代替プロテイン

Umami BioworksとCell AgriTech、東南アジア最大の培養肉工場計画を発表

 

シンガポールの培養シーフード企業Umami Bioworksとそのパートナーでありマレーシアの培養肉企業Cell AgriTechは、アジア太平洋最大となる培養肉・魚工場「CellForge I」の計画を発表した

工場の総面積は96,000平方フィート(約8900㎡)、年間生産量は3,000トンを超える見込みであり、2025年第1四半期の開設が予定されている。

東南アジア最大の培養肉工場計画

出典:Umami Bioworks/Cell AgriTech/GFI

The Good Food Institute APAC(GFI APAC)の記事によると、「CellForge I」は2025年第1四半期に、工場が集積するマレーシア、ケダ州にある工業団地「クリム・ハイテクパーク」で開設が予定されている。

完成時には最大5つの本格的な生産ラインが設置され、エネルギーの一部は太陽光エネルギーを使用する予定となる。

高価な都心の中心部ではなく、「クリム・ハイテクパーク」という工業地帯に設置されるため、運用コストが比較的低いという利点があるようだ。工業地帯に設置することで、培養肉という新規食品を大量生産するためのスマートで無駄のないシステムが構築されるという。

提携では、Umami Bioworksは細胞株、増殖培地、モジュール式自動生産ラインなどの生産技術を開発し、Cell AgriTechは収量と運用効率の向上に注力する。

二社はシンガポールでの承認申請も進めており、現在、シンガポールとマレーシアの当局と、この地域での培養肉導入に不可欠となるハラール認証についても協議を続けている

Umami Bioworksの技術を実装する最初の工場

出典:GFI APAC

Umami Bioworksはリンクトインで、「CellForge I」はUmami Bioworks独自の細胞培養プラットフォーム技術に基づいて構築される最初のライセンス工場となると述べた。

また、「技術スタックをメーカーに提供し、主要ブランドとの協力を積極的に推進」し、今後数ヵ月以内に同工場の最初の製品とブランドパートナーを発表することにも言及した。

Umami Bioworksは、パートナーとなる食品メーカーが培養肉を製造できるよう、原料の提供だけでなく技術システム全体をメーカーに提供し、食品メーカーの工場でシステムの稼働をサポートするB2Bモデルを構想している。このB2Bモデルを最初に搭載した工場が「CellForge I」ということになるだろう。

今年8月にはグローバルに展開する日本の大手水産食品会社マルハニチロとの提携を発表した。

Cell AgriTechは今回発表された工場のほか、2024年末までにマレーシア、ペナンに培養肉工場の建設を完了予定であることを今年発表している

培養肉への投資が後退した1年

出典:Mosa Meat

GFIは、今年は世界の培養肉部門がかなりの後退に直面した年であることに言及。不正確な情報による反発により、ベンチャーキャピタルが代替タンパク質企業への投資に消極的になったため、一部のスタートアップ企業はスケールアップをしたいタイミングで、どこで手を引くかという苦渋の決断を迫られたことを指摘している。

現に、アメリカの培養肉企業New Age Eatsは投資を呼び込むことができなかったため、4月に閉鎖を発表した。植物性チキンナゲットNowadaysも、資金を調達できなかったことを1つの理由として、8月に事業停止したことが報じられた。

GFIは世界の食料システムの変革は、短距離走ではなくリレーであると強調している。

世界の培養肉企業が150社を超えた今、シンガポールとマレーシアにおける主要な培養肉企業であるUmami BioworksCell AgriTechの提携は、各国が強みを発揮し、互いに協力して食の未来を切り開くための有益なモデルとなり得るとGFIは考えている。

 

参考記事

Umami Bioworks LinkedIn

Just announced at COP28: New cultivated meat factory coming to Southeast Asia!

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Umami Bioworks/Cell AgriTech

 

関連記事

  1. 機械学習でタンパク質収量を増やす英Eden Bioが約1.6億円…
  2. AngelList初のローリングファンド、Sustainable…
  3. 食肉大手JBSが培養肉に参入、培養肉企業BioTech Food…
  4. NewFishが微細藻類由来のタンパク質粉末を開発、米国スポーツ…
  5. Meati Foodsの菌糸体肉、全米のホールフーズ全店舗で発売…
  6. モサミートがEUから助成金を授与、Nutrecoと共同で培地コス…
  7. 培養魚のBLUU Seafoodが約24億円を調達、年内にパイロ…
  8. 植物性ペットフードV-planetが日本、韓国で発売を開始

精密発酵レポート好評販売中

おすすめ記事

ミシュラン星付きシェフと再生医療研究者が立ち上げた培養肉企業ダイバースファームが目指すもの

ミシュラン星付きシェフと再生医療の研究者が立ち上げた異色の培養肉企業ダイバースフ…

DAIZが植物性代替卵「ミラクルエッグ」の開発に成功、ハイブリッド食品で畜産業との共存を目指す

熊本発のスタートアップ企業DAIZが代替卵市場に参入する。DAIZは今月8日、植…

ピザハットのロボットレストランがイスラエルに登場

イスラエルのピザハットが完全に自動化されたロボットレストランを発表した。…

The Every Company、世界初の精密発酵タンパク質を使ったアルコール飲料を発売

精密発酵により卵白タンパク質を製造販売する米The Every Companyは…

米ビール大手のモルソン・クアーズが植物性ミルク市場へ進出

アメリカ大手のビール会社であるモルソン・クアーズ(Molson Coors)は、…

代替油脂の米Lypidが台湾大手コーヒーチェーンと提携、500店舗に導入

植物由来の代替油脂を開発する米Lypidが、台湾大手コーヒーチェーンのLouis…

次回Foovoイベントのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

培養魚企業レポート・予約注文開始のお知らせ

精密発酵レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,724円(12/26 11:06時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(12/25 20:25時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(12/25 23:42時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(12/25 17:11時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(12/26 10:02時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(12/25 19:52時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています