2020年の7月豪雨の被災者から、住宅の再建費用の名目で現金700万円をだまし取ったとして、建築業者の元代表の男が逮捕されました。

詐欺の疑いで逮捕・送検されたのは、人吉市にあった「匠工務(たくみこうむ)一級建築士事務所」の元代表・山口卓三(やまぐち たくみ)容疑者(75)です。

警察によりますと山口容疑者は2021年、豪雨で住宅が被災した人吉市の男性(67)に対して「1800万円の契約金を支払えば住宅を建てる」と嘘を言い、頭金などとして現金700万円をだまし取った疑いがもたれています。

男性が現金を支払ったあと、工事は一切行われないまま、山口容疑者はおととし3月に人吉市の事務所を引き払っていたとみられます。

警察はおととしから山口容疑者による同じ様な被害の相談を複数受け、事務所があった場所などの家宅捜索を行い、捜査していました。警察の調べに対して山口容疑者は「700万円は返していないが詐欺と言われても納得いかない」と容疑を否認しています。

「匠工務(たくみこうむ)」を巡っては、被害者の男性を含む5人の被災者が約2900万円の損害賠償を求める裁判を起こしていて、警察は、余罪を調べています。

全国の被災地を転々

今回の事件では、工事を行う意志や能力があったかが問題になります。

匠工務の事務所は7月豪雨の翌月、2020年8月から2022年3月まで人吉市にあったことが確認されていて、この期間に20数件の「災害関連工事」を請け負ったとみられ、実際に工事を行ったものもあるということです。

警察によりますと山口容疑者は、これまで全国の被災地を転々としていて、現在は三重県で別の代表者を立て建築会社を実質的に経営しているということです。