初投稿となります。
今回の記事では聖遺物厳選の難しさを数値的に計算してみました。統計的な議論はせず、高校数学レベルの確率や期待値の議論にとどめています。
まとめ
・聖遺物厳選は闇
・でもどのくらい闇なのかを確かめた記事はあまりない
・高校数学程度の確率を用いて各スコア、各部位における聖遺物の出現確率を計算
・スコア50の花羽と、スコア45の時計、スコア40の杯と冠が等価であることを導いた。
・ガチ勢で1年間くらい厳選すればこの水準まで持っていける
・つまり聖遺物厳選は闇
導入
原神で好きなキャラを限界まで強くするため、聖遺物厳選は避けて通れない道の一つです。
聖遺物厳選では、
①種類②部位③メインオプション④サブオプションの内容⑤強化時のサブオプションボーナス
の5つの要素を最適な状態に揃えていく必要があります。これらはどれも難しいことですが、特にサブオプションの内容と強化ボーナスに関しては、厳選の難易度を飛躍的に上げるだけでなく、どのくらい頑張れば自分の満足なレベルまで到達できるのかがよく分からなくなり、結果としてプレイヤーが身の丈に合わない量の樹脂を聖遺物秘境に投下してしまう要因にもなります。
聖遺物の評価方法や聖遺物による火力上昇に関する記事はこれまでに数多く投稿されていますが、良いとされる聖遺物を得るまでの過程に関する考察は数が少なく、いまだに疑問に思っているプレイヤーは多いと思われます。
この記事では、原神の聖遺物厳選で広く用いられている指標である聖遺物スコア(攻撃力%x4/3+会心率x2+会心ダメージ)をもとに、それぞれの部位の聖遺物がある一定のスコアを超える確率を算出します。
結果
目的の聖遺物で目的の部位を当てる確率は10%、花と羽はメインOPが固定されているため確率10%のままサブOP厳選に移れますが、攻撃%時計は約2.7%、ダメージバフ杯は0.5%、会心系冠は1%となります。
この段階までが、ランクが45〜50程度で低い時期での妥協厳選の目安になるわけですが、この段階で杯や冠のために100回以上秘境を周るのは得策ではありません。4セットを揃える厳選ではなく、剣闘士などを用いた2セット+2セットを揃えることを目標にするべきと言えます。
ドロップのパターンに場合分けをしてそれぞれの確率を求める
サブOPの確率計算にあたって、以下のようにパターンAからDまで場合分けをしました。
以下、攻撃力%、会心系のスコア計算に入れられるサブオプションのことを有効ステータスと呼びます。その他のステータスは非有効ステータスと呼びます。このような前提の置き方なので、HPや防御力などを参照する特殊なアタッカーには今回の議論はそのまま適用することはできません。ご了承ください(そのうち別の記事で書きます)。
A. 初期OPが4でそのうち3つに有効ステータスが入る場合。最高級品です。将来がほぼ約束された聖遺物ですが滅多に出てきません。
B. 初期OP4、うち2つに有効ステータス。強化の運要素がかなり強まりますが、その抽選に打ち勝てばパターンAにも負けない神聖遺物になれます。
C. 初期OP3、レベル4時点で3つの有効ステータス。強化回数が最高級品のパターンAから1回減りますが、それでも強化では高確率で有効ステータスが伸びる神聖遺物の種です。
D. 初期OP3、レベル4時点で2つの有効ステータス。正直神聖遺物になる可能性はAからCのパターンに比べて低いですが、実際の厳選ではパターンDが大勢を占めるため、特に時計や冠では基本的に強化して低い確率を信じなければなりません。
各部位別に、A〜Dのパターンに該当する聖遺物が出る確率は以下の通りです。(ある聖遺物秘境で、1個の聖遺物がドロップしたときに各パターンに該当する確率)
時計と冠に何も入っていない項目があるのは、時計と冠ではサブOPに3つの有効ステータスが入ることがあり得ないためです。
神聖遺物の種が実際に神聖遺物になるための確率
ここからはいい感じのレベル0の聖遺物が生まれたことを前提に、強化後に実際に神聖遺物になる確率を求めます。
各パターン別に、強化されてほしいステータスに強化が入る確率は、以下の表のようになります(0~5の数字は有効ステータスに強化が入る回数)。例えば最高級品であるパターンAでは4回以上有効ステータスに強化が入る確率は、23.73+39.55=63.28%です。いかに勝利が確定しかけている(ただし確定ではない)かがわかるかと思います。
そしてこれらの強化回数で実際にどのくらいの最終スコアになるのかを、スコア1回分の期待値である、6.6を使った場合が以下の表です。

今回は期待値を使っているので、あくまでこの表のスコアは平均的なスコアです。パターンAで有効ステータスへの強化が5回でスコア60越えも、スコア45を割り込むこともあり得ます。
ちなみに期待値という、誰でも実現可能な値にもかかわらずこの中で唯一50越えを達成しているパターンA・有効5回がいかに希少かがわかるかと思います。
さて、すべての必要な数値は出そろいました。あとは聖遺物の部位ごとに、欲しいスコアが出る確率を求めます。結果は以下のようになります。累積確率(○○以上になる確率)であることに注意してください。また、0.000%になっているものは全くあり得ないわけではなく、期待値を用いて計算するという前提条件を取り払えば0%ではなくなります。
考察
まずは聖遺物厳選の極致、誰もが憧れるスコア50越えの聖遺物について考えますが、花・羽では0.01%「も」あります。確率はそれぞれ別で計算されているので、花か羽のどちらかで手に入る確率はさらに高くなります。数千個聖遺物をドロップさせれば手に入るプレイヤーがちらほら出てくるくらいのレベルですね。1年以上続けている人だと1個はあるという人も少なくないのではないかと思います。
杯のスコア50越えの確率は一気に減って0.0003%となっています。数千回引いてようやくキャラ祈願の単発を一回引くことに相当する試行になります。つまり狙った聖遺物で出すのは不可能です。断言します。しかしどの聖遺物でもいい、楽団や剣闘士でもいいという場合は確率的には数倍〜数十倍に跳ね上がりますので、本当にチラホラとですが持ってる人を見かけることもあります。
それ以外の部位では0%になっていますね。期待値を用いている関係で50越えは出ないような見え方ですが、もちろんそんなことはなくスコア46.20、つまり4回強化成功した聖遺物に関して強化幅を理論値にしていけばよいということになります。が、当然いばらの道になります。そもそも期待値である46.20ですら、時計に関してはスコア50の花羽の2倍、冠に至っては10倍価値が高いので、持ってる人は家宝にしましょう。
特定の秘境での厳選は、どんなに長くても半年~1年間継続するのが限界だと思っています。なぜなら1年に1回のペースで国が増えていくため、新しい聖遺物やキャラクターが追加されていき、1キャラを集中的に強化するのが難しくなってくるからです。モチベーションの問題もあるでしょう。
厳選ライト勢は1日に10回、ガチ勢は20回分くらいは秘境に通えるので、ライト勢が半年間毎日10回秘境に通った場合、2000個程度の聖遺物を手に入れられます。ガチ勢が1年間毎日20回秘境に通った場合、8000個程度の聖遺物を手に入れられます。
この場合、ライト勢であってもスコア46.20以上の花や羽はほぼ確実に手に入れることができます。スコア52.8以上も人によっては手に入れることができます。しかし時計ではスコア39.60、つまりスコア40前後の聖遺物を作るのがやっとになります。時計の厳選が終わらなくて落ち込んでいる人は、確率的には妥当なので安心してください。杯はもっと厳しく、スコア30が関の山となるでしょう。20台でもおかしくないです。冠も同じくらいで、スコア40くらいの聖遺物の価値は花羽の50越え聖遺物に匹敵します。
ガチ勢の場合はどの確率もライト勢の4倍程度になりますから、手に入ることが見込まれる聖遺物のスコアも上昇します。花、羽に関しては狙った聖遺物でスコア50くらいのものを高い確率で手に入れられます。時計もスコア40を超えられますが、50以上のものを得られる可能性は依然として低いでしょう。杯ではスコア40のものを持てている可能性が高いです。冠も同じくらいですね。
スコア50を超える聖遺物は憧れの的ですが、花と羽以外で手に入る機会はほとんどないといってよいと思います。花・羽でのスコア50は、時計でのスコア45弱、杯・冠でのスコア40に相当します。本当に厳選を頑張りたい人であっても、スコア50超えの時計や杯などは目指さずに、このくらいの目標を設定するとよいと思います。
いわゆる聖遺物厳選の妥協ラインをどこに設定するかというのもここまでの結果から導きやすくなりました。
おそらくですが皆さんガチャの星5排出率である0.6%くらいまでなら普通に耐えられるはずですから、花や羽はスコア40弱、時計はスコア30弱を目指し、その過程でいい感じの杯か冠を出るのを待つという戦略が良いでしょう。今回は4OP中1OP だけ有効ステータスが入る場合を無視しているため、それも含めればスコア20程度の杯や冠のドロップの目は十分にあります。そして片方でそのような聖遺物が手に入ったら、もう片方の部位は妥協枠として他の種類の聖遺物を使ってハイスコアな聖遺物で5枠目を埋めましょう。
方法と計算過程
結果に関して計算過程を完全に端折ったため、こちらでその概要を記します。なるべく分かりやすく書きたいのは山々ですが、以下数学的な議論になるので敢えて文体は堅いものにさせてもらいました。基本的に興味のある方以外は読まなくて良い内容です。ここまでの結果について、計算過程を詳しく知りたい方だけお読みください。
前提条件
今回は議論を簡単にするため、非攻撃ステータス参照アタッカー(HPの胡桃、防御力の荒滝一斗、チャージ効率の雷電将軍)のような個別の条件を除外し、攻撃と会心で火力が伸びるオーソドックスなアタッカーについて考える。
このようなアタッカーについての聖遺物評価の方法は確立されており、聖遺物スコアとして知られている。
聖遺物スコアとは、
攻撃%×(4/3)+会心ダメージ%+会心率%×2
で表される数値であり、これにより異なるステータスの伸びを統一的に評価することができる。なお、一般的には攻撃%を4/3倍ではなく等倍する計算の方が主流であるが、これは攻撃力バフの手段が多様であること、およびベネットの存在によって聖遺物における攻撃の価値が過小評価されているためであり、本稿ではキャラ単体での火力を評価するためより4/3倍でのスコア計算を採用する。
なお、本稿で考える聖遺物は全て星5である。
聖遺物の種類
1つの秘境あたり2種類の聖遺物が存在するため、単純に1/2(50%)。ただし、しめ縄絶縁や氷風沈淪など例外的にどちらの聖遺物もアタッカー用に適しているケースはあり得るが、この場合単純に最終的な確率を2倍すればよい。
聖遺物の部位
聖遺物の部位は5種類(花、羽、時計、杯、冠)のため、ある1つの目的の部位を出す確率は1/5(20%)となる。
メインオプション
このサイト(英語)を参考に各オプションの出現率を与える。
まずメインOPについて、
時計は攻撃力%、杯は元素ダメージバフ、冠は会心ダメージまたは会心率のうちどちらか一方であるとする。
時計における攻撃力%の出現率: 4/15=1/3.75
杯における元素ダメージバフの出現率: 1/20
会心率またはダメの出現率: 1/10
なお、メインOPが固定である花と羽は1となる
サブオプション
次にサブオプション出現率は、
会心率・ダメージ:7.5%
攻撃%:10%
その他の%系:10%
定数系:15%
が目安となる。ただしメインOPとサブOPは重複しないためこの値からはずれが生じる(出典:このサイト(英語))。今回は実際のずれを加味して計算した。
初期オプション数について、
初期3OPが80%、初期4OP20%であるとされている。(出典:Shino1154さん 【中間報告XXI】続・聖遺物統計(~2100))
ただし剣闘士・楽団聖遺物は3OPが66%(2/3)、4OPが33%(1/3)であることが知られている。今回は通常の厳選、つまり聖遺物秘境を回るケースを想定するので4OPの確率は20%とする。
強化費用に見合う高いスコア(スコア30~40以上)が見込める聖遺物の初期状態・レベル4時点での状態を以下の4パターンに分ける。注意すべき点としては、聖遺物に4つのOPが揃った時点をスタート地点をみなしていることである。つまり今回は、初期3OPの聖遺物についてはとりあえずレベル4まで上げた上で、使えるか使えないかを判断するシチュエーションを考えている(初期4OPは強化せずにその時点で判断する)。
A. 初期OPが4でそのうち3つに攻撃力%と会心系が(以下有効ステータスと表現する)が入る。(レベル0時の理論上最高スコアは23.4)
B. 初期OP4、うち2つに有効ステータス(レベル0時の理論上最高スコアは15.6)
C. 初期OP3、レベル4時点で3つの有効ステータス(レベル4時の理論上最高スコアは23.4)
D. 初期OP3、レベル4時点で2つの有効ステータス(レベル4時の理論上最高スコアは15.6)
(※この4パターン以外にも、例えば初期4OPで1つだけ有効ステータスが入り、5回の強化ですべて有効ステータスに強化が入るケースなどでは高スコアの聖遺物が生まれるが、1000分の1程度の運試しになるので今回は無視する。)
各パターンの聖遺物が生まれる確率計算を行う。抽選方法が不明なためここでは、4つのOPを1つずつ順番に抽選していくものと仮定する。順序付きの確率を計算し、該当するすべての順序について確率の和をとることで算出する。
パターンA, C:4OP揃ったときに3つが有効ステータスとなる確率とみなせる。ある聖遺物に4つのOPが揃っているとき、有効ステータスが3つになっている確率は、花羽では約2.3%で、杯では約1.1%となり、その他の部位では確率0である。パターンAではここに初期4OPの確率20%を、パターンCでは初期3OPの確率80%をかければよく、結果は以下の表の通り。
パターンB, D:4OP揃ったときに2つが有効ステータスとなる確率とみなせる。ある聖遺物に4つのOPが揃っているとき、有効ステータスが2つになっている確率は、花羽では約26.2%で、杯では約13.0%となり、時計では約20.4%、冠では約11.1%となる。パターンBではここに初期4OPの確率20%を、パターンDでは初期3OPの確率80%をかければよく、結果は以下の表の通り。
サブオプション強化の抽選
まず可能な強化回数が、パターンA,Bが5回、C, Dが4回である。強化時にどのOPが強化されるかの抽選は均等な確率である。それぞれの確率は二項分布に従うので、以下の通りになる。列は各パターン、行は何回強化されるかを表す。
サブオプション強化幅
サブオプション強化によって伸びるスコアは、5.4, 6.2, 7.0, 7.8の4つのうちいずれかである。これらのどれが選ばれるかについても均等な確率なので基本的には先ほどと同様に計算すればよいのだが、先ほどの表に加えて次元数が一気に増えてしまい扱いきれなくなること、またプレイヤー視点では伸びればそれだけで十分という意見が多いと思われるので、今回は詳しく計算はせず、期待値6.6と、理論値7.8を用いて計算する。
まず期待値スコア6.6を用いて計算した各強化回数での最終スコアは以下の通り
理論値スコア7.8を用いて計算した最終スコアは以下の通り

どちらも単純に強化回数に応じて6.6や7.8の初期個数+回数分の和をとったものである。
最終的な確率
サブオプション強化抽選の確率と、期待値スコアから各スコアの生成確率が求まる。結果参照
補遺
前半のシート群に出てくるA、D、Eといった文字は、A:攻撃力%、D:会心ダメージ、R:会心率、E:外れOP%、E0:外れOP定数を意味する。