■チャールズ・ルチアーノ
Charles Luciano, 1897-1962
チャールズ・ルチアーノ(Charles Luciano)は、マフィア組織の合理化を試みた近代マフィアの祖です。
それまで当たり前だった組織間の暴力による争いをやめ、全国のマフィアを組織化しました。
ただの無法者の集まりだったマフィアが現代まで生き残ってこれたのは、これが理由です。
とあるボクシングの試合で政治家や警察関係者が自分に握手を求めて列をなした時、ルチアーノは権力の持つ力に気づいたと言います。
ルチアーノの飽くなき権力への欲求は、少年時代の貧しさに根ざしています。
■少年時代
ルチアーノは、他のマフィア同様イタリアのシチリア島出身です。
家は貧しく、生きるためにアメリカ移住を決意しましたが、イタリア系移民にとって新天地ニューヨークの現実は予想に反して厳しいものでした。
スラム街で一通りの辛酸を舐めたルチアーノは、アメリカ社会に対する復讐を誓ったのでした。
次第にスラムのギャングたちと一緒にいることが多くなり、そこでアル・カポネとも出会っていますが、もう一人、重要な人物と出会っています。
マイヤー・ランスキーです。
■マイヤー・ランスキー
マイヤー・ランスキー(Meyer Lansky, 1902-1983)
腕っ節の強かったルチアーノは用心棒をして生計を立てていましたが、ある時、ひときわ小柄なユダヤ人の男を見つけ、こう言いました。
「おい、お前。アイルランド野郎から守ってやるから金を払いな。」
ところが。
「用心棒? くそくらえ。」
小柄な体に似合わないランスキーの度胸に、ルチアーノは驚き、笑いました。
「この瞬間、たちどころにお互いの事が分かった」と後に語っています。
これ以降、2人は生涯の友となりますが、それは同時に 世界最悪の犯罪コンビ の誕生でもありました。
■ランスキーの仕事
極めて頭が良く、猛烈な勉強家だったランスキーは、主に財務顧問としてルチアーノを支えました。
お金儲けに関しては天才的で、マネーロンダリングという今では当たり前(?)となった犯罪手法の考案者も、このランスキーです。
ラスベガスにカジノの原型を作り上げ、キューバのバティスタ政権と手を組みキューバのカジノ利権を独占したのも、このランスキーです。
莫大な利益を得ながらも質素な生活を好んだ風変わりなマフィア、ランスキーは、人の欲の限りなさを知っていました。
また、第二次世界大戦直後、イスラエル建国のためにユダヤ人地下組織に多数の武器を提供したのも、このランスキーです。
もし表の世界で活躍していたとしたら、相当の人物となったことは間違いありません。
■ルチアーノ誕生
強力なブレーンに支えられながら、ルチアーノはその勢力を伸ばしていきました。
ニューヨークマフィアの大ボスであるマランツァーノに加勢してマッセリアを暗殺したのはルチアーノと言われていますが、ルチアーノはその後すぐにマランツァーノを暗殺しています。
実は、マランツァーノに対し、並々ならぬ復讐心を抱いていたからです。
時は遡って、1929年10月17日。
シチリアの血にこだわるマランツァーノは、ユダヤ人のランスキーとつるむルチアーノを煙たがっていました。
ある日、ルチアーノはマランツァーノの部下たちに取り押さえられます。
「くそくらえ。」
そう言ってマランツァーノを蹴り上げた瞬間、ルチアーノは顔を滅多刺しにされ、無残にも路地裏に捨てられました。
誰もが死んだと思ったルチアーノですが、強運に恵まれた彼は、瀕死のところを救われます。
なんと救ったのは警官でした。
これが、"ラッキー" ルチアーノの誕生です。
またそれは同時に、近代マフィアの誕生を意味していました。
Charles "Lucky" Luciano , 1897-1962
■シチリアの晩鐘(Sicilian Vespers)
"ラッキー" ルチアーノの行動は迅速でした。
マランツァーノを暗殺すると48時間以内に、旧時代のボスたちを皆殺しにしました。
これが通称、シチリアの晩鐘(Sicilian Vespers)です。
映画『ゴッドファーザー』でも、そのままのシーンがありましたよね。
■ルチアーノ再び
時は第二次世界大戦の最中、投獄されていたルチアーノでしたが、ここにアメリカ海軍からの協力要請が届きます。
埠頭や繁華街での諜報活動に、アメリカ海軍はマフィア組織の協力が必要と判断したからです。
また1943年、米軍がシチリア上陸作戦を計画すると、またもや獄中のルチアーノへ協力要請が届きます。
米軍の勝利とともにヨーロッパ戦線が終結すると、ルチアーノは恩赦によって悠々と刑務所を後にするのでした。
■ちなみに
ここ日本にも、イタリア系マフィアはやって来ています。
戦後間もない頃、日本へやって来たマフィアは、帝国ホテルダイヤ強奪事件など一騒ぎした後、夜は自ら作ったカジノで遊んだと言います。
それが、銀座の「マンダリン」です。
また、東京のとあるイタリア料理店の店主は、ルチアーノの子孫を自称しています。
訪れた麻生太郎さんは大そう喜んだそうですが、本来明るい国民性で知られるイタリア人は冗談が大好きです。
■まとめ
貧困がマフィアを生み、禁酒法という愚策が彼らを力づけました。
人々の欲は、世界恐慌を無視するかのようにマフィアの私腹を肥やし、2度の大戦はマフィアの台頭に力を貸しました。
歴史の表側が人種間の争いにより消耗する中、人種間の協力によって強大な力を得たのは、歴史の裏側であるマフィアでした。
表と裏は密接に関わっており、その両方を同時に見ることが、本当の姿を捉えることと私は思います。
ちなみに私のルーツはイタリア系ですが、犯罪とは一切無関係で、琵琶湖の湖面のように心は穏やかであることを書き添えて結びとします。
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