A15
廃棄物処理法は、廃棄物について種々の規定を設けておりますが、廃棄物に該当しない「有価物」については、当然のことながら廃棄物処理法の規定は適用されません。
廃棄物の定義規定については、昭和46年の廃棄物処理法施行当時は、「客観的に汚物又は不要物として観念できる物であって占有者の意思の有無によって廃棄物となり又は有用物となるものではない」とする考え方が採用されていました。(昭和46年10月25日環整45号通知) この考え方によると例えば貴金属を含む汚泥や金属くずのように高額で取り引きされているものであっても廃棄物としての規制を受けるという問題がありました。
その後、昭和52年にはこの考え方が改められ、「占有者が自ら利用し又は他人に有償で売却することができないために不要になった物をいい、これらに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断する」という考え方(いわゆる「総合判断説」)が採用されています。(昭和52年3月26日環計37号通知) この考え方は、「廃棄物は排出者にとって不要であるために占有者の自由な処分に任せるとぞんざいに扱われるおそれがあり、生活環境保全上の支障を生じる可能性を常に有していることから、法による適切な管理下に置き、不適正処理に対しては厳正に取り締まることが必要である。」との考え方に基づくものです。この場合、有価物として有償売却されていた物が、市況変動により料金を支払って委託処理することとなった場合、産業廃棄物に該当することとなって委託基準が適用されることに注意する必要があります。また、「占有者が自ら利用することができないために不要になった物」に該当するか否かも総合判断説によりますが、自ら利用すればどのような物でも廃棄物でなくなるものではなく、他人に有償で売却できるものを自ら利用することが必要な条件となります。
なお、総合判断説は、最高裁判例(H11.3.10最高裁第二小法廷決定。いわゆる「おから判決」)においても是認されています。
「総合判断説」において国が示す5つの判断要素(1.その物の性状、2.排出の状況、3.通常の取扱形態、4.取引価値の有無、5.占有者の意思)は、総合的に判断するということであって、どれか一つの要素だけで決まるものではありませんが、実務的に最も重要視されることが多い「4.取引価値の有無」については、環境省から次のようにその考え方が示されています。(H17.8.12環境省通知「行政処分の指針について」)
「占有者と取引の相手方の間で有償譲渡がなされており、なおかつ客観的に見て当該取引に経済的合理性があること。実際の判断に当たっては、名目を問わず処理料金に相当する金品の受領がないこと、当該譲渡価格が競合する製品や運送費等の諸経費を勘案しても双方にとって営利活動として合理的な額であること、当該有償譲渡の相手方以外の者に対する有償譲渡の実績があること等の確認が必要であること。」
このように、有償譲渡がなされているかどうかの判断は、費用の名目を問わず排出事業者にとっての収支の実態で判断するものであり、大阪府はその目安を次のとおりとしております。
・排出事業者が運送費を負担する場合
売却代金と運送費を相殺しても排出事業者側に経済的利益があること。すなわち、受入事業者が運送費相当額以上の対価を払って購入すること。
(注) 運送費は委託運搬による場合は運搬委託料金とし、自ら運搬する場合は運搬に要する実費とする。
・受入事業者が運送費を負担する場合
受入事業者が排出事業者に対価を支払うこと。支払われる対価は、経済合理性に基づいた適正な対価として、受入事業者と排出事業者が協議のうえ合意した額であること。(対価は必ずしも金銭で支払われなくてもよい。)
また、5つの判断要素のうち「占有者の意思」は、その物の性状、保管及び排出の状況、取引価値の有無など客観的な諸事実から社会通念上合理的に推認できる占有者の意思を言います。
A17
銅線とプラスチックが不可分一体の被覆電線が有償売却されている場合は、総体として有価物となりますので、廃棄物処理法第16条の2(燃焼禁止規定)を含め廃棄物処理法の規定は適用されません。ただし、廃棄物と有価物とが容易に分離できるにもかかわらず混合状態にして積み合わせて有償売却する行為は、脱法的な行為であり「総体として有価物」とは認められません。廃棄物と有価物とを分離したうえ、同じ車両に積み合わせて運搬することは、運搬過程で廃棄物と有価物とが混合しない限り違法ではありませんが、廃棄物の部分については、廃棄物処理法の規定(処理基準、委託基準、マニフェスト制度等)が適用されます。また、被覆電線を購入した者が銅を回収する過程で発生するプラスチック等は、有価物にならない限り、その者が排出した産業廃棄物(廃プラスチック類等)となって廃棄物処理法の適用を受けます。
なお、大阪府では、「大阪府生活環境の保全等に関する条例」に次の規定を設けて屋外燃焼行為を禁止(警告・命令の規定により担保)しておりますが、この条例の対象には、有価物の燃焼も含まれます。
・大阪府生活環境の保全等に関する条例第47条
何人も、ゴム(中略)、合成樹脂その他燃焼の際著しく大気を汚染し、又は悪臭を発生する物質で規則で定めるものを屋外において多量に燃焼させてはならない。
A18
他人に有償売却できない物を、その物が発生した生産工程とは別の生産工程に投入して原材料として自ら使用する場合は、自社内であっても、廃棄物の再利用・再生利用に該当します。ただし、その物が発生した生産工程に戻して原材料として使用する場合(工程内リサイクル)は、その工程から不要物として発生したことにはならないことから、そもそも廃棄物が発生したことにはなりません。
A19
道路管理者が道路側溝の堆積物を除去し排出する場合は、その性状により判断します。
具体的には、道路側溝に堆積した泥状物は、産業廃棄物の汚泥となり、紙、木、草、落葉などは一般廃棄物となります。なお、一般家庭や町内会が清掃作業をして排出した場合は、泥状のものであっても一般廃棄物となります。
ただし、泥状とはとらえられない土砂については、廃棄物処理法の対象外です。
(注) 「港湾、河川等のしゅんせつに伴って生ずる土砂その他これに類するもの」は、廃棄物処理法の対象とする不要物ではありません。これは、港湾、河川等で発生する浚渫土砂は、埋立て用の有用物として実際に使われているという実態があり、その物の性状からみて発生現場で適宜移動するものであり、廃棄物の概念にはなじみにくい性格を有していることから、運用上、廃棄物処理法の規制対象とはしないという取り扱いをしてきたものです。しかし、この考え方は、工場内の側溝や道路の側溝にまで適用されるものではありません。
A20
当該廃棄物の組成が、天然の岩石の微粉末であるとしても、山砂利の採取という事業活動に伴って生じた泥状物であることから、産業廃棄物の汚泥に該当します。
ただし、総合判断説(A15参照)に従って判断した結果、有価物と判断される場合は、この限りではありません。
A21
砂ろ過装置のろ材の交換に伴い発生する砂については、高圧洗浄等により砂に付着している有機物等が除去されているのなら法対象外の土砂となりますが、有機物等が付着しているのなら産業廃棄物の汚泥に該当します。
同様に、下水処理の沈砂池から除去した沈砂についても、土砂と有機物等が混合している状態では産業廃棄物の汚泥ですが、これを洗浄して有機物等を除去した土砂は法の対象外です。
A22
宗教的・社会的慣習等により埋葬及び供養が行われるものについては、社会通念上廃棄物処理法に規定する「汚物又は不要物」に該当しませんので、愛玩動物(ペット)の死体は廃棄物には当たりません。ただし、埋葬・供養するとして飼い主から預かったペットの死体を火葬及び返骨等の処理を適正に行わずに処分する場合は、廃棄物(一般廃棄物)に該当します。また、埋葬及び供養を行うことが、宗教的・社会的慣習となっていないものについて、供養を行うという理由だけで社会通念上廃棄物処理法に規定する「汚物又は不要物」に該当しないとすることはできません。
なお、道路管理者が路上で斃死した動物の死体を回収し供養等を行わずに焼却する場合は、一般廃棄物に該当します。
A23
宗教的感情の対象として、社会通念上何らかの意味での価値のあるものであり、廃棄物とみることはできません。
ただし、焼却炉のメンテナンスに伴い発生する耐火レンガ・機械部品・廃油等の廃棄物、集塵機から生じるばいじん、排水処理施設の汚泥等であって、埋葬・供養等の対象とならないものは、廃棄物に該当します。
A24
墓は祖先の霊を埋葬・供養等してきた宗教的感情の対象ですので、宗教行為の一部として墓を除去し廃棄する場合は、廃棄物には当たりません。
ただし、単なる廃棄物として埋立処分等される場合は、廃棄物に該当し、それが事業活動に伴って排出される場合は、産業廃棄物の「がれき類」(工作物の新築、改築又は除去に伴って生じたコンクリートの破片その他これに類する不要物)に該当します。
このページの作成所属
環境農林水産部 循環型社会推進室産業廃棄物指導課 排出者指導グループ
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