海保機へ「離陸許可」出さず 国交省、交信記録を公表
羽田空港の滑走路上で日本航空機と海上保安庁の航空機が衝突した事故で、国土交通省は3日、当時の管制官と両機の交信記録を公表した。海保機に対しては滑走路へ通じる誘導路に停止するよう指示した一方、離陸指示は出ていなかった。
海保機の機長は「管制官から離陸許可を得た」と認識していたとみられる。管制官からの指示を取り違えるなどした可能性がある。
斉藤鉄夫国交相は3日、交信記録を公表したうえで「客観的な資料を提示した。再発防止に万全を期す。運輸安全委員会の調査に協力する」と述べた。同省は「現時点で管制官の指示は適切と考えている」との見解を示した。
管制官は通常、2つの航空機を同時に滑走路へ進入させない。事故では両機に対してどのような指示が出ていたかが焦点となっていた。管制官の指示と機長の認識になぜずれが生じたかが事故原因究明の中核になる。
交信記録によると羽田空港の管制官は当時、日航機にC滑走路への着陸許可を出した。海保機には誘導路上の停止位置へ走行を指示したが、滑走路への進入は許可していなかった。しかし海保によると、機長は離陸許可を得たという認識だったという。
航空機事故で発生翌日に交信記録が公表されるのは異例だ。事故で広がった不安を軽減する狙いがあるとみられる。
衝突事故を受け航空各社は3日も一部の便を欠航した。日航は国内線98便を欠航し、約1万7000人に影響が出た。全日本空輸(ANA)も国内線97便、国際線1便を欠航し、約2万人に影響が出ている。
余波は物流サービスにも及んでいる。日本郵便によると関東・東海各地方など発着の郵便物や「ゆうパック」の配達に遅れが出ている。佐川急便でも航空機を使った宅配サービス「飛脚航空便」で3日に配達する分の荷物の到着が遅延する可能性があるという。
航空各社は4日から運航の正常化を図る。羽田空港に4本ある滑走路のうち、事故が起きた1本が閉鎖されているため、「上空での着陸待ちなどにより遅延が想定される」(航空大手)という声もある。
事故原因を巡り運輸安全委員会は調査官6人を同空港に派遣し、3日から現地調査を本格化した。海保機の操縦士らの音声を記録するボイスレコーダーを回収。日航機の記録装置も探索しており、管制との交信記録の解析を進める。
事故は2日午後5時50分ごろに発生した。新千歳(札幌)発羽田行きの日航機が着陸のためC滑走路に進入。海保機と衝突し両機とも炎上し、海保機の乗員6人のうち、機長をのぞく5人の死亡が確認された。
日航機は乗客乗員379人の全員が脱出したが、うち乗客の15人は打撲や体調不良などで医療機関を受診した。
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(更新)- 青木慎一日本経済新聞社 編集委員ひとこと解説
交信記録からは、海保機の機長が誤認識したことになります。なぜ、誤ってしまったのかは、今後の調査を待つしかありません。 航空機の運航はミスをできるだけなくす対策に取り組んできましたが、滑走路に誤って侵入することはハード的な防止措置を施すのは難しいところです。2005年に関西国際空港で閉鎖中の誘導路に外国航空会社の貨物機が誤って侵入する“事件“が起きて対策が進んだはずですが、その後も発生しています。 ミスをしても大事故につながらないシステムをどう構築したらよいのか。なかなか難しいとは思いますが、学識者も含めて知恵を出し合うべきではないでしょうか。
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(更新) - 安川新一郎東京大学未来ビジョン研究センター特任研究員/グレートジャーニー合同会社代表ひとこと解説
交信記録を見る限り管制官の指示は適切にみえる。何故、海保機の機長は「管制官から離陸許可を得た」と指示を取り違えたのか、そして侵入したのか、が争点だ。 羽田空港の様な過密で即時対応が要求される世界では、未だに人間の口で話して、電波を通じて耳で聞かざるを得ないと言う。確かに交通量を、天候、各機の状況を見ながら指示を出すのは人間が無線でやり取りをするしかない様に思える。 但し無線はかなり聞き取り難い。Local 5G網で得た各機の位置情報をAIで瞬時に解析し、管制官と機長のやりとりや運行判断が間違っていた場合、誘導路への侵入を何らか自動ロックする等、最新技術でのフェールセーフの導入が待たれる。
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(更新)
羽田空港で2日午後、日本航空(JAL)機が着陸直後に海上保安庁の航空機と衝突し炎上しました。乗客乗員379人は全員機体から脱出し少なくとも17人が負傷。海保機は搭乗していた職員5人が死亡しました。事故の詳細など最新ニュースをお届けします。