正月休みで輪島市門前町浦上の実家に帰省していた。清酒3合を飲んで、こたつでくつろいでいた時だった。スマホが鳴った。慌てて行った台所で揺れに遭った。(北國新聞社事業局次長・宮腰哲也)
体感としては最初5秒くらいの縦揺れがきて「そろそろ終わりかな」と軽く考えていると、もはや立っていられない強い揺れがきた。恐ろしいとしか言いようのない、長い長い十数秒間だった。
介護が必要な父はベッドの上。それをかばうようにして覆いかぶさった母の上に壁が丸ごと落ちた。
父を車椅子に乗せ、ふすまや落ちた壁、アルミサッシ、割れたガラスを手当たり次第に外へ放り出し、とりあえず無事だった仏壇のある部屋に逃がした。
日没まで1時間。玄関の戸を蹴破って外へ。母には、軽自動車に父を乗せて体育館に行くよう伝えたが、これが痛恨のミスだった。津波警報が出る中、海に近い方向へ行ってしまった。
後で別の車に乗り込んで合流するつもりだったが、スマホは通じず、父母と、はぐれてしまった。酒を飲んでいるので、車は運転できない。思い当たる先を駆け足で回った。
10㌔ぐらい走っただろうか。もはや無事を祈って朝を待つしかないと決心し、近くの人が集まった葬祭ホールに行くと、父と母がいた。無事だった。
駆け足の道中、地震速報は聞こえるが、救急車のサイレンは全く聞こえない。土台ごと倒れた家が見える。「救急車は来ないだろう」と言う人。夜になって冷え込んできた。今日ばかりは満点の星がうらめしい。泣けてきた。
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