EU「難民締め出し」新協定合意のウラで、ドイツが移民法改正を閣議決定「難民→移民→帰化」が最短3年に

川口 マーン 惠美 プロフィール

国境付近に作る難民施設で審査

これまでEUの難民政策の基本は「ダブリン協定」で、これによれば、難民申請ができるのはEU域内のみであり、域外の在外公館ではできない。さらに、難民は最初に足をつけたEU国で難民申請しなければならず、その国がその後の難民の庇護と審査を義務付けられた。

ただ、ダブリン協定が結ばれたのは、東西ドイツが統一された1990年で、当時は地中海をボートで超えてくる難民など想定されていなかった。しかも、東欧諸国はまだEUに加盟しておらず、EUの東の国境に位置していたのがドイツだったのだ。

この協定はその後、EUの拡大により2度ほど改定されたが、しかし、基本事項は変わらず、つまり、そのせいで、皆が難民申請のために、どうにかしてEUに入ろうとする現在の状況が生まれたわけだ。そして、一番入りやすいとみなされたイタリア、ギリシャ、マルタなどが、アフリカ大陸から地中海を超えてくる大量の難民でごった返し、収拾がつかなくなってしまった。今年の申請者はEU全体で100万を超える予定だ。

Gettyimages

違法難民の侵入は陸路でも急増している。中東難民は、2015年、16年の頃は、セルビア、ハンガリーなどを経由してオーストリア、ドイツへと入ってきたが、経由地の政府が国境を閉じるたびに新しいルートが開拓され、現在は、チェコ、ポーランド国境からドイツに入ってくる難民が止まらない。

ダブリン協定に従えば、今ではEU域の真ん中に位置するドイツに他の国を経由せずに来ようと思えば、飛行機で入国する以外にないはずだが、同協定はすでに機能していない。そして、違法でも何でも、どうにかドイツに入ったら、皆が難民申請するので、今年の申請数は11月までで32万5801人、前年(1〜12月)比33%増。EUの難民申請の3分の1がドイツで行われている計算だ。

さて、そこでEUは今回、国境付近に難民施設を作り、将来はそこで審査をすると決めた。イタリアに着いた難民も同施設に運び、審査が終わるまでそこで拘束する。収容施設はまず3万人分、4年先にはそれを12万人分に拡大する予定という。

 

国境付近というのが、EU国境の内側なのか、外側なのかは曖昧にしてあるが、要は、そこで難民(6歳以上が対象)の身元確認をし、指紋、写真などを登録。その情報をEUで共有し、いつでも本人を特定できるようにする。なお、難民は雲隠れできないよう、審査結果が出るまで収容所から出られない。

ベアボック外相は、子供たちまでがあたかも囚人のように拘束されるのは不当だとして、これに抵抗していた。しかし、氏の意見に賛同したのは、アイルランド、ポルトガル、ルクセンブルクの3国しかなく、ベアボック氏の主張はあっけなく却下。子連れを無条件で入れると、子供を同伴しようとする難民が増え、さらに危険な状況が生み出されるからだろう。

関連記事