大学受験対策といえば、猛勉強して知識を頭にたたきこむこと――長らくそんな時代が続いていました。しかし今、大学受験が大きな変化を遂げています。センター試験が大学入学共通テストに変わったことを筆頭に、それまで知識を問うものであった一般入試は、思考力や表現力を問うものに変わりつつあります。それ以上に大きく変わっているのが、「総合型選抜」と「推薦入試」です。いまや大学生の50%は、一般入試以外の方法で入学しているといいます。今、大学受験では、どんな変化が起こっているのか? 新刊『 勉強嫌いな子でも一流難関大学に入れる方法 』(竹内健登・著)から抜粋します。3回目は、学びにおける「読書」の意味について。
本が読めない子どもは、大学生になれない?
大学受験改革と、それに伴う「総合型選抜」と「公募推薦」(=アピール入試)による合格枠の増加によって、偏差値が低い高校生や勉強嫌いな高校生でも、一流難関大学・上位大学に入学する道が開けました。
実際、50%もの大学生が、一般入試以外の方法で大学に入学していること、そして、その選考過程ではIQだけでなくEQ(こころの知能指数)も問われていることは、これまでお話ししてきた通りです。
これは、偏差値偏重の教育制度を見直す、大きな契機であることは間違いありません。
しかし一方で、ある習慣のない高校生にとっては、厳しい戦いを強いられることになっています。それは、「読書習慣」です。端的にいえば、本が読めない高校生は、大学に入りにくくなっているといえます。それはどういうことでしょうか。
アピール入試にほぼ必須の「小論文」は読書量がものをいう
アピール入試の選考プロセスの多くは、
書類提出→小論文→面接・口頭試問
となっており、例年、親御さんやお子さんからは「小論文はどうやったらうまくなりますか?」という質問が寄せられます。
私が考える小論文上達のコツは、2つです。
1つは、本をたくさん読むことです。できれば小説などのフィクションではなく、論説文や評論文を読むようにしてください。
書籍でいうと、「新書(単行本よりも小さく、文庫本よりも大きい判型)」がお勧めです。なぜなら、新書の多くは大学教授が書いていますし、論説文や評論文の形式になっているからです。さらに、新書は基本的に、専門家ではなく一般の読者に向けて書かれているので、いきなり専門性の高すぎるものを手に取ってしまうリスクも抑えられます。
大学教授が書いた新書をたくさん読んで、大学教授の語彙レベル、そして事例の出し方を習得しましょう。加えて、筆者の主張、根拠、具体例、逆接などの論理的な文章の型に触れることで、読解力の向上にもつながります。
インターネットの記事にもよいものはありますが、その質はまちまちです。やはり書籍のほうが情報がよくまとまっていますし、コンセプトが明確で論理的な内容が多いため、多くの学びを得られるでしょう。
なお、何か特定のテーマの小論文を作成したり、探究活動の結果をレポートなどの形でまとめる際には、最低でも3冊は書籍を読むべきです。複数の視点からの事例や意見を入手することが、自分独自の意見を発信する材料となるでしょう。
小論文上達のコツの2つ目は、とにかく文章を書くことです。当塾の生徒には、志望する学部に関係するテーマの1000字の小論文を、毎週必ず1つか2つ、書かせています。
なぜ、週に1〜2つの小論文を書かせるのか。その理由は2つあります。1つ目は、小論文を書き慣れることで、自分の意見を論理的に伝える習慣を身につけるためです。
これは当塾の指導理念でもありますが、真に社会で活躍できる人材とは、自分の意見を論理的かつ情熱的に発信し、相手を説得する力を有した人材であると考えています。しかし、日本の高等学校教育や大学教育ではこのような力を養うカリキュラムがないため、自分の意見を発信できない若者が非常に多い。意見を論理的に発信する訓練を日ごろから行うことで、小論文でも面接でも堂々と振る舞えるようになりますので、とにかく書く量を確保している、というわけです。
2つ目の理由は、そもそもの作文力を上げるためです。前述のように、高校生の文章は多くの「あら」が見られます。文法のミス、論理の飛躍、意見に関係のない意味のない文章の挿入など、初歩的なところができていない高校生はあまりにも多くいます。これは上位校を目指している高校生でも同様です。
よって、とにかく書く分量を増やして日本語のミスを減らすことが点数アップの第一歩なのです。
「読解力」はすべての基本
小論文だけでなく、国語が苦手な子の多くは、「文章の論理の骨格構造を読み取れていない」か、「語彙が難しくて分かっていない」かのいずれかの理由に帰着します。
これはまさに英語と同じ。英語でも難しい・知らない語彙があれば文章を読むことはできませんし、英文をたくさん読んでいないとパラグラフリーディング(長文をかたまりに分けて捉えて、全体構造や主張を読み取る方法)ができないため、文章の論理的な骨格を捉えづらくなります。
どちらの言語も、その背景にある論理的思考力や言語操作能力を高めていくことが結果的には点数アップにつながりますので、とにかく難しい文章や言語に触れる機会を増やしてください。
なお、このようにお話ししても「本は苦手です」「読めません」というならば、正直なところ、お子さんは大学進学以外の道を探ることも考えてはどうかなと思います。
大学は古来、蔵書を保存しそれを伝達してきました。「本が読めない」ということは学問をする資格がないということであり、それは大学に入る資格がないことを表します。
スポーツなどの部活で時間がなくて、本が読めないならまだしも、ユーチューブやティックトックに費やしている時間があるならば、それを読書に充ててください。この国語対策を機に本を読む習慣を身につけさせてください。そうすれば今後の人生でどのような局面があったとしても、自分で学んで自分で問題を解決していける人間になると思います。
竹内 健登(著)、日経BP、1760円(税込み)