連載

「性欲は本能」なんてウソ!? “男の花園”で剥き出しになる卑しいスケベ根性

【この記事のキーワード】

サービス外の“特別扱い”を求める卑しい根性

佐藤 どういうこと?

清田 当時の自分は完全に勘違いをしていて、「風俗なんてキモい男しか来ないから、俺みたいな若くてイケてる大学生が相手だったらお姉さんも喜ぶんじゃね?」くらいに思っていたのね。

佐藤 わかるけど、痛すぎますね。

清田 それなのに、蓋を開けてみればただのFさんでしょ。まるで“射精工場”のベルトコンベアに乗せられたような気分というか。要するに広報と同じく、根底には「あなたは他のお客さんとは違う」って認められたい願望があって、それが叶わなかったという虚しさだったと思う。

佐藤 「ボクの夢を壊された! うえ〜ん!」って感じか。

清田 まさにそうですね……。でも、よく考えるとこれってかなり虫のいい願望で、田房さんが怒りを感じているのも、男のこういう部分ではないかと……。

佐藤 虫がいいって、どういう点が?

清田 風俗のお客は、料金の対価として性的なサービスを受け取るわけだよね。だから、接客する側はとにかくポコチンをしごいて射精させる。サービスとしてはそれで十分でしょ?

佐藤 おっパブなら「おっぱいを揉ませる」、パンチラ喫茶なら「パンツを見せる」というのが商品になるわけか。

清田 そうそう。だからさ、一介のFにすぎない私が「俺という男に興味を持ってくれ!」みたいな願望──要するにこれは承認欲求のことだと思うけど、そういうものをお姉さんに求めること自体、サービス外のことなんだよね。だから、あれはめっちゃ虫のいい話だったなと……。

佐藤 そっか、それで言うと、私が本番のお誘いを「裏サービス」と感じて興奮したのは、“客以上”の扱いをしてもらったと感じたからなのかも。田房さんが見抜いた〈女の子の気が変わって、触らせてくれたり最後までさせてくれる可能性〉というのは、つまり「客としてではなく、男として俺に興味を持って欲しい」という願望のことなのではないか。

清田 こうやって言葉にしてみると、結構ヤバいよね。卑しすぎて死にたくなる……。

佐藤 そういう“プライスレスなプラスアルファ”を求める感じって、風俗以外でも男ってよくやるよね。カフェや飲み屋で店員のお姉さんに話しかけるもその一種だと思うわ。「普通の客とは違う俺」ってことを実感したいんだよ、あれ。

清田 メニューにない料理とか、株主優待券とか、ああいうものと似ているよね。とにかく“特別扱い”が欲しい。でも、払っているのは通常料金のみ。だから卑しい感じがするんだろうなあ。ホテルのアメニティグッズを持ち帰るような感じにも似ている。

佐藤 性欲を満たし、承認欲求も満たしてくれって……我々はかなり無茶苦茶なことを要求しているような気がしてきました。死にましょう。

清田 とにかくこの本は、男に内省を迫る素晴らしい一冊だと感じた。これは風俗に行ってる行ってないに関わらず、あらゆる男に関係がある本だと思う。

佐藤 そうですね。男が風俗に行く理由として、よく「男の性欲は本能だから仕方ない」みたいなことが言われるけど、「本能」って思考停止させる言葉じゃないですか。男の性欲とは何か、それは本当に性欲なのか、なぜ女性の性欲を認めることができないのか……などなど、男が自分の内面を掘り下げていく上で、この本はすごくいい手引きになるような気がする。

清田 田房さんはこれまで、『母がしんどい』(新人物往来社)や『ママだって、人間』(河出書房新社)が話題になっていて、「毒母問題の人」ってイメージが強いかもしれないけど、根底に流れているテーマはどの本も同じだと感じた。前者が「娘をちゃんと人間扱いしろ!」で、後者が「ママをちゃんと人間扱いしろ!」、そして今回は「女をちゃんと人間扱いしろ!」というのがテーマになっていると思う。さらに言うと、「男もちゃんと自分のことを人間扱いしろ!」というメッセージも今回の本には含まれているかもしれない。

佐藤 確かに。「男は自分自身のことをもっとちゃんと知れ!」って迫られてる感じがしたもんね……。今後も真摯にクソ男研究を進めてまいりましょう。

今回は「学園系リフレ」というお店にも行ってきました

今回は「学園系リフレ」というお店にも行ってきました

■桃山商事 清田代表・佐藤広報/二軍男子で構成された恋バナ収集ユニット「桃山商事」。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆など、何でも手がける恋愛の総合商社。男女のすれ違いを考える恋バナポッドキャスト『二軍ラジオ』も更新中。コンセプトは“オトコ版 SEX AND THE CITY”。著書『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)が発売中。Twitterは コチラ

backno.

 

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清田代表/桃山商事

恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆などを通じ、恋愛とジェンダーの問題について考えている。著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)や『大学1年生の歩き方』(左右社/トミヤマユキコさんとの共著)がある。

twitter:@momoyama_radio