用品・玩具」の「910」に対する「ゲーム本体・ソフト」の「913」、「電気製品」の「650」に対する「液晶テレビ」の「657」などなど。
これらの商品に独自のコードが設定されているのは、次のような理由からです。
まずひとつ目の理由は、クレジットカードの不正利用を防ぐためです。
カード犯罪の代表的なものには、スキミングやフィッシングという手口があります。方法は違えど、いずれもカードの情報を盗み取るための犯罪です。
スキミングとは、スキマーと呼ばれる装置によって、カードの磁気ストライプに記録されている情報を抜き出すもの。抜き出した情報でカードを複製する場合もあり。
また、フィッシングとは、実在する銀行やカード会社を装ってネットユーザーを偽サイトに誘導し、そこで入力させたカード情報などを盗み取るもの。日本では、銀行を装ったスパムメールが有名ですね。
スキミングやフィッシングを行う犯罪者の目的は、盗み取ったカード情報を利用してお金を手にすることです。キャッシュカードの場合は、カードを複製したり、ネットバンクを利用することで、銀行口座から現金を引き出します。
一方、クレジットカードの場合は、ネットショッピングなどで「換金性の高い商品」を購入し、それを転売することで現金を手にします。いわゆる「クレジットカード現金化」ですね。ということは、これらの商品を簡単には購入できないようにすれば、不正利用の被害を未然に防止することができそうです。
実際の対策としては、これらの商品区分コードでカード会社にオーソリ(カード利用の承認をとること)があったときに、不正利用が疑われる場合は、決済を一時保留して、本人に確認を取るなどがあります。不正利用が疑われるケースは、普段は昼間の少額利用がメインのクレジットカードで、深夜に高額な商品を購入しようとしている場合などですね。
このような場合、かなりの確率でカード会社のオーソリが下りず、決済がエラーになります。この理由がわからずに、イラっとした経験のある方もいるのではないでしょうか?とはいえ、これは不正利用を防ぐたのチェックなので、大目に見るしかないですね…。
もうひとつの理由には、信用リスク管理が挙げられます。
信用リスク(貸倒リスク)とは、簡単に言えば、貸したお金を回収できなくなるリスクのことです。個人向けの貸付け(キャッシング)の場合は、借金の返済が困難になった債務者が、自己破産や民事再生をするリスクですね。
このリスクを管理するためには、債務者個人の「信用リスクの増減」とともに、「貸し倒れになった場合の損失金額」を把握する必要があります。具体的には、他社からの借入額に変化があるか、順調に返済できているか、転職していないか、などなど。そして、信用リスクが悪化している場合には、与信額(限度額)を減らしたり、カードを利用停止にするなど、貸し倒れになった場合の損失を減らすための対策を行います。
カード会社が信用リスクを管理する上で、現金化目的でクレジットカードを利用した会員は、必ず把握しておかなければなりません。なぜなら、クレジットカード現金化をする方の多くは、借金がかさんで、もうどこからもお金を借りることができないような状況に陥っているため。つまり、信用リスクは最悪なのです。
カード会社は、このような会員の現金化目的のカード利用を察知できるように、現金化に利用されることの多い商品に、独自の商品区分コードを設定しています。
例えば、ある会員が、現金化目的で新幹線回数券を購入したとします。この場合、新幹線回数券の商品区分コードが「鉄道・バス運賃」と同じ「200」であれば、カード会社の目に留まることなく、すんなりクレジットカード現金化ができてしまいます。
しかし、現状のように独自のコードを設定しておけば、加盟店からオーソリがあり「201」のコードが伝えられた際に、決済を保留して、その会員の途上与信(信用情報の照会)を行うことができるのです。
途上与信の結果、キャッシング枠に空きがなかったり、他社借入額が年収の3分の1に達しているなど、信用情報に問題がある場合にはカード決済を止めることができます。そして、必要があれば、クレジットカードの利用停止や強制退会などの追加措置を行います。
これらの措置は、よく「会員規約に違反したペナルティ(罰則)」と表現されます。けれど、このように考えていくと、利用停止や強制退会はペナルティではなく、リスク管理の一環だということがわかりますね。
カード会社は、クレジットカードの現金化目的で購入されることの多い「換金性の高い商品」に、独自の商品区分コードを設定しています。そして、これらの商品の購入をチェックすることで、カードの不正利用を防ぎ、会員の信用リスクも管理しています。
そのため、カード会社が「信用リスクが高い」と考えている会員は、これらの商品を購入できないことも。 たとえ問題なく購入できたとしても、それを繰り返しているうちに、現金化目的の利用と判断され、カード利用停止や強制退会の処分をうけることもあります。
「信用に問題があるかも…」と自覚している方は、独自の商品区分コードが設定されている商品は、カード決済で購入しないように注意してください。
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