お金は知っている

消費税にご満悦の「反アベノミクス派」 30年デフレを招いた原因 田村秀男

政治資金パーティーのキックバック問題で「反アベノミクス派」が勢いづいてきた
政治資金パーティーのキックバック問題で「反アベノミクス派」が勢いづいてきた

自民党最大派閥の安倍派幹部が、政治資金パーティーのキックバック問題で一斉に退場した。案の定というべきか、これまで雌伏していた「反アベノミクス派」が勢いづいてきた。

典型例が石破茂元幹事長だ。石破さんは2012年9月の自民党総裁選で故安倍晋三首相に敗れた。筆者はこの運命の総裁選より半年くらい前に、周囲の勧めで石破さんと議論した。「最優先すべきは、脱デフレに向けた政策ですよ」と説いたのだが、石破さんは「有権者は物価が下がるデフレを歓迎している。物価を上げると言えば反発される」と受け付けない。「物価の下落以上の幅で賃金が下がるのが日本のデフレで、財政、金融両面で需要を喚起すべき」と申し上げても、石破さんは最後まで首をタテに振らなかった。

同年12月に第2次安倍政権が発足、機動的財政出動と異次元金融緩和を主柱とするアベノミクスが始まった。脱デフレに関心を寄せなかったいきさつからしても、石破さんはアベノミクスに背を向ける姿勢をとり続けたのも無理はない。ただし、政権与党内で政策やビジョンが分かれ、切磋琢磨(せっさたくま)することは大いに結構だ。要は、日本経済が再生し、国民がより豊かにできる政策を打てるかどうかである。

そこで、石破さんのホームページ掲載の「石破ビジョン」を見ると、「地方こそが新しい時代を創り、歴史を変える」とある。そのための経済政策については「内需主導型経済への転換」を掲げ、地域分散型の高付加価値生産、地方への移住促進、賃金の適正化、低所得者や子育て世代への支援など重点に置くという。いずれも文句なし、100%同意できる目標である。だが、どう実現するのか、鍵になるのは財政と金融政策である。資本主義社会ではカネの裏付けがない「内需」はしょせん、空念仏である。

すると、25日付の日経新聞朝刊の記事が目に留まった。石破さんはラジオNIKKEIの番組で「マイナス金利」をやめて「本来の資本主義に戻す」と語ったという。安倍派の後退で日銀がマイナス金利を解除しやすくなった政治的背景を踏まえているのだろう。

財政のほうはどうか。記事によると、石破さんは竹下登政権が消費税を導入した際、ご自身も消費税の必要性を訴えて当選したとし、「国民を信じてきちんと語るということだ」。これでは財務省の思うつぼにはまりかねない。

グラフは税収(印紙を含む)、消費税収と家計消費が消費税増税前の1996年度に比べてどう増えてきたかを示す。一貫して増えているのは消費税収であり、税収全体を支えている。

ところが家計消費はマイナスが続き、アベノミクス開始後は上向いたものの2021年度までは消費税収を下回った。家計は必要な消費を我慢してまで消費税を負担してきたわけである。消費税こそは30年デフレを招き、国民を困窮化してきたのだ。(産経新聞特別記者)

田村秀男「お金は知っている」(zakzak)

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