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岡田斗司夫がハマった“全能感”という麻薬。セックスよりも強烈な「俺すげえ!」の快楽とは?

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9人の“彼女さん”と付き合う原動力とは何だったのか?

清田 岡田斗司夫は直近で9人の“彼女さん”がいて、多いときには80人の女性と同時に付き合っていたと語っている。ネットではすっかり“性獣”扱いだけど、これって本当に「性欲」が原動力だったのか、ちょっと疑問なんだよね。

佐藤 どういうこと?

清田 すべてを性欲のせいにしちゃうと、「岡田斗司夫=異常性欲者」で終わっちゃうし、「やはり男は生物学的に精子をバラまきたい生き物なんですなあ」「岡田くんはやり方がマズかったけど、そこは上手くやっていかなきゃですなあ」「それが男の甲斐性ってもんですなあ」「ですなあ、ガハハ」って話になってしまう。

佐藤 絶滅して欲しいですね。

清田 岡田斗司夫は多分、性欲よりももっと強烈な、男の“俺すげえ!欲求”に取り憑かれていたような気がするのよ。あるじゃないですか、男には「俺すげえ!」って思いたいという謎の欲求が。

佐藤 あ、ありますね……。私なんか、ほとんどの原動力がそれのような気がします。

清田 これまで我々もいろんなヤリチン男に取材してきたけど、ヤリチンってまるで多忙なビジネスマンのように振る舞うじゃない? スケジュールをパズルのように調整して、あっちこっち飛び回って、「金と時間がいくらあっても足りないわ〜」なんてボヤいたりして。しかもあいつら、タクシーによく乗る(笑)。

佐藤 「マジ俺が2人必要だわ~」とか言っているヤツいましたもんね。

清田 次から次へとセックスして、小さなトラブルとかもちょくちょく起こってね。そういう異様なテンションで生きる毎日の中で、なぜかヘトヘトになりながらも、「俺マジやべえわ〜」「俺がいないと世界が回んないわ〜」みたいな恍惚感に酔いしれている。これは多分、超絶多忙なビジネスマンや芸能人にも似たようなものがあると思う。岡田斗司夫も、きっとそういう時間を体験していたのではないか……。

佐藤 最高に自尊心がくすぐられる予定の埋まり方なんだろうね。俺めっちゃ求められてる感というか、俺ちょっとすごいステージにいる感というか。その気持ちよさは何となくわかるけど。

清田 で、それをまるで成果物のように誰かに見せて、さらに悦に入る……。仕事の忙しい自慢とかも構造的には同じだと思う。わざわざ事細かに記録したりするのは、それが「俺すげえ!」の痕跡だからなんだろうなあ。

佐藤 しかもさ、そういうときってある意味で楽なんだよ。自分とも相手とも向き合わなくて済むから。常に「次」があれば、「今」から逃げ続けることができるじゃないですか。岡田斗司夫にもそういう部分があったと思う。

男に広く共通する「自分の感情がわからない」という病

佐藤 今回の一件で最も気になったのは、岡田斗司夫の“他人事感”なんだよね。ニコ生の釈明会見でも、例えばキスプリを「ニセ写真」って嘘ついたのは、「僕は最初からおかしいと思ってたんだけど、彼女(=告発したAさん)のためを思ってニセ写真と言った」からだと説明してたし、そもそもプリクラを撮ったのも「彼女に撮りたいって言われたから」だと。しかも、女性との関係に関して、「自分から別れることはない。向こうから別れようと言われたら別れる」ってスタンスを繰り返し述べてた。

清田 「僕のことはどうでもいい。彼女を守りたい」とか、「近い将来、恋愛(=1対1 をベースにした恋愛観)が崩壊し、僕が今まさに味わっているような苦しみ(=複数の人を好きになってしまうこと)を社会の人々も経験するようになるはずだから、僕がここで黙るわけにはいかない」とか、そんな発言もあったね。

佐藤 女性に近づくときもさ、自分から誘っているようで実はすべて“受け身”でしょ。自分のことを好いてる人とか、自分のことを受け入れてくれそうな人にしか行かないんだよ。ファンとか学生とかね。これは岡田斗司夫に限らず、こと恋愛においては、男って“絶対に負けない戦い”が大好きだよね。

清田 そういう人ってマジで多いよね。佐藤広報を含め……。

佐藤 そうなんですよ、だから心がザワつくんですよ! ニコ生を見てても、自分が何をしたかったのかについては全然語られてなかった。多分、岡田斗司夫は自分で自分の気持ちがわからなかったんだと思う。理屈はあるけど、感情は説明できない。そういうことってあるんですよ。

清田 本人も『フロン─結婚生活・19の絶対法則』(幻冬舎文庫)って本の中で、男は「自分の感情を見つめる能力」が低いと語っている。「自分の心の中にわき起こる小さい感情の波をできるだけ見ないようにする。無視して理性的に行動しようとする姿勢が、“男性的”と呼ばれる行動の本質なのです」って、見事に喝破しているんだけど……。

佐藤 「男は感情の観察が下手くそ」ということ自体は理解しているんだけど、じゃあお前の感情を見つめてみろってなるとどんなに切羽詰まっていてもできない。私もそうなんですが……。

清田 だから何かにつけて“他人事感”が漂ってしまうんだろうね。女の人は男のこういう部分に苛立つんだと思う。告発者であるAさんも、もしかしたらそういう気持ちだったんじゃないかな。

佐藤 確かにそうかもね。

清田 あんなプリクラを撮っていたわけで、楽しい時期だって確かにあったはずなんだよ。だけど、好きになればなるほど、彼氏の気持ちがよくわからないことに不安を覚えるようになっていく。でも、話し合いを求めても“理屈”しか返ってこない。「今、あなたは、何を思っているのか」が知りたいのに、そこがまったく見えてこない。それでまた不安が募っていく。そんなスパイラルがあったような気がする。

佐藤 そういう状態が続くと、「あなたにとって私って一体どんな存在なわけ?」って気持ちになっていくよね……。でもセックスだけはしっかりするし、「小説家になるためのサポートもするから」みたいなことも言うわけでしょ。これじゃAさんが混乱するのも無理ないよ。

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清田代表/桃山商事

恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆などを通じ、恋愛とジェンダーの問題について考えている。著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)や『大学1年生の歩き方』(左右社/トミヤマユキコさんとの共著)がある。

twitter:@momoyama_radio