うおっ乳デカいね♡ 違法建築だろ   作:珍鎮

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一応前後編の前編です♡ たぽっ


デカパイの分際で忘却されるとお思いなのですか?

 

 

 ──ハチャメチャにムラムラしている事実をそろそろ隠せなくなってきた。

 

 よく分からん不思議世界で相棒を救出してから少し経ち、現実世界に戻った俺は現在外へ出るための格好に着替えている。

 すぐそばには理事長としての服装のまま寝落ちしてしまったらしいやよいの姿があり、彼女の後ろのコンセントに繋がれていたスマホを確認したところ、冒険への出立から二時間程度しか経過していない事も確認した。現在は深夜だ。

 現状の把握は完了した。

 あとは己の意思に従うのみである。

 

「毛布を出すね」

「あぁ、やよいにかけてやってくれ」

 

 この銀河で最も愛している従妹に書き置きを残し、寝落ちするまで俺を診ていてくれた事に感謝の意を表し頭を一撫でしてから自宅を後にすると、玄関を出てすぐ凍てついた空気が首筋に触れた。

 予想以上に冷え込んでいるがこの程度では止まらない。

 バイクを出す。

 あいつに乗って夜を駆ける。

 早急にドライブをしなければ自分を保てないからだ。

 

 あまりにも煩悩がオーバーヒートし過ぎている。

 これは割とシャレにならないレベルと言うか、クリスマスから今日に至るまでに蓄積されたすべての性欲が喉奥までせり上がってきてしまっている。

 ショタになりウマ娘になり魂魄(ソウル)を削り、夢の境界でもユナイトして全力疾走したうえでそれでも何もかもを我慢していたのだ。サンデーとの休憩で余計にそれを自覚させられてしまった。

 

 現在の俺の肉体はバグっている。

 ユナイトのデメリットによる感情の増幅もリミッターを振り切ってブチ壊れている。しんでしまう。

 そのため夢での解消を今夜決行しようと考えていたのだが、隣で最愛の従妹の少女が眠っているとなれば話は別なのだ。

 やよいが寝ているすぐそばでヤバい寝言でも漏らそうものならその時点で地球が終焉を迎える事になる。もし彼女が起きてたらそのまま世界が砕け散る。

 

 なのであと一日──いや、半日のガマンだ。

 今日の早朝にやよいと話し、また夜に集まってみんなでカラ子の処遇を決めるという提案をする。

 それまでは肉体の修復も兼ねて家に一人でいさせてくれと彼女に頼み込み、口から出まかせ言いまくってなんとか納得させる。

 

 それからだ。

 その夜までの時間を自らの慰安に使ってようやく俺は人間に戻る事が出来るのだ。うほ~ワクワクしてきたぜ。深く憂慮する。

 

「……よし、行こうか」

 

 言いながら駐車場で眠っていた彼に搭乗し、まもなく夜の街へと駆け出した。

 ──この二輪駆動に跨っている間だけは、どんな悪感情を抱えていようともそれらが引っ込み、この上なく脳内が冴え渡る。

 月明かりの下を疾走するという目的だけが俺の肉体を動かしてくれる。

 ユナイトしなければウマ娘に追いつけない俺のようなただの高校生が、唯一彼女たちと同じ世界を体感できる無二の相棒──それがバイクなのだ。走りたくなるのはお前のせいだぞ! こんな魅力的な車体(ボディ)をしているから……。

 

「──んっ」

 

 深夜の外出ということでお巡りさんに補導されないよう周囲に気を配りながらしばらく運転していると、道沿いのコンビニ付近で見覚えのある人影を発見した。

 縁石に寄って一旦停め、ヘルメットを取って目を凝らすと、やはり見つけた相手は俺の知っている存在で間違いなかった。

 

「おーい、ウオッカちゃん」

「っ!」

 

 声をかけられた彼女の肩が跳ねた。おい怯えるな! 催眠済みのくせに生意気である。

 

「あ、秋川先輩……? なんだ、よかった……っ」

 

 振り返って俺だと分かった途端にこちらへ駆け寄って来てくれた。この当たり前のように信頼されてる身内感あまりに気持ち良すぎてイクかも。

 

「久しぶり。驚かせてゴメンね」

「い、いえ、声かけてくれて嬉しいっす!」

 

 このメカメカしい耳飾りをつけた短髪のウマ娘ことウオッカとこうして顔を合わせて話したのは、俺がショタ化していた時期を除けば数週間ぶりになる。

 にもかかわらず彼女は俺を不審者ではなく、深夜にいきなり声をかけてきただけの知り合いとして認識し、明るく駆け寄ってくれたのだ。後輩からの愛で感涙に咽ぶ。

 

「へへ……お久しぶりです、秋川先輩」

 

 そう、後輩だ。

 現状では唯一と言っていい、俺を“秋川先輩”と呼んでくれる極めて貴重な年下の後輩。

 そんなかわいい後輩がこんな白い息がはっきり見えるような凍てつく夜に困った様子で街中を彷徨っていたとあれば、先輩として声をかけないわけにはいかないだろう。

 タマモクロスから学んだ理想の先輩像を意識しつつウオッカの事情を探ってみませう。

 

「それにしてもこんな夜中にどうしたの。もし終電逃したとかなら送ってくけど」

「あ、いえ、今はマックイーンの屋敷に泊まってるんで帰りは大丈夫なんですけど……えぇと……」

 

 ハッキリしない物言いだ。なんだその態度は!? 信頼して♡ 身を任せて♡

 

「もしかして普通にただの夜遊びとか……」

「そっ、そんなんじゃないっす! 俺はマーチャンを──あっ」

「マーチャン……?」

 

 普通の若気の至りを疑うとウオッカは露骨に否定し、その口から聞き覚えのある単語が飛び出てきた。

 マーチャン。

 たしか、その名前は夏のイベントの時に初めて耳にしたんだったか。

 なんだか不思議な雰囲気のウマ娘が妙なぬいぐるみを渡してきて、その後トレセンの正門前で偶然再会してようやくフルネームを知った──という流れだったはずだ。

 ちなみに仮面を被った状態で出会った時のことはカウントしてない。あれはあくまでノーザンテーストだ。

 

「……アストンマーチャンさん、だったっけ」

「えっ。……あ、先輩、そう言えばあいつと面識あったんでしたね。すいません」

 

 まあ本当に顔見知り程度の関係性でしかないが、知らない相手ではない。

 名前を教えてくれた時なんて二回も名乗ってくれたのだ。もし彼女がマーちゃんとかいう特殊な一人称を用いていなくとも名前は覚えられた自信がある。

 

 それから何より乳がデカいウマ娘だったため記憶に深く刻み付けられている、という部分が大きい。というかほとんど会話した事がないにも関わらず覚えている理由の八割はそれが要因だ。

 あのダイワスカーレットとタメを張れるレベルのおっぱいは凶器そのものだ。うひょ~っ一回ハメてみたかったんだよな。変態もいい加減にしろといったところ。

 

「それで、アストンさんがどうしたの?」

「えっと……それはっすね……」

 

 件の少女と知り合いである事を共有したうえで先ほど詰まった言葉の続きを促すと、ウオッカは視線を外して言い淀んでしまった。だが俺と出会ってしまった以上は隠し事などもう遅いわマゾメスめ。早く喋らねーとコトだぜ? 美女。

 

「……実は、連絡が取れないんです」

「えっ」

「今夜に待ち合わせの約束をしてたんすけど……集合場所にはいないし既読つかないし、電話にも出ねえし……居ても立っても居られなくなっちゃって」

 

 それでこんな深夜に街中を駆けずり回っていたわけか。友を想うその精神の造形まるで美術品。俺も探すの手伝お。

 

「ウオッカちゃん、俺も手を貸すよ」

「い、いいんすか?」

「何かあってからじゃ遅いでしょ。手分けして探そう」

「……ありがとうございますっ、秋川先輩!」

 

 キッチリ腰を曲げて礼を言うその姿大和撫子の装い。あまりに礼節を弁えた後輩すぎて可愛がりたくなってきた。今度一緒にバイクショップへ行こうね。恋人繋ぎでね。

 

 ──んん゛ッ。

 流石に切り替えよう。

 俺が現在抱えている問題など他の人間にとっては些細な事だ。

 もしアストンマーチャンなるウマ娘が実際に危険にさらされていたとしたら、ここで油を売っている場合ではない。

 あの世界で消化した食欲以外の残り二つの欲求が合わさりバグってなんだか三十九度くらいの熱に苛まれている気分だが、後輩の一大事にそんな事を気にしているヒマはないのだ。急げ急げ。わっせわっせ。

 

「それで……アストンさんと連絡がつかなくなってどれくらい経ってるのかな」

「三十分くらい前っす!」

「…………そ、そう。了解」

 

 たった三十分──されど三十分だ。

 マジで一瞬だけ、たったその程度の時間連絡が取れないだけで、と考えそうになってしまったがかぶりを振った。

 ヤベー時は大体一瞬でヤベー事態に陥るものだ。余計な常識に苛まれている時間こそ勿体ない。

 

「……その、マーチャンってメッセージを送るといつも一瞬で既読をつけるタイプなんです。すぐに返事をくれるし、電話なんてそれこそ寝てる時間以外はいつだって出る……それなのに……」

 

 そんな連絡に過敏な子がよりにもよって待ち合わせをしているタイミングで、何の返事も返してこないとなれば心配になるのも多少は頷ける。

 本人の人となりを知っている友人であればなおの事だろう。

 

「あいつ、用事が終わったらそのままこっちに帰ってくるって言ってて。だからこんな時間帯になっちゃってるんですけど……一応もう電車は降りてるはずだし、電話繋がるんでスマホも生きてるはずです。問題は場所が分からないことなんすけど……」

「そうだ、位置情報アプリとかは?」

「……なんか辻写りが予測されるだとかなんとか言って入れてないっす」

「そ、そっか……」

 

 よく分からん理由で最も手っ取り早い手段を潰されてしまったが、やる事が変わるわけではない。

 

「じゃあとにかく周辺を探そう。俺は広い範囲を走り回るから、ウオッカちゃんはなるべく集合場所付近を捜索してくれるか」

「は、はい、了解っす!」

「何かあったら電話して。それじゃ」

「お気をつけて!」

 

 やたら美人なウマ娘に送り出されつつ再びヘルメットを装着し、バイクで夜の市街地へと駆け出していった。さっさと見つけ出して唯一親しい後輩の曇り顔を晴れ渡る青空の如く明るくさせてやらなければ。いそげむんむんっ。むらむらっ。お゛。

 

 

 

 

「──見つけた」

 

 という事で発見しました。

 バイクから降りて鉄塔の上に飛び乗り、超視力で周囲を見渡せばすぐだった。

 無論、特定の個人をそれだけで見つけるのは至難の業なので、俺がやったのは()()()()()()()ナニカに注目して目を凝らすことだ。

 

「河川敷……あそこ前にサイレンスが転げ落ちたとこだな」

 

 あくまで俺個人にとって思入れ深いだけの、何の変哲もない川沿いにトレセン学園指定のコートに身を包んだウマ娘が突っ立っていた。

 そして彼女の上──十数メートルほど上の上空で靄のように姿形がぼやけている怪異が複数体ほど漂っている。

 アレらは正しく怪異だ。

 しかしカラ子や普段やり合っている敵とは異なり、彼らは本当にただこの街の空を漂っているだけの無害な連中だ。

 なにか面白そうな光景を見つけると近くに寄って観察する一般ミーハー集団なので普段は気にも留めない相手だが、今回ばかりはいてくれて助かった。

 彼らを目印にしてバイクで河川敷まで直行し──ようやくアストンマーチャン本人のご尊顔を視認できた。あ゛ーッ!! おっぱいがおっきい゛ですーッ!!

 

「おーい、アストンさん」

 

 バイクに跨ったまま土手の上から声をかけた──が、返事も反応もない。

 少女はただ流れる水の様相を眺めるのみで、心ここにあらずと言った雰囲気だ。

 

「……警察、いねぇよな。……よし」

 

 まだ補導される年齢且つここにバイクを停めると普通に路駐になるのでお巡りさんが怖いところだがそうもいっていられない。ハメに行こう。

 

「なにして……あっ」

 

 ヘルメット外すの忘れてた。まぁいいか。不審者すぎる風貌だが儂にかかればあのような小娘一捻りじゃわい。

 

「あの、アストンさん」

 

 とりあえずその背中に声をかけてみたが、やはり鹿毛の少女は微動だにしない。そんなに川がバカ面白いのだろうか。俺も気になってきた。

 

「なぁ、そんなところで何して」

「──川の(せせらぎ)

 

 もう一度ちょっかいをかけようとした瞬間、彼女の声が俺を遮った。

 その真っ直ぐな、もしくは虚ろな瞳で眼下の浅瀬を見つめながら、どうやら俺の存在に気がついたらしく少しだけ口元が緩んだ。

 

「さらさら、ひたひた。聞こえてきます」

 

 言いながらもやはり視線を川から外すことはない。

 まるで体そのものがその体勢で固定されてしまっているかのように、彼女は指先一つ動かそうとしない。

 そこで揺れるのは風に吹かれた柔らかい栗色の髪だけであった。

 

「波の音ではありません。喧噪の予感はしますが、この街ではいつもの事だと知っています。あの日、貴方に出逢ってから──」

 

 そう言い終えるとアストンマーチャンはふわりと柔らかい笑みを浮かべ、ようやっとこちらを向いてくれた。乳も揺れた。

 

「ふふ、お久しぶりですね。いつかのお急ぎのヒーローさん。声で分かりました」

「ん……お、おう」

 

 その捉えどころのない言葉と態度で妙な雰囲気に飲まれそうになったが、首を振って改めた。

 

 ──あぁ、なるほど。

 わかった。

 

 彼女はマンハッタンカフェと同じタイプのウマ娘だ。

 決して怪異に巻き込まれたわけではなく、何かしらの非日常的な宿命を生まれたときから背負っている少女だ。この態度を見ていれば分かる。

 なんか意味深な言い回し。

 だいぶレベルが高い察しの良さ。

 あとこういう妙な状況に身を置いている現状。

 それら全てが、彼女がどういった存在なのかを教えてくれている。

 

 ──で。

 

「こんな夜中に何してんだ」

「流れる姿を、見ていました」

「ウオッカちゃんと待ち合わせしてたんだろ。ドタキャン?」

「そういうわけでは……ないのですが……」

 

 こういった場合、ファンタジーやシリアスに片足突っ込んでいるような彼女たちの世界を、なんでもかんでも真正面から受け取ってはいけないという事を経験から学んでいるのだ。

 それらと真摯に付き合う必要はない。

 ただ目の前の事実を確認しろ。

 後輩──つまり中学生の知り合いの同級生が、こんな深夜にワケの分からんこと言いながら夜間外出をしている。

 それだけだ。

 その事実に対してのみ対応すればいい。

 

「マックイーンさんの屋敷に泊まってるってウオッカちゃんが言ってたけど、今夜はアストンさんも一緒に?」

「あ、はい」

「じゃあ送るからバイクの後ろに乗って。ウオッカちゃんには俺から連絡を入れておくよ」

「…………」

 

 何で口開けたまま黙るんだよ。常識的に考えたらこの対応が一番普通だろ。文句があるならキスしてしまうよ? すべてのウマ娘は生まれながらにしてアクメを欲している。

 

「あ、あの」

「なに」

「その……聞かないのですか?」

「なんかいろいろあったんだろ。それを話すべき相手はウオッカちゃんだし、俺の目的はキミを見つけて屋敷まで送ることまでだから」

「……そうですか」

 

 そうそう、困惑しててもいいからとりあえず俺の後ろにうおっ乳デカいね♡ 違法建築だろ。

 どうして俺の背中をそんな巨峰で押し出そうとするの? そんなに子作りしたいならいいけど……。

 

「い、いくぞ」

「……はい」

 

 そんなこんなでアストンマーチャンの特に秘められてなかった最強パワーを改めて実感しながら発進した。ただひたすらに運転ミスしないかだけが心配。

 

「…………あの、ヒーローさん」

 

 夜でも点滅しない交差点の信号で停車すると、後ろから透き通るような声が聞こえてきた。声優さん?

 

「冬の川辺は……冷えました。こうしているとより体温を感じられます。人の温もりに安堵できます」

 

 一拍置いて彼女は続ける。

 

「なので……体温を感じていられる内に、マーちゃんの話をしてもいいでしょうか」

「あっ、はい、どうぞ」

 

 背中に伝わる感触と温かさでつい狼狽して声が裏返ってしまったが、彼女がそれを気にする様子はない。黙ってこの幸福を噛みしめてもいいってのか? 性癖を壊すなッ! 運命を覆せ。

 

「……今朝、お母さんが朝食を準備してくれました。二人分でした」

 

 やはり彼女も実家に帰省していたらしい。なんか府中に残ってるウマ娘が多すぎて帰省シーズンというのを若干忘れかけていた。

 

「お父さんもいました。なので二人分です」

「……? アストンさんを含めて三人分だろ」

「いいえ」

 

 彼女の声音は落ち着いている。

 落ち着いてはいるのだが、どこか儚さを感じる弱々しい音にも感じ取れた。

 

「二人分でした。マーちゃんが首を傾げると、お母さんは本当にうっかり忘れていたみたいだったので、すぐに用意してくれました」

 

 信号が青になった。

 会話が中断され、走行し、また赤信号に足止めされた。

 

「病院のお手伝いをしてから府中に戻るつもりだったので、そのまま病院へ赴きました。少し経って、通路で人と肩がぶつかりました。お昼頃までに、三人ほどぶつかってしまいました」

 

 そのまま話を続けられるように、俺は付近の端に一時停車した。アストンマーチャンは変わらず続ける。

 

「お手伝いを終えて外に出るとトレーナーさんがいました。担当のウマ娘さんを待ってると仰っていました。マーちゃんもトレーナーさんの車で府中へ送って貰う予定でしたが……気が変わったので、マーちゃん一人で移動する旨をメッセージで担当トレーナーさんへ伝えたところ、同じタイミングで病院の近くにいらっしゃったトレーナーさんもどこかへ行かれました」

 

 アストンマーチャンは今日あった出来事を滔々と語っているが、いつの間にか俺の腹部に回されていた手が離れている。

 

「そのあとウオッカにメッセージを入れて、それきり携帯電話は何も受信しなくなってしまいました。なのでウオッカとの待ち合わせ場所を目指して、えっさほいさと向かっていたら──あの川に立っていました。それが今日のマーちゃんです」

 

 なんか不穏な雰囲気を感じる一日の流れだったが、一日の内容の濃さで言えば俺も負けてはいない。夢の世界にダイブして、擬人化したカラスのオバケとレースして、気晴らしに外へ出たら不思議な雰囲気のウマ娘にちょっとシリアスな雰囲気で自分語りをされてます。僕たち似た者同士だね♡ 正体見たり枯れ尾花。

 

 ──まぁ、何かあるんだろう。

 俺の知っている怪異現象の他にも、この世界には不思議な因果が。なんなら宇宙人とかもいそう。

 アストンマーチャンの()()がこのタイミングで発現しあの川へ導かれたのは、カラ子の縄張りだったこの街が彼女を欠いたことでちょっとした無法地帯になっている事が関係していると見て間違いなさそうだが──この少女のよくわからん展開自体は彼女自身が持っている運命だ。

 

 とはいえ、だ。

 先ほども考えた事だが、わざわざ真正面からその運命と対峙する必要はない。

 俺もそうだし本人である彼女もそうだ。

 怪異との戦いだってマジで怠ぃなと思いながらやってるし、不条理を押し付けてくるような小生意気な運命との付き合い方なんぞちょっと適当に流すくらいが丁度いいのだ。

 いい機会だし()()()()()にもその事を教えてあげよう。俺が丹念に慰めてあげるからね。俺優しいから頼もしいから。秋川中毒にしてやるからなこの野郎。

 

「……忘れ去られてしまうかもしれません。トレーナーさんにも、スカーレットにも、ウオッカにも──」

「いや、それは無い」

「……えっ?」

 

 あくまで後ろは振り返らず、客観的に見た事実だけでアドバイスをすることにした。無責任な励ましの言葉よりかは意味があるだろう。

 

「アストンさんの抱えてる運命がどんなものかは分からないけど、少なくともウオッカちゃんは君を忘れたりはしないよ」

 

 彼女はアストンマーチャンを探し続けていた。

 本当についさっきまで、汗水たらしてこの街を駆けずり回っていた。それが何よりの証拠だ。

 

「今だってたぶんアストンさんのスマホにスタ爆してるだろうし、鬼電もしまくってると思う」

「な、なんと……」

「というか俺、ウオッカちゃんに頼まれて君を探してたんだぞ。忘れてる相手の捜索を他人に頼むことなんて無いと思わないか」

「……それは、そうかも……」

 

 あんま友情パワーを舐めない方がいい。ウオッカちゃんがアストンを想う気持ちは俺と山田の絆にも匹敵する無類の強さを秘めている。

 ()()だからこそ、家族や近しい大人とはまた違う──互いを引き合う無限の引力が生まれるのだ。

 

「まぁ、潔く受け入れるのもそれはそれで必要な事かもしれないけどさ」

 

 あの川辺で見つけた時のアストンにはその予兆があった。目の奥に覚悟と諦めが灯りかけていた。

 だが、それは些か早計というものだ。報連相が大事だぞ。イク時は司令官に許可を取ること。

 

「俺としてはまず助けを求めるところから始めて欲しいな。俺だってヤベー時は恥も外聞もなく手を伸ばすぜ」

 

 山田……たすけて……! という心の祈りと共にね。友……。

 

「スマホが繋がらないなら公衆電話で、それが駄目なら直接会いに行って、会えないなら大声出して──とにかく何でもやってみる。気づいてもらえるまでほっぺつつくとか色々」

「……もし、それでも気づいてもらえなかったときは、どうしますか」

「気づいてくれるよ。俺にはそういう存在がいるし、アストンさんにはウオッカちゃんがいる」

「ウオッカ、が……」

「あと俺もいる」

「あなたの連絡先、知りませんが……」

「……後でウオッカちゃんに聞いといてくれ」

 

 どうせこのバイクに跨ってる時点で俺の正体は筒抜けなのだ。アストンマーチャンが不思議タイプのウマ娘だと判明したのであれば、必要以上に正体を隠す意味もあるまい。

 

「とりあえず屋敷までは送るからしっかり掴まっててくれ」

「……はい。よろしくお願いします、ヒーローさん」

「その呼び方むずがゆいんだけど……」

「──ふふっ。だって、わたしにとってはヒーローさんですから」

 

 どこか先ほどまでよりは元気を取り戻してくれたらしいアストンマーチャンを改めて乗せ、メジロの屋敷へ駆けていく。

 道中止まって会話をすることもなく、点滅信号を過ぎていけばあっという間に目的地に到着してしまった。巨乳の旅もここまでだったようだ。

 

「せんぱ~いッ!!」

 

 そして裏門の付近には俺からの連絡で既に戻っていたウオッカが待っていた。彼女のもとへアストンを送り届けるというミッションは無事成功したようだ。

 

 ていうかウオッカちゃんのかわいすぎる嬉しそうな笑顔に感動している間も背中のやわらか湯たんぽが性欲を煽りまくってそろそろ限界なんだがどうしてくれる? デカパイっていいなぁ、和風総本家のお時間です。

 


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