氷河期世代という物語 「非正社員が多い」は幻想か?統計を読む(2/2 ページ)

» 2022年03月06日 07時00分 公開
[神田靖美ITmedia]
前のページへ 1|2       

 図3はリクルートワークス研究所の「ワークス大卒求人倍率調査」による、大卒・大学院卒の求人倍率(求人総数÷民間企業就職希望者数)の推移です。氷河期は前後の時期に比べて、総じて低くなっています。特に2000年は0.99倍で、唯一1.0倍を下回っています。

 倍率が低下したのは、企業が採用を減らす一方で、大卒者が増えたからです。図4はやはり「ワークス大卒求人倍率調査」による、求人総数と民間企業就職希望者数です。「氷河期」はそれ以前のピーク時に比べて、求人数が最悪期には半分以下に減っています。一方で就職希望者が増えています。当時は私立大学・短大の定員抑制が緩和された時期で、大学卒業者数が増加していました。

 このため氷河期世代の人たちは、正社員として就職こそしたものの、やや不本意な就職をした可能性があります。統計がないので推測する以外ありませんが、大企業に就職したかったけれども中小企業に就職したとか、高校や大学で学んだこととは畑違いの仕事に就いたとかいう人の割合が、前後の世代に比べて高かったかもしれません。

 いずれにせよ「氷河期」という表現は大げさであると言わざるを得ません。

photo 図3:大学・大学院卒求人倍率の推移

注1:リクルートワークス研究所「第38回ワークス大卒求人倍率調査」をもとに作成

注2:大卒・大学院卒求人倍率=求人総数÷民間企業就職希望者数

photo 図4:大学・大学院卒求人倍率の推移

注1:リクルートワークス研究所「第38回ワークス大卒求人倍率調査」をもとに作成

著者紹介:神田靖美

人事評価専門のコンサルティング会社・リザルト株式会社代表取締役。企業に対してパフォーマンスマネジメントやインセンティブなど、さまざまな評価手法の導入と運用をサポート。執筆活動も精力的に展開し、著書に『スリーステップ式だから、成果主義賃金を正しく導入する本』(あさ出版)、『会社の法務・総務・人事のしごと事典』(共著、日本実業出版社)、『賃金事典』(共著、労働調査会)など。Webマガジンや新聞、雑誌に出稿多数。上智大学経済学部卒業、早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了。MBA、日本賃金学会会員、埼玉県職業能力開発協会講師。1961年生まれ。趣味は東南アジア旅行。ホテルも予約せず、ボストンバッグ一つ提げてふらっと出掛ける。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

続きを読むには、コメントの利用規約に同意し「アイティメディアID」および「ITmedia ビジネスオンライン通信」の登録が必要です