息子のミリタリーブログ

スリングライフルとかの自作飛び道具を作るブログです。数年前に有閑大学生から社畜にジョブチェンジして最近ルアーフィッシングにどハマリしたので性能低下中 ツイッター→https://twitter.com/model22ra1

スリングライフルの精度について その1 精度の基礎知識編

 

 今回からシリーズとしてスリングライフルの命中精度について何本か連作記事書いていきます。今回は一発目ということでまずは命中精度そのものについての基礎知識編ということになります。

 

 さて皆様が「命中精度」もしくは単純に「精度」という言葉を聞いたとき、「このライフルは精度が良いんだ」と聞いたとき、どのようなものを想像されるでしょうか?

距離もよくわからないはるか遠方の的に一発で当てる神業的なものでしょうか?

私のような射撃の知識のある人間が「精度」という言葉を使う場合、それは「グルーピング」、すなわち集弾性の良し悪しを語っていることになります。

これからの話を理解していただくにはまずこの「グルーピング(集弾性)」なる概念を知ってもらう必要があります。

 

 

 この標的用紙2枚を見たとき、「命中精度」が良いのはどちらでしょうか?

左側①は中心近くに3発も当たっていますが、2発は左右に散らばってしまっています。

右側②は全弾大きく中心から外れていますが、外れた箇所に弾痕が小さくまとまっています。

 

結論を言いますと優れているのは右側②になります。

命中精度の良し悪しは中心に何発当たったかや得点が何点だったかではなく、弾痕がどれだけ小さくまとまったか、すなわち集弾性(グルーピング)の良し悪しで考えるのです。

グルーピング測定の際には弾痕の中で最も遠い2つを結んだ距離と、射手から標的までの距離で算出します。

「①のライフルのグルーピングは的まで30mで5発撃って20cmだったよ」という感じです

②だと30mで5cmになります

 

①は今回たまたま中心付近に当たった弾があっただけで、本来は直径20cm以上の円内にランダムに散らばるように当たります。今回は試行回数が少ないため偏っているわけですね。

 

②は弾痕の散らばりがとても小さいため、照準器を調整すれば全弾中心付近に纏まるようになるだろうと予想できます。しかしこれも試行回数が少ないがゆえの偏りの可能性もあるため、グルーピング測定は弾数が多いほど正確になります。

 

弾がどれだけまとまったか?という観点だと②は①に比べてグルーピングが1/4なので4倍の集弾性能があるということになるわけですね。

 

 

また、弾のバラつきは銃口から離れるにつれ円錐状に拡がっていくため、ある程度の距離でのグルーピングが判れば他の距離でのグルーピングも推測することが可能になります。上で挙げた②のライフルだと倍の距離60mではグルーピングも倍の10cmになるだろうと予測できます。

図にするとこんな感じ。

相似の関係であるため距離がn倍になるとグルーピングもn倍になるわけですね。

 

そしてグルーピングを表すのに使われるのがMOA(ミニッツ・オブ・アングル)もしくはMILという単位になります。

ヤードポンド法で表したのがMOA、メートル法で表したのがMILで、例えば1MOAのライフルは100ヤードで1インチの円内に集弾し、1MILは100メートルで10cmの円内に集弾するということになります。(このへん今回はかなりざっくり解説です)

 

以上を踏まえて②のライフルのグルーピングで計算すると、100mでは16.7cmにまとまると予想できるため1.67MIL、100ヤードでは6.04インチにまとまる予想で6.04MOAとなります

射撃の世界では未だにヤーポン法が蔓延っているためMOA表記がスタンダードとなってますが……メートル法で生きている私としてはMILのほうが直感的に使えますね。30mや5cmという数値は適当にそれっぽいのを決めただけなので換算めっちゃ面倒でした。数学苦手なので計算間違ってたらごめんね。

 

 

以上がグルーピング(集弾性)という概念とそれを表す単位となります。

 

しかしいくら集弾性が良くても的を外してしまえば意味が無いです。集弾性は「弾がどれだけ同じように飛んでいるか」の指標であって、同じ所に飛んでいる弾を狙った所に当てるためには性能の良い照準器を積んで射撃の方法を学んだ人間が事前の調整をしっかり行い挑む必要があるのです。道具も人間も良くないと当たらないのです。

 

 

例に上げた標的用紙も、結果だけ見れば①のライフルのほうが真ん中に当てている分優れているとも言えますからね。点数を競うなら②はボロ負けです。しかしこれは道具ではなく人間側の問題なので、ライフルの精度だけを語るなら「グルーピングの良い方」を「精度が良い」としているのです。当てるには人間も道具も重要ですが、私には人間の性能は上げられないので道具側の性能上げる方法だけ語っていきます。

 

 

 

まとめ

色々書きましたが今回はざっくりと、グルーピング(集弾性)という概念を覚えてもらって「10mで10cmのグルーピングなら30mなら3倍の30cmくらいになるな……」みたいな簡単な計算が出来るようになっていただければ大丈夫です。スリングショットとかスリングライフル界隈ではMOAとかMILまでしっかり換算する人自体あまりいないので。

 

次回は「スリングライフルは精度が良い」とは本当かについて語っていきます。