振り下ろした足の下に、嫌な感触。ゾロの血まみれの手。
「っ!!!なんで、お前、手を入れたんだ!血が、、、骨は!?おいっ!?」
サンジはゾロの手から出る血をみて正気に戻った。
「ご、ゴメン。すまない。ロビンちゃんから貰った大事なものなんだよな。
オレ、怒り狂って、、、とりあえずチョッパーよぶから、、、
ロビンちゃんにはオレがちゃんと謝るから、、、な、悪い、、、ゾロ」
サンジがゾロの怪我している手を触ろうとすると
「触るなっ!!」
床に突っ伏した状態のゾロが、サンジを見ずに叫ぶ。
つぶれた木箱から手もどけずにそのままだ。
「ゾロ、、、悪かった。どうかしていたんだ」
サンジはただ事ならぬゾロのようすに、自分がした事の重大さに気付く。
ゾロの背中がかすかに震えている。
片腕で顔を隠してただ、声も立てずに泣いている様だった。
「い、いいから、、、もう、、、一人に、、一人にしてくれ」
かすれたゾロの声だけが男部屋に響く。
別人のように弱々しいゾロ。胸がかきむしられるような気がする。
気付くとロビンが部屋の入り口に立っていた。
サンジは振り向くと頭をたれる。
「申し訳ない。二人の大事な物を、、オレ、壊したんだ。
ゾロが体張って守ろうとしたのに、容赦なく踏み潰した。
どんな罰でも受けるよ、ロビンちゃん。すまない」
「あなた、自分が何をしたかわかってるの?
それとも本当に何も気付いていないの?剣士さんがどんな想いで、、」
「ヤメロ!!」
黙っていたゾロが口を開く。
「も、いいんだ。これで、、、いいんだ。」
下を向いたままのゾロだったが、床には涙がポタポタと落ちる。
「ゾロ、、、」
サンジは身が焼かれそうなほどの後悔をしていた。
訳のわからない苛立ちをゾロにぶつけ、あのゾロが涙を見せるほどの
ひどいことをしてしまった。
ロビンとゾロのことなのに、無関係な自分が何かとても大切なものを
壊したのだ。ゾロの手と共に。
「とりあえず、治療が先だ、な?話はその後にしよう、ゾロ?」
力ないゾロの手をサンジは不意に掴んて持ち上げた。
「や、見るな!!!」
ゾロが叫んだので逆にとっさに見てしまった。
つぶれた木箱の隙間からはみ出ている壊れてグチャグチャに潰されている「バラの砂糖菓子」
「見るな!見るな!!見るな!!!」
ゾロは両手で頭を抱えてうずくまっている。
怯えた子供のようにしゃくりあげて泣いている。
俺の作ったデコレーションの砂糖菓子を何故ゾロが。
木箱にまでしまって、、、大事そうに、、、、
自分の手が怪我してでも守りたかった砂糖菓子?
サンジにはまったく事態が読めていない。
ロビンがゾロのそばにきた。
やさしく髪の毛を撫でている。こんな時だというのに、またサンジは
腹が立つ。そんな場合ではないのに。ゾロにさわるな、とロビンに言いそうになる。
そう思った自分にサンジは愕然とした。
自分が、、自分がゾロのこと好きだったのか!?
気付いた瞬間、サンジもまた、ゾロ同様に頭を抱えてしまう。
ゾロを撫でていたロビンが立ち上がった。
「言ってしまいなさい。剣士さん。こんな中途半端では前よりも苦しいだけだわ」
そういうとロビンはサンジの顔も見ずに部屋を後にした。
二人だけになった男部屋。
両膝の間に頭をうずめて泣いていたゾロが
ようやく顔をあげて、涙をぬぐった。
「サンジ。。。取り乱して悪かった。もう大丈夫だから行ってくれ。
食料の調達しなくちゃいけないだろう?」
無理矢理いつもの顔を作ろうとがんばっているゾロの顔。
見ているサンジの方が辛い。
「ゾロ、何か言いたいことがあるんだろう?どんなことでも聞くぜ。
何でも言ってくれ」
サンジはさっき、ロビンがゾロに残した言葉が気になっている。
間違いなく、自分にいうことがあるはずだ。
「いや。何もねぇ。それと、木箱に入れていたバラの菓子は
オレがキレイだなと思ってたらロビンがくれただけだ。ただそれだけのものだから
別に大事なもんじゃねぇ。忘れてくれ」
「っ!!何言ってんだ!!大事な物だったんだろう!?だからとっさに手を、、」
「大事なんかじゃねぇ!いらねぇ!あんなの、、、いらねぇんだ、、」
ゾロの声がまた擦れていく。
ダメだ。このままでは埒があかない。こんなゾロは初めてだ。
サンジは拒絶されるのを承知でゾロを抱きしめた。
ビクっと体を振るわせるゾロ。
「離せ」
「ダメだ。離せない。お前、このまま壊れそうだ。そんなのはダメだ」
サンジはゾロの背中に回した手に力をこめる。
震えるゾロをなだめるように、ゆっくりと背中を撫でた。
さっきロビンがしていたように、やさしく、やさしく、、、
「、、、きだ、、、サンジ」
サンジの肩口から小さな声が聞こえた。
「何?ゾロ、聞こえないよ?」
サンジが伺うように首を傾けると
ぎゅっと目をつぶったゾロが、今度は聞こえるように言った。
「好きなんだ。サンジ。もう、ずっと前から。お前が好きなんだ」
突然の告白にサンジは声が出ない。
心臓をぶち抜かれたような衝撃が走る。
ゾロが!?オレを!?
、、、、大事そうに握り締めていた砂糖菓子。丹精こめて作ったものだ。
それをロビンちゃんの買ってくれた箱にしまいこんで、、、、、、、
サンジは一つずつ不可解なゾロの行動を順を追って考える。
思わず気持ちを言ってしまったゾロは、そっとサンジの胸をおして顔を見る。
目を見開いて驚いているサンジの顔。
こうしてずっとサンジの目を見たかった。吸い込まれるような青い瞳。
人を生かすための手。優しくすべてを包み込むような存在感。
すべてゾロのもっていないものばかり。
好きで。好きすぎて。自分が何をするかわからない状態にまで
追い込まれていた。顔を見ることすら出来なくなっていた。
でも、もう、コレでなにもかもお終いになるのだろう。
サンジの作った彫刻のようにきれいな花の菓子もつぶれてしまった。
想いを箱の中に閉じ込めておこうと思ったのに
その木箱も壊れて、想いもあふれ出てしまった。
そして、、、
とうとう、サンジ本人にまで自分の気持ちを伝えてしまった。
いっそ清々しいではないか。
はっきりと嫌われてしまえば、むこうから避けてくれるだろう。
女好きのサンジ。男の、しかも、ケンカしかしないような
こんなオレに告られて、固まっている。オレのせいだ、、、
「ははっ、、、怒りも通り越して言葉も無いか、、そうだよな。
気持ち悪い思いをさせて悪かった。二度とこんなことを言うつもりもないし
そんな素振りも見せないと誓う。だから、、、オレ、船に乗っていてもいいか?」
ゾロの切ない作り笑い。
悪かっただと?船に乗っていてもいいかだと?
サンジはようやく、ゾロの気持ち、そして今の事態が飲み込めてきた。
このバラの砂糖菓子にこめられたゾロの想いも。それを理解していた
ロビンの行動も。点と線が繋がって、やっと思考が動き出す。
「オレが気味悪いから船を降りろといえばそうするのかよ」
あまりの女々しいゾロに、サンジは普段どおりの口調で問い掛ける。
「、、、だって、どーすればいいんだよ。オレだってわかんね、、」
みるみる曇っていくゾロの表情。あの何にも動じないロロノア・ゾロが
好きな人間の前ではこうも弱気になるものかと思うと
不思議な感じがする。人を愛したことも愛された記憶もないのだろう。
なんという不器用な男なのだと、サンジは苦笑するしかない。
「ゾロ、オレがなんでロビンちゃんから貰った木箱を
踏み潰したかわかるか?」
「お前の大好きなロビンが、オレなんかをかまったのが面白くなかったからだろ?」
ふーっ。見当はずれな答えだが、ゾロがそう思うのも無理はない。
「違う。オレが女性の大事な想いを踏み潰したりするはずが無いだろう?
お前が、ロビンちゃんに夢中になっていると思って、腹が立ったんだ。
オレの顔もろく見ないくせに、ロビンちゃんにはニコニコしやがって、ってな」
「?」
ゾロは涙を目に溜めたまま小首をかしげてる。遠まわしの言い方なんて
この男には通じないか。この可愛らしい仕草ももっと見ていたいが
まずは言っておくことがある。
「オレだってお前が好きだよ、ゾロ。仲間としてじゃないぜ?
お前が誰かとオレよりも仲良くしていると腹が立つ。
オレの方こそお前に惚れてるよ。意味わかるか?好きだって言ってんだぜ?」
聞こえているのか、いないのか、しばらくボンヤリと
サンジの顔を見ていたゾロが突然、サンジを突き飛ばす。
「いでっ!!なにすんだ、いきなり」
あまりのことにゾロを睨みつけようと顔をあげると
真っ赤になったゾロが口を押さえて
「う、ウソつくんじゃねぇ!んな、都合のいい話、聞いたことねぇ!
同情すんな!ウソつくな!!バカにすんじゃねぇ!!」
ぷちパニック状態で悪態をつき始めた。反応遅いぜ、ホントに、、
でも、、、、、、
かわいー。
この服も相乗効果を出しているが、真っ赤になったゾロ。
かわいー。
恋愛に関してだけは、こんな乙女みたいな思考の持ち主だったなんて。
あの戦闘時のゾロとは正反対だ。
かわいー。
サンジはまだ、ギャアギャア言ってるゾロを封じ込み、
うるさい口を塞いだ。
カチーンと見事に固まったゾロの唇がかすかに震えている。
「ふぁっ、、、」
「ゾロ、ひょっとしてファーストキス?」
言った瞬間に、猛烈にまた暴れ出したゾロ。
「ちゃんとオレを見ろよ、ゾロ。オレの気持ちがホンモノかどうか
お前にはわかるだろう?」
そう問えば大人しくサンジを見るゾロ。
でも益々顔は赤くなっていく。
サンジは愛しいゾロにゆっくりとキスをする。
今までの不可解な自分の行動も、訳のわからないゾロへの苛立ちも
何もかもが解けていくような気がした。
「好きだよ。ゾロ。オレ達、も少し素直になろうぜ?」
ゾロは黙って下を向く。どうしていいのかわからずに困っているみたいだ。
またさっきの様に背中をゆっくりと撫でる。
「いいのかよ。オレ、マジでお前に、、、その、、、
、、、オレのこと、うっとーしくなんねぇ?」
俯いてボソボソしゃべるゾロ。
なんでこんなに可愛らしいことを平気で言うかね。
天然で無自覚ってのは恐ろしい。コッチはマッハの勢いで
ゾロにメロメロだ。。。。。
やべっ。勃ってきた。サンジは自分の息子の単純さを笑った。
サンジは平常心を保ってゾロから離れると
「それは、コッチのセリフだ。お前、オレがラブコックだってこと
忘れてるだろう。好きなら男も女も関係ないぜ?
キスは貰った。次はバージンを頂く。
お前がウザイと言ってもオレはとまんねーよ?」
「は?」
「ま、いい。その話は今度な。今はとりあえず、手の治療と
ロビンちゃんにお礼を言いに行く。いいな?」
コクンとうなずくゾロ。そしてまた、可愛らしい発言をした。
「オレ、まだ信じられねぇ、夢じゃねーだろうな?
いまさら夢オチって言われても立ち直れねーぞ」
「いや、夢なわけねーだろう、その手の傷は、、」
「あ、、、、いっ!?痛てぇ!!そういえばスンゴク痛てぇ!!
どーしてくれんだ、クソコック!!剣、持てなくなったらどーすんだっ!」
今ごろ痛いのかよ。バカだ。可愛らしい天然だけど世界最強になる予定の大バカだ。
「折れてねぇよ。とっさに力加減はしたはずだ。血が出てるのは
木箱の破片のせいだよ。ったく、あんな小さい箱に自分の思いを閉じ込めるな!」
「、、、ん」
サンジはゾロの血だらけの手を握ったまま、クルーたちが心配しているであろう
キッチンへ向かった。まずはロビンちゃんにちゃんと報告しなければ。
そして、ゾロの服も元に戻さなければ。
他のヤツラは見なくていいのだ。こんなかわいいゾロなど。
二人きり以外のところでは、魔獣でいてくれ、ゾロ。
キッチンに入ると、ロビンがとても嬉しそうに笑っていた。
ゾロはロビンに目だけで”アリガトウ”を言う。
言葉になどしなくても、この女はすべてお見通しなのだから。
end
----------------------------------------------------------------
こんな乙女な展開になってしまうとは、、、ゲホゲホッ
novelsに戻る
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||