「リズと青い鳥」の大ヒットを記念して山田尚子監督と音楽を担当した牛尾憲輔さんとのスタッフトーク付上映会が新宿ピカデリーで開催されました。
日時:2018年5月11日18:00上映終了後
会場:新宿ピカデリー シアター3
登壇者:山田尚子(監督)、牛尾憲輔(音楽)
司会:斎藤(音楽プロデューサー)
※以下敬称略
今までどおり、ほぼ自分のメモ用にですが舞台挨拶の様子を纏めてみました。微妙なニュアンスの違いや意味の捉え間違い、抜け等あるかと思いますが、雰囲気だけでも味わってもらえたら幸いです。
(牛尾さんのお話しは難しくて、色々と抜けがあると思います……)
(牛尾さんのお話しは難しくて、色々と抜けがあると思います……)
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司会:「リズと青い鳥」音楽プロデューサーの斎藤です。
おしゃべりな二人をみんなで呼び込みたいと思います。
「せーの 山田さん」「せーの 牛尾さん」でいきたいと思います。
「せーの 山田さん」
(山田監督登場)
山田さんも一緒に牛尾さんの呼び込みやって下さい。
「せーの 牛尾さん」
(牛尾さん登場)
ではまず、お二人の挨拶からお願い致します。
山田:こんにちは、(夜なので言い直して)こんばんは。
京都アニメーションの山田です、「リズと青い鳥」の監督をやっています。
ちょっとの時間ですがよろしくお願い致します。
牛尾:ソニー・ミュージックアーティスツ所属の牛尾です。
「リズの青い鳥」の音楽を担当しています。今日はよろしくお願い致します。
司会:今回、音楽をつくるにあたって、どんな話し合ったのはどんなことでしょうか?
牛尾:音楽つくる前に二人でよく分からない打ち合わせをします。
山田:フュージョンって感じですよね。
(フュージョンのポーズをとって)ウシヤマダナオスケと(「クールボコ」と言いかけてやめる)
牛尾:京アニでは概念打ち合わせと呼ばれているらしいです。
希美とみぞれの二人の秘密を覗き込むようなことをするわけですから、音もそれに合った二人の世界を邪魔しないようなものにしました。
あとでお見せしますが、デカルコマニーという、インクを譜面に垂らしたものを使っています。
デカルコマニー - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/デカルコマニー山田:困った話しをするので、同席するスタッフがメモをとるのを止めてしまいます。
司会:特にこだわったところはどこでしょうか。
牛尾:(二人の繊細な場面を映画を観賞している)皆さんに観られているのがバレたらいけないので、ってお金払っているのに観るなというもの凄いですが(笑)、舞台になった学校に実際に行ってロッカーを開ける音やビーカーをひっかく音とか色々な音を録りました。
録音してる時に山田さんもロケハンで居たのですが、メトロノームが「チーン」って鳴った瞬間にツボに入ったようで、小さな音を録っているのに五月蝿かった(笑)。
山田:繊細な録音なのでしゃべらないように気をつけていたのですが「チーン」って鳴った瞬間にゲラゲラと笑ってしまいました。すぐに追い出されました(笑)。
牛尾:OP、EDの動作にも色々な音が音楽に入っています。
山田:映画の最初と最後に足音が入っていますが、あのシーンが大変でした。
牛尾:やりとりが大変でした。
最初にテンポをとって、それを元に絵コンテをつくってコンテ撮して、さらにそれを元にテンポを割り出して音楽をつくっていき、音をアニメにしていきました。
京アニのスタジオで音をつくっているような感じで、僕がアニメをつくって山田さんが音楽をつくっているような感じでした。
山田:希美とみぞれの足音も、それぞれ速さが違っていて、(OPでは)みぞれがBPM60で希美がBPM110です。
牛尾:EDの足音も4歩だけ合うんですよね。
EDでは、みぞれがBMP100、希美がBMP99〜101の変移の中で4歩だけ奇跡的に合った、感動的。まさにハッピーアイスクリーム(笑)
山田:ハッピーアイスクリーム、みなさん使ってくれてます?(笑)
牛尾:使ってる訳ないでしょ、お客さんおじさんだよ(笑)
これがデカルコマニーで書かれた譜面ですが、インクを紙に垂らして2つに折ってくっつけると、みぞれと希美が(上の五線譜と下の五線譜で)相似形であるという。上が5小節、下が4小節でインクもそれぞれ似ているけどズレているんですよね。
インクの範囲が大きすぎて譜面として取れないものは、周波数の遷移として音と捉えたり、ノイズを入れる間隔として使ったりしています。
頭よさそう(笑)
山田:みなさん理解できました?
(会場からごくわずか手が挙がる)
牛尾:(譜面を指しながら)この中でタイミングとして来ているところに、学校で録ってきた音をノイズとして入れたり、プリペアド・ピアノと言って、ピアノの線に物を落としたりした時の音を(インクの)色や時間で割り振っています。
プリペアド・ピアノ - Wikipedia
希美が廊下を歩くシーンでは、ビーカーを引っ掻いた音を入れて、さらにアーメン終止というものをしています。
アーメン終止
https://ja.wikipedia.org/wiki/アーメン終止山田:「聲の形」のときも、祝福したい人に終始していますよね。
牛尾:そういうの好きでしょう?(笑)
山田:はい(笑)
(みぞれがプールに他の子も誘っていいか希美に聞くシーンの映像を流す)
山田:すっごいマニアックなんですけど分かる人います?
ここで希美の前を人が通るシーンですが、ここは希美の心が揺れ動くシーンなのでとても重要でして。
牛尾:ここは元々の曲があって、それをスタジオで流しながら実際に人がその前を通って、それを録って使っています。
すっごい些細で微妙なことも、希美をフィルタするためにしています。
山田:人型の音のゆらぎで音が揺れる。サントラでもわかりますかね?
(会場で両方の曲を流す)
牛尾:(聴き比べて)意味があったのかな。
山田:オカルト的ですよね(笑)
牛尾:唯一本人がアニメーションとして登場しています。
山田:これ言っていいんですっけね。
(録音時は)牛尾さんが通っています。
人が通るだけだと分かりにくいかなと思って、毛布を持った状態でも通ってもらい2回録りましたが、人が通っただけの方が良かった。
牛尾:サントラのハイレゾ版の準備もあります(笑)
山田:えー、しらなかった(笑)
司会:今回、ハイレゾでこだわったのは?
牛尾:もともとコンピューターでつくった音を、アナログを通してひずませています。それをハイレゾで録りきりました。廊下の響きや残響(などのアナログな音)を録るために、音の切れ切れがハイレゾで繊細に録られています。
DSDというCDでは収録できない大きなサイズの変なフォーマットで聴くと、音の静寂に希美とみぞれが見えるようで綺麗です。
メイキングVol.8で、「希美みぞれ希美みぞれ……」って言ってるところで最後に「ナハナハ」って言ってたんですが編集で「ナハ」だけ残っています。
山田:なんで言ったんですか(笑)
牛尾:ここ最近、色んな取材受けてほぐれてきて躁状態になっていますね。
司会:Homecomingsの福富(優樹)さんもかわいがっているとか……。
牛尾:ウチに来た時に賞味期限が切れたクリームパンをあげました(笑)
出る杭は打つタイプですが、最終的には(自分が)Homecomingsに入っているかもしれません。
というか入りのBGM、何でHomecomingsなんだよ(笑)
というか入りのBGM、何でHomecomingsなんだよ(笑)
試写の時にHomecomingsのボーカルの畳野さんにホーム・アローンズといったら全く通じなかった。
山田:小野豊さんもポカーンとしてましたよ。
牛尾:田中角栄みたいなコンピュータ付きアニメータ……。
山田:世代的に分からなくて、みんなポカーンとしてました。
牛尾:「girls,dance,staircase」の歌詞良かったよ。「ことり」からはじまっていて全体が「のぞみぞれ」でダブルミーニングですばらしい。
山田:ありがとう。
コンテ読んでいたら三拍子の音が聞こえてくる。「アーメン」
コンテきる時に無意識で三拍子にしてました。三拍子が伝わったのが嬉しかった。
司会:最後に締めの挨拶をお願い致します。
牛尾:本日はお越し頂き本当にありがとうございます。
最初のコンセプトから始まって、こんなに美しい映画になりました。
こんな繊細な物語の中にもさらに色々な物語があります。
山田:映画公開から時間経つのに、こんなにも沢山の方にお越し頂きありがとうございます。
今日は皆さん、牛尾さんのいいお話しを聴きに来られたんですよね?
牛尾:いや(インターネットで検索する際)「山田尚子」で「かわいい」ってサジェストが出るから、そういう人も居るかもしれない。
山田:勘弁してください(笑)
いつも舞台挨拶の時に、私では音楽のことは言葉足らずなので、ぜひ牛尾さんに語ってもらいたかったです。
何を言ってるか分かりました?
メモを取ってる方も、分からないと思いますよ(笑)
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