ウクライナで徴兵逃れ横行 「富裕層にあっせん」
【キーウ(キエフ)=共同】ロシアの侵攻を受け、総動員令が出ているウクライナで、徴兵逃れが横行している。富裕層向けに、兵役免除の証明書入手をあっせんする「脱徴兵ビジネス」に関与する20代男性が9日までに実態を明かした。男性は「武器を手にしたくない人に選択肢を提供している」と正当化するが、抜け穴拡大を恐れる当局は取り締まりに力を入れる。
徴兵逃れはロシアや旧ソ連諸国で社会問題化し、ウクライナでも2月の侵攻後に顕在化した。費用は依頼者の経済状況によるが、5千~1万ドル(68万~136万円)程度。2020年の1人当たりの国民総所得(GNI)が3540ドルのウクライナでは中間層には手が届きにくい金額で、不公平感が生まれ厭戦(えんせん)ムードの芽となることも懸念される。
男性はウクライナ中部の医大生。仲介の依頼があれば、仲間の医師がいる徴兵事務所などで検査を受けてもらい、心臓病や脚の障害、精神障害などを装った診断書を軍に提出する。その後、1週間ほどで兵役免除の証明書、通称「ホワイトチケット」を入手できる。
公文書偽造や徴兵忌避の容疑で当局に摘発される可能性があり、依頼を受けるのは、知り合いかその知人のみ。徴兵は「勝つためには仕方がない」と受け止めるが、「自身や子どもの将来を考え、戦場に行きたくない人もいる」と話す。
ウクライナ保安局は11月、成人男性の欧州への違法出国に関わったとして、隣国モルドバの親ロシア派支配地域「沿ドニエストル共和国」の仲介グループの摘発を発表した。費用は1人5500ドルからで、ウクライナの国境警備隊の当局者も関与していた。
また総動員令では、18歳未満の子どもが3人以上いれば徴兵を免除されるため、3人分の偽造した出生証明を国境の検問所に提出し、摘発された男性もいる。この男性は、証明書を1500ドルで購入したと説明。見逃してもらおうと1800ドルの賄賂も差し出したという。
2022年2月、ロシアがウクライナに侵攻しました。戦況や世界各国の動き、マーケット・ビジネスへの影響など、関連する最新ニュースと解説をまとめました。
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