今回は、当社でも多くの関心が寄せられるキーワードの一つ「指定医薬部外品」についてお話します。
「もっと詳しく知りたい!」「 少し調べたけどよくわからない!」「ただの医薬部外品とはどう違うの?」そんな声にお応えすべく、今回は、正確かつわかりやすく深堀り解説します。
STEP1 法律上の定義を深堀り!「指定」のありなしで何が違うの?
皆さまご案内の通り、医薬品・医薬部外品・化粧品といった商材は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、薬機法)」という法律で規制されます。
そこで、「指定医薬部外品」と「ただの医薬部外品」それぞれ法律上の定義を調べてみることにします。
なんと、薬機法の全文にテキスト検索をかけても「指定医薬部外品」は1件もヒットしませんでした。
いきなり躓いてしまいましたね…。
ここで挫けずに、ひとまずただの「医薬部外品」を調べてましょう!!
「医薬部外品」とは、次の①~③で、人体に対する作用が緩和なものをいう。
①次の目的のために使用される物で、機械器具でないもの
吐き気・その他の不快感の防止/口臭・体臭の防止/あせも・ただれ等の防止/脱毛の防止/育毛又は除毛
(疾病の治療・診断・予防が目的のものや、人体に強く作用するものを除く)
②ねずみ、ハエ、蚊、蚤などの防除を目的としたもので、機械器具等ではないもの
③その他、厚生労働大臣が指定するもの
①は、シャンプーや歯磨き、育毛剤など、②も、殺虫剤や虫よけスプレーなど、おなじみの医薬部外品をイメージしていただけるのではないでしょうか。
さて、③にご注目ください。
実は、「指定医薬部外品」とは、“厚生労働大臣が指定した医薬部外品”の通称であり、「ただの医薬部外品」との違いは、厚生労働大臣の「指定」の有無なのです。
STEP2 「指定」の中身を深掘り!「指定医薬部外品」はどこに載っているの?
それでは、「厚生労働大臣が指定した医薬部外品」たちを調べてみよう!と思い立ったとします。
・・・
ところが、「厚生労働大臣が指定した医薬部外品」は、薬機法の条文をくまなく探してみても、情報の断片すら見つけられません。
法律条文で、具体的な事例を記載せずに「〇〇で定める/△△で指定する」のように書かれた場合、それらが定められた下位法令(施行規則、省令、告示など)を予め知らない限り、必要な情報にたどり着けない構造なのです。
これから詳しくなろうとしている方にはやさしくないですね…。でも大丈夫、このコラムでご紹介します。
③の「厚生労働大臣が指定した医薬部外品」は昭和36年の告示以降、追加や見直しを経て、本稿執筆時点で27種類存在します。
これが、“広義の指定医薬部外品”です。
薬機法第二条第2項第三号に基づき厚生労働大臣が指定する医薬部外品
平成21年2月6日 厚生労働省告示第25号
(1) 健胃清涼剤 | (10) しもやけ・あかぎれ用薬 | (19) ビタミン剤、カルシウム剤 |
(2) いびき防止薬 | (11) 瀉下薬(≒便秘薬) | (20) のど清涼剤 |
(3) 衛生用の綿類 (紙綿類含む) |
(12) 消化薬 | (21) パーマネント・ウェーブ用剤 |
(4) Caを主有効成分とする保健薬 | (13) 滋養強壮、虚弱体質改善、 栄養補給用剤 |
(22) 鼻づまり改善薬(外用剤のみ) |
(5) 含嗽薬(≒うがい薬) | (14) 生薬を主たる 有効成分とする保健薬 |
(23) ビタミンを含有する保健薬 |
(6) 健胃薬 | (15) 外皮消毒剤、 きず消毒保護剤 |
(24) ひび・あかぎれ用剤、 あせも・ただれ用剤、 うおのめ・たこ用剤、 かさつき・あれ用剤 |
(7) 口腔咽喉薬 | (16) 整腸薬 | (25) にきび、肌荒れ、かぶれ、 しもやけ等の防止 又は皮膚若しくは口腔の 殺菌消毒も併せて目的の物 |
(8) コンタクトレンズ装着薬 | (17) 染毛剤 | (26) 浴用剤 |
(9) 殺菌消毒薬 | (18) ソフトコンタクトレンズ用消毒剤 | (27) (6),(12),(16)の二つ以上に該当するもの |
STEP3 指定医薬品の今を更に深堀り!新指定?新範囲?狭義の指定医薬部外品
③の「厚生労働大臣が指定する医薬部外品」27種類は、指定された時期によって、下記[A]~[C]の3つに分類できます。
“指定医薬部外品とは、元は医薬品だったものが医薬部外品へ移行したものだ” という解説を見聞きしたことがある方はいらっしゃいませんか?
実は[B]と[C]の指定がこれに該当するもので、変遷史上のビッグイベントでした。
[A]~平成11年 従来の指定医薬部外品
上述の①②に加え、ヘアカラーや入浴剤、薬用粧品といったおなじみの医薬部外品です。
(3) 衛生用の綿類(紙綿類含む) | (21) パーマネント・ウェーブ用剤 |
(17) 染毛剤 | (25) にきび、肌荒れ、かぶれ、しもやけ等の防止 又は皮膚若しくは口腔の殺菌消毒も併せて目的の物 |
(18) ソフトコンタクトレンズ用消毒剤 | (26) 浴用剤 |
[B]平成11年~ 新指定医薬部外品(平成11年3月12日 医薬発第280号)
規制緩和政策の下、「医薬品の内、人体に対する作用が比較的緩和で、医薬品販売業者による情報提供を要しないものは、一般小売店でも販売できるように」と、それまで医薬品だったものが、医薬部外品に区分変更されました。
通称:新指定医薬部外品と呼ばれます。
(1) 健胃清涼剤 | (19) ビタミン剤、カルシウム剤 |
(13) 滋養強壮、虚弱体質改善、栄養補給用剤 | (20) のど清涼剤 |
(15) 外皮消毒剤、きず消毒保護剤 | (24) ひび・あかぎれ用剤、あせも・ただれ用剤、 うおのめ・たこ用剤、かさつき・あれ用剤 |
[C]平成16年~ 新範囲医薬部外品(平成16年7月16日 医薬発第0716002号)
“改革なくして成長なし”の構造改革の旗の下、「安全上特に問題がない一般用医薬品」が更に選定され、医薬部外品に移行されました。
通称:新範囲医薬部外品と呼ばれます。
(2) いびき防止薬 | (11) 瀉下薬(≒便秘薬) |
(4) Caを主有効成分とする保健薬 | (12) 消化薬 |
(5) 含嗽薬(≒うがい薬) | (14) 生薬を主たる有効成分とする保健薬 |
(6) 健胃薬 | (16) 整腸薬 |
(7) 口腔咽喉薬 | (22) 鼻づまり改善薬(外用剤のみ) |
(8) コンタクトレンズ装着薬 | (23) ビタミンを含有する保健薬 |
(9) 殺菌消毒薬 | (27) (6),(12),(16)の二つ以上に該当するもの |
(10) しもやけ・あかぎれ用薬 |
以前は医薬品だったものがコンビニなどでも購入できるため、従来の医薬部外品とは一線を画す存在として、[B]新指定医薬部外品、[C]新範囲医薬部外品は大きな注目を集めます。
世の中では「新指定医薬部外品+新範囲医薬部外品」を専ら「指定医薬部外品」と呼ぶようになりました。
即ち、狭義の指定医薬部外品です。
市場の医薬部外品たちを手に取ってみると、上述の③[B]と③[C](狭義の指定医薬外品)には包装のどこかに必ず[指定医薬部外品]と表示されています。
(※ちなみに①と③[A]には単に[医薬部外品]と、②には[防除用試薬部外品]と表示されています。)
あとがき
まとめますと、指定医薬部外品とただの医薬部外品の違いは、広義には“厚生労働大臣の「指定」”の有無、狭義には“新指定医薬部外品&新範囲医薬部外品とそれ以外”です。
※令和5年4月28日付(厚生労働省告示第181号)で、新たに「物品の消毒・殺菌の用に供されることが目的とされている物」が医薬部外品として指定されました。当該品目は、本文中の狭義の指定医薬部外品には該当しません。
いかがでしょうか。指定医薬部外品の商材としての魅力を改にしたという方がいらっしゃいましたら、天真堂が企画・製品化のお手伝いをさせていただきます。是非お問い合せ下さい!