ドイツ「難民→移民→帰化」を迅速化
EUの難民対策の厳格化の裏には、24年6月の欧州議会選挙に対する焦りがある。現在、最大派閥であるEPP(欧州人民党グループ)も社会民主進歩同盟(S&D)も、これ以上難民が増えて国民の不満が募ると、極右(と言われる)政党グループ「アイデンティティと民主主義」(ID)にボロ負けしてしまう。
ただ、EUの難民締め出し政策に同意したドイツ政府ではあるが、国内の足元では、党内左派およびNGOなどから、難民の人権蹂躙に加担したとして強い反発が巻き起こっている。しかも冒頭で述べたように、ドイツ政府自身もEUのこの方針に心から納得しているわけではない。その証拠かどうか、彼らはこのEUの決定の裏で、国内では移民法の改正を閣議決定した。
それによれば、ドイツで法律を侵さず、経済的に自立している外国人は、5年間でドイツ国籍が取れるようになる(現在は8年)。それどころか、模範的な人はわずか3年。しかも、これまではEU、米国、イスラエルなどの国民だけに限られていた二重国籍、あるいは多国籍が、皆に解禁されることになる。うまくいけば、同法案は1月には可決の見込みだという。
社民党や緑の党は、「難民→移民→帰化(ドイツ人)」というプロセスを迅速化し、選挙権を得たその人たちが自分たちに投票してくれると期待しているのかもしれない。しかし、このままいけば、出産数も、出産の回転率も高い元難民の人々の数が、生まれながらのドイツ人より多くなる日は遠くない。彼らが独自の候補者を立てれば、社民党も緑の党も吹き飛ぶかもしれない。
さて、話題変わって、ドイツの目下の最大の懸念は大晦日だ。昨年はベルリンを始め、いくつかの大都市で、中東の移民・難民が暴徒と化して警官とぶつかり、あたかも内戦のようになった。今年はいったいどうなることか。
全てがあやふやなまま、激動の一年が暮れていこうとしているEUである。