がんばって社会的成功を収めれば女はついてくる!?
清田 “俺すげえ!欲求”だったら仕事や趣味で満たせばいい。性欲を満たしたいならオナニーをすればいいし、最悪風俗に行くという手もある。でも、岡田斗司夫や佐藤広報はなぜか“恋愛”をする。だとするならば、男は恋愛に何を求めているんだろうか?
佐藤 そこを言語化しないことには前に進めないもんね……。何だろう、ここからは私と斗司夫が完全に同じものとして話を進めていくけど、まず、自分の中に「自己評価の低い自分」と「自己評価の高い自分」が同居しているんですよ。前者は幼少期〜思春期にかけて女子にモテなかった自分で、後者は社会人になり、仕事や社会経験などで「俺イケてるかも」と思えるようになった自分なのよ。
清田 なるほど、それはすごくわかる。
佐藤 で、女子が自分のことを好いてくれたり、声かけたら行けんじゃねえかなって女子を見つけたりすると、自己評価の低い自分が喜ぶわけですよ。「俺みたいなクソでもモテるのか!」って。昔の自分だったらこんなことはできなかったわけで、過去の自分に自慢している感覚になる。もうね、「よくやった俺!」「全俺が泣いた!」状態ですよ。
清田 根深いルサンチマンっすね……。
佐藤 だけど同時に、自己評価の高い自分がプライドを発動し始めるんですよ。「いやいや、俺はまだまだこんなもんじゃないっしょ」って。しかも、かつて自分を蔑ろにしてきた女性たちに対し、リベンジを果たしたような気持ちにもなるわけです。
清田 佐藤広報って正直すぎるほど正直ですね……。
佐藤 いや、実際にこういうことをしているわけじゃないですよ! 例の“男のイヤ〜な部分”を言語化するとこうなるかもって話ですからね!
清田 わかりました。
佐藤 私も斗司夫も、思春期に何かをこじらせたんですよ。イケメンじゃないから、太っているから、天パーだから、服がダサいから、だから女子にモテない。そういう非モテ期を経験すると、「何くそ!」という気持ちになる。で、問題はここからなんだけど。
清田 だけど?
佐藤 これは多くの人に共通することだと思うけど、男ってさ、モテなかった悔しさのエネルギーを、勉強や仕事といった“社会的成功”に向けるでしょ。これてつまり、「社会的な価値(地位や収入)が上がればモテる」と考えている証拠だよね?
清田 確かに、仕事や勉強など、“自分ががんばった報酬”としてイイ女がついてくるって発想はあるかも。
佐藤 でもさ、失恋ホストをしてて痛感したけど、そういう社会的成功と恋愛的な成功って、実は何の関係もないよね。恋愛的な成功というのは、相手と幸せな恋愛関係を築くってことね。こういう部分ってさ、やっぱり具体的な女性と恋愛の経験を少しずつ積むことでしか成長していかないじゃん。
清田 確かに。傷ついたり傷つけたりしながら、トライアンドエラーを繰り返していくしかない。
佐藤 でも、「いつか見とけよ」のリベンジ魂を抱えたままだと、そういう発想にまったくならない。そうではなく、社会的な成功を目指す。そうすれば女がついてくるという風に発想する。で、「俺がすごくなったからセックスできた」→「セックスすればするほど俺がすごくなる」という思考になっていく。岡田斗司夫も、このスパイラルにハマっちゃったんだと思う。
清田 だから女の人を「数」や「スペック」でしか見られないんだね。「たくさん」の「イイ女」とセックスすることが男の勲章だ、的な。まるで麻薬だね。“全能感”という麻薬……恐ろしい!
佐藤 ホント、そういうやつはマジで恋愛すんなって話ですよ!
清田 岡田斗司夫(=男たち)にとって、「俺ががんばった」ことの報酬が恋愛で、それをたくさんすればするほど“俺すげえ!欲”が満たされていく……。何とも絶望的な感じになってきたけど、その根底には「僕のことを受け入れて欲しい!」って思いがあるわけだよね?
佐藤 そうそう。それって幼児的でカッコいいものではないから、本人も認められないんだと思うけど。
清田 だとしたらさ、「僕はたくさんの女性に受け入れて欲しかったのです。でも、僕には彼女たちを受け入れる度量もキャパシティもありませんでした。本当に申し訳ありません!」ということをまず言うべきだったと思うんだけど……岡田斗司夫がズルかったのはさ、さも自分も失恋したような顔をしてた点なんだよなあ。
佐藤 「僕だって君を失うことはつらいんだ!」みたいな態度だったしね。
清田 あれを見たら、どんな女性だって「ああ、こいつ何もわかってねえな」って思うような気がする。これって、女の人が男たちに抱いてる絶望感とつながるよね。
佐藤 とんちんかんな説明をベラベラと語り、どんどん絶望されていく男たち……。そうならないためにも、男は自分の感情を注意深く観察し、恋愛における“他人事感”を見直すことが急務のような気がします。しかしさ、何であんな頭のいい人がこうなっちゃったかね……。
清田 鮮やかな詭弁を展開するとか、異様に緻密な分類リストを作るとか、愚かでしかないよね。多分、せっかく回転の速い頭を持っていても、それを自己弁護や自己満足にしか使えないんだよ。まさに“スペックの高いバカ”というか……。
佐藤 失恋ホストにも、そういう彼氏に悩まされる女性からの相談は少なくないもんね。
清田 とにかくこの一件は、男性性を考える上で貴重な資料になると思う。相手がいることなので早く風化させた方がいい側面もあるけど、“男のイヤ〜な部分”に関しては、引き続き考えていきたいと思います!
■桃山商事 清田代表・佐藤広報/二軍男子で構成された恋バナ収集ユニット「桃山商事」。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆など、何でも手がける恋愛の総合商社。男女のすれ違いを考える恋バナポッドキャスト『二軍ラジオ』も更新中。コンセプトは“オトコ版 SEX AND THE CITY”。著書『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)が発売中。Twitterは コチラ。