「やりたいことはやっておく」…"オワコンの国"をいち早く脱出? 50代で夫婦でタイ移住の10年間
定年を待たずに…共稼ぎで貯めた1億円を資金に
「外から最近の日本を見ると、大丈夫なのかな、ずいぶん落ちぶれたなと思います」
こう話すのは、’13年にタイ・チェンマイに移住した広瀬ガネッシュさんだ。
時間に追われて生きてきた自分を振り返り、残りの人生はのんびり海外で過ごしてみたい――。そんな “老後の海外移住”を夢見る人は少なくないが、広瀬さんは、52歳で会社員生活に終止符を打ち、生活の拠点をチェンマイに移した。

移住して10年。現在はチェンマイ郊外の一軒家を借りて夫婦2人で暮らしている。
年金受給年齢前にも拘わらず、一度も職には就いていない。
退職したら“生産的な活動”には一切携わらない――。若いころからそう決めていたという。
「海外暮らしは30代から考えていたのですが、大好きな国に住むのであれば、仕事はしたくないという思いが強くありました。仕事で住むと、その国も人も嫌いになってしまうような気もして。だから移住するなら“ぷらぷら”したいな、と(笑)」
チェンマイでは貯金を取り崩して生活している。
「20代半ばに結婚したのですが、チェンマイで暮らすまではずっと共稼ぎ。定年後の移住を見据え、計画的に貯金を始めました。日本での拠点も確保したかったので家のローンを払いつつでしたが、子どもがいないこともあり48歳でローンも完済できた。
予定より早くローンを終えたので、移住の前倒しも考えたのですが、60歳までは働くべきかと迷っていた。そんな矢先、義理の兄が突然死してしまった。それで覚悟が決まりました。60歳まで生きているとは限らない、やりたいことはやっておくべきだと」
その時点の預金残高は約1億円。広瀬さんは52歳でのリタイアを決めた。

“自由”でいられるチェンマイ
移住先をタイ・チェンマイにしたのは、タイという国や文化、チェンマイの町並み、そしてチェンマイに住む人々に強く惹かれたからだという。
「大学で歴史学科・インド中世史を専攻していたこともあって、20代からインド旅行の中継地点として、度々タイに短期滞在しました。その後、ネパールの首都、カトマンズに夫婦で2年ほど暮らしていた際にも、生活物資調達のため頻繁に足を運んでいたら、チェンマイが大のお気に入りに。
バンコクは大都会なので人が多くて苦手なのですが、チェンマイは自然が豊富で人も少ない。それにチェンマイは歴史のある街。歴史的建造物などが多く遺されていて、魅力にあふれていた。
また、近隣の東南アジア諸国に旅をするのも便利。飛行機で1~2時間の距離ですし、時期によっては国内線より安い運賃で移動できます」