「歴史の修正」は本当に悪なのか…? 世界の本音に気づき、そろそろ米国の思想統制から抜け出す時なのでは

川口 マーン 惠美 プロフィール

私たちが習ったものとは違う“物語”

ところが、最近、ドイツと日本がこれまで縋ってきた米国の力が、急に弱まってきた。しかも、ドイツと日本もなぜかフェードアウト中で、かつての経済大国の面影も翳りつつある。

特に日本は、ドイツのようにEUという共同体があるわけでも、NATOという軍事同盟に加盟しているわけでもなし、そろそろ米国の思想統制から抜け出さなくては、このままでは、いざというときに孤立してしまう危険がある。

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そうならないための第一歩は、米国の作ってくれた日本史は無謬ではないことに気づき、まず、自分たちの視線で歴史を見直すことではないか。日本にはすでに立派な研究をしている歴史家がいる。

昨年12月、青山学院大学の福井義高教授との共著で、『優しい日本人が気づかない残酷な世界の本音』を上梓した。取り上げているテーマは、欧州を押し潰しかねない移民・難民問題、学校の歴史では習わない隠れたドイツの戦前史、日本人がほとんど知らない戦前、戦後の東欧事情など、「修正主義」の批判を浴びそうなものも少なくない。

それに加えて、現在の欧米の静かな全体主義化、さらにLGBTQ運動の欺瞞について。そして、本書に通奏低音として流れているのが、「歴史とは何か?」ということである。

 

福井氏は、会計制度・情報の経済分析といった分野が専門の学者だが、一方で卓越した歴史家でもあり、英独露仏西の5ヵ国語が堪能で、邦訳されていない著作や論文に積極的に当たっては、それを簡潔に整理して、世界の多様な研究や思想を示してくれる。その多くは、私たちが習った米国のものとは違った“物語”だ。

福井氏いわく、歴史家の仕事とは「事実をなるべく正しく知ろうとすること」で、「過去を称揚あるいは断罪するのではなく、可能なかぎり客観的にとらえる努力」。つまり、追求するのは、例えば成吉思汗が、あるいはナポレオンが、“正しいことをしたか否か”でなく、“何をしたか”のみ。そして、「価値判断は読者に任せる」。

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