成田空港へのアクセス強化を目的に整備が急がれている「北千葉道路」。
関連する工事の入札を巡って贈収賄があったとして、千葉県の道路建設事務所の所長と建設会社の社長が逮捕されました。
事件の経緯や捜査の最新情報、それに全線開通に向けた工事への影響などについて詳しくお伝えします。
逮捕されたのは、千葉県北千葉道路建設事務所(成田市)の所長、白藤徹 容疑者(54歳)です。
事務所が発注した「北千葉道路」に関連する工事の入札で、建設会社に便宜を図った見返りに、会社社長から2023年4~10月ごろに複数回にわたり、現金計約20万円を受け取ったり、40万円分ほどの接待を受けたりしたとして、収賄の疑いが持たれています。
建設会社社長の竹内一雅 容疑者(51歳)も、贈賄の疑いで逮捕されました。
警察は、2人の認否を明らかにしていません。
便宜を図った疑いが持たれているのは、「北千葉道路」と成田市内で交差する市道を整備する工事の入札です。
この工事では、最低額の目安となる「調査基準価格」として1億1100万円あまりが設定されていましたが、贈賄側の会社は、この基準価格に極めて近い1億1101万円あまりで入札していたということです。
入札は、総合評価方式だったため技術力なども加味されたものの、贈賄側の会社が落札しました。警察は、事前には明かされない基準価格を所長が漏らしていた疑いがあるとみて詳しく調べています。
また、白藤容疑者が所長として事務所に着任した2023年4月以降、この事務所が所管する5件の公共工事で入札が行われ、このうち4件で贈賄側の建設会社が応札していました。
この会社が落札したのは、所長が最低額の目安となる基準価格を漏らした疑いがある1件だけですが、他にも基準価格と同額か極めて近い金額で入札していたケースが複数あったということです。
警察は、ほかの3件の入札についても経緯を詳しく調べることにしています。
千葉県によりますと、白藤所長は1992年4月に県の土木職の技術職員として採用。県内の複数の土木事務所で課長や次長として、道路整備や河川改修などの公共工事の入札に関わってきたということです。
2023年4月、北千葉道路建設事務所の所長に着任し、設計書の決裁など公共工事の契約事務を統括していて、入札関係の価格を事前に確認できる立場だったということです。
本人については、「派手な生活をしていたという情報は特になかった」ということです。
2023年10月末、本人から職場に警察の聴取を受けていると報告があり、休暇を取ったり、在宅で勤務をしたりしていて、「迷惑をかけて申し訳ない」と話していたということです。
贈賄側の建設会社は、2019年4月~2024年1月に、道路や施設の改修工事といった千葉県の公共工事を計37件受注し、総額は67億円に上っています。
県は年度ごとに工事の受注額の上位20社を公表していて、この会社は2021年度は11位、2022年度は18位となっています。
県によりますと、総合評価方式による入札は、入札額だけでなく技術力なども加味して決めますが、この建設会社は県が工事の実績や技術力に応じて定める4段階の評価で、最も高いAランクだということです。
千葉県の熊谷知事は、1月11日の記者会見で事件について陳謝しました。
職員の逮捕は極めて遺憾で、県民の皆様に大変申し訳ない。
県民の信頼を取り戻すため、2度とこのようなことをさせないよう対策を講じたい。
その上で、外部の有識者による第三者委員会を立ち上げ、今回の事件の背景や、県が発注する工事における入札制度の課題などについて、調査や検証を行う考えを示しました。
また県では、2017年に発覚した官製談合事件を受けて、利害関係者との関係で順守すべきことを定めた「職員倫理条例」が制定されています。
再発防止のため、全職員を対象に、改めて条例の内容を確認する研修を実施するとしています。
工事の発注で不正があった疑いが持たれている「北千葉道路」。「外環道」から千葉ニュータウンを経て、成田空港を最短距離で結ぶ全長約43キロの国道です。
鎌ケ谷市と印西市を結ぶ区間など一部はすでに開通していますが、未開通の部分も残っていて、このうち印西市から成田市までの13キロ余りの区間は、国と県が分担して建設工事を進めています。
成田空港へのアクセスを強化するとともに、慢性的な渋滞の緩和につながるなどとして、県は全線開通に向けて整備を急いでいます。
(整備への影響を問われたのに対し)非常に重要な道路で、整備に一刻の遅れもあってはならない。
人員の手配も含めて体制を速やかに立て直し、工事を着実に進めていきたい。