『ゴムの弾性エネルギーを用いて弾+弾受け+ゴム自身の重量を加速させ運動エネルギーへ変換する』ことでスリングショットは弾を飛ばしています
ここで一番重要な点はゴムが加速しているのは弾のみでは無いということです
弾+弾受け+ゴム自身の重量を加速することで得た運動エネルギーは弾と弾受けとゴム自身へそれぞれ分配されるため、弾受けとゴム分の運動エネルギーは無駄となります
ゴムの条件と弾+弾受け重量の合計値をそのままに弾を重く、弾受けを軽くすると、運動エネルギー総量はほぼ変化しませんが、弾が重い分弾への運動エネルギー分配が増加します
また、ゴムの条件はそのままに弾+弾受け重量を軽くした場合、軽量化前から運動エネルギーの総量はほぼ変化せず、軽量化している分だけ初速が上昇する形でエネルギーの釣り合いがとられると考えられます。(これは現在多分そうだろうな程度の仮定の話で、オープン式スリングライフルで弾の重量のみ変化させながら初速測定して検証する必要があります)
よって同一条件のゴムでは弾受けを軽量化することで弾への運動エネルギー分配量を増加させることができ、結果初速が上昇する ということです
しかしこれはレール式でない通常のスリングショットやオープン式での話です
これをレール式に当てはめた場合、ある実験事実と反してしまうのです
『スリングライフルのゴムと弾の関係 その2』
https://musuko-2.hatenadiary.org/entry/20150127/1422340343
これは7年前に行ったゴムの条件を変えずに6mmクレモナロープ弾受けと3mmナイロンロープ弾受け、10mmダボと同径の軽量弾をそれぞれ撃ち比べて初速測定した実験です
3mmナイロンロープのほうが軽いので、先の前提条件を元に考えると3mm+軽量弾の組み合せが最も高初速になり、6mm+10mmダボが最も低初速となるはずでしたし、エネルギー総量は変化しないのでは?という仮定もありましたが結果はこうです
この実験では弾受け重量を変えるために細いロープを用いると逆に初速低下していますし、弾+弾受けの運動エネルギー総量もバラバラです
しかし弾の重量を軽くした際にはそれぞれの弾受けで初速向上がみられました
このことから弾受けの太さを変えずに材質変更などで軽くすると初速も上がることが予想できます
更に実験事実として、11mmパチンコ玉仕様のModel25Rムスタングを用いた初速測定では単純な6mmクレモナロープ弾受けと弾受け中央に結びコブを作り、弾受け重量をほぼ変えず太さを変更したもので初速測定を行い、結びコブを作った方がより高初速になるという結果を得られました
これら実験結果から言えることは、『レール式では弾受け重量を軽くすると同時に、何らかの要因で太い弾受けを使用せねばならないとんでもないジレンマを抱えている』ということです
『何らかの要因』として、レールへの弾の押し付けが考えられます
観察事実として、細すぎる弾受けを仕様すると加速中に弾受けが弾を追い越してしまう現象が発生します
弾の追い越し現象は、弾受けが細すぎて弾の芯からズレてしまい、ゴムの力でフレームを押し上げて変形させ、弾受けが弾とレールの隙間に潜り込むことで起きます
これを回避するため経験上弾受けロープは上下レール間の隙間程度の太さにするのが良いとしています
もしかすると、弾の追い越し現象を起こさない程度に太い弾受けでもこのズレは発生しているのでは?と考えました
弾受けがある程度太い場合でも、上下レールの隙間より細く上下に遊びがある場合は弾の芯からズレて、追い越しが発生しない程度に潜り込んで半ば詰まったような状態で加速させたり、ズレた受けが弾を斜め上・斜め下から押して弾を内部で回転させようとし、レールに押し付けてブレーキを掛けてしまっているのではないかと推測したのです
実際、数十発撃った後のレールには弾が強く押し付けられて削れた痕や、内部で弾が傾いて抉れたような凹み傷が多く確認できます
以上の実験結果と観察から、レール間隙間ギリギリの太さの弾受けなら物理的に弾の芯から外れることが無くなるので、弾の押し付け現象がなくなり、細い弾受けより高初速になるのでは?という推察ができるのです
この推察を元に上下にM字レールを配置しレールの隙間を狭めて細い弾受けでも弾の芯からズレにくく作ったのがModel26Rラグドール以降のライフルです
ラグドールは9mmダボ仕様ながら弾受けを細く作れるため8mmダボ仕様のModel22Rレオパルドと弾+弾受け重量がほぼ同じであり、予想通りに初速もほぼ同じになりました
さらに新ブラッククイーンもテーパーゴム+細い弾受けの採用により、新旧かなりのサイズ差があるにも関わらず旧ブラッククイーンと同じか少し上回る初速を達成しています
またこれは他の方の昔の報告ですが、自己潤滑樹脂(POM)製のカップとゴムに接続するための細糸を組み合わせた弾受けを用いてパチンコ玉で100m/sを超える初速を達成されています
カップ状の弾受けなら物理的に弾の芯を外すことがないので、これも高初速になるということですね
私は面倒くさがりなのでコッキング時にくしゃっとなった細糸を直したりカップの向きを気にしたりしたくないので、何にも考えずにロープ握って引くだけのロープ製弾受けに拘ってますが、カップ状弾受けは一つの回答と言えるでしょう
次回(その6)はあくまでロープ製弾受けに拘りながらも上下レールの隙間ギリギリの太さの弾受けを使わなくてもよくなるためのアイデア、『ミニエーノックシステム』について解説していきます
追記
オープン式では弾の重量変化と初速の関係を見る実験してないんですけど、レール式では行っております
https://musuko-2.hatenadiary.org/entry/20150125/1422162075
しかしこの実験では口径11mmのアップルヘッドに10mmダボなどを装填して実験した記憶があるので、上記の弾受け詰まりやレールへの押し付け現象が頻発していたと考えられ、現在の視点ではあまり良い実験とは言えませんね