【今回のPick upブック】
男たちはなぜ射精のできない“おっパブ”へ行くのか?
清田代表(以下、清田) 今回は、漫画家でライターの田房永子さんが先日出版した『男しか行けない場所に女が行ってきました』という本を取り上げてみたいと思います。
佐藤広報(以下、佐藤) いやあ、マジで恐ろしい本だったね……。
清田 これはかつてエロ本でライターをしていた田房さんが、おっぱいパブやオナニークラブ、ドール専門風俗店など、「男しか行けない場所(≒風俗)」をのぞいてきた見聞記なんだけど、男のクソな部分がこれでもかと描かれている。
佐藤 文字通り「男しか行けない場所」だから、女の人にどう見られてるとか意識すらしたことなかったけど、「うわっ、女性にはこういう風に見えてんのか!」って思ったし、「自分も同じ穴のムジナかも」って、図星すぎて死にたくなる部分も多々あった。
清田 そうだよね。何と言うか、カメラに映る自分の姿を見たときのような、恥ずかしいような気持ち悪いような心地がした。例えばおっぱいパブの話なんかは、男同士で連れ立って風俗に行くときの深層心理を容赦なくえぐり出してるよね……。
※おっぱいパブ(おっパブ)とは:女の子と話をしながらお酒を飲む。10分程度の「サービスタイム」では女の子が男性客の膝の上に対面式でまたがり、丸出しになったおっぱいを揉んだり、触ったり、乳首を舐めたり、キスをしたりする(キスNGの店舗もある)。女の子のパンツ内に客が手を突っ込んだり、客が性器を露出して女の子に触らせたりする行為はNG。
佐藤 私も嫌いじゃないんですが、多分おっパブって、女の人には不思議な空間に映ると思うのよ。おっぱいは揉めても、射精はできないわけで。しかも、友達とか仕事先の人とか、大勢で行くことがほとんどでしょ。
清田 「だとしたら、男たちは何を求めてそこに行くんだろう?」ってね。これに対する田房さんの観察眼が鋭すぎるのよ。ちょっと引用してみます。
〈つまり「おっぱいが揉みたい」わけではなく、男同士のコミュニケーションの場所として機能している。言い換えれば、男は同性とのコミュニケーションを図るためにわざわざ女の体を必要とするということである〉
佐藤 これ、マジでギクッとしたわ! 田房さん、ホント怖いこと言うよなって……。
清田 男には、確かにそういうとこがあるもんね……。キャバクラに行くのも同じようなものだと思うし、男だけで飲んでるときに「誰か女呼べない?」って話になりがちなのも似たような心理ではないかと思った。
佐藤 わかる。要するにさ、男同士って話すことがないんだよ。これは私もそうなので偉そうなことは言えないだけど、男には「他人から興味を持たれたいわりに他人に興味はない」って人が多いじゃん。さらに男って「ケアされる側」で生きてきちゃったから、人の話を聞かないし、聞けない。会話をまわす技術がない。
清田 かといって、積極的に自分の話をするわけでもない。男同士のコミュニケーションって常にうっすら競争意識が働いているから、自分から口火を切る人ってあまりいないよね。みんなまわりの様子をうかがっていて、当たり障りのない会話とか、妙な譲り合いとかが多くなる。それで、そういう状態から逃れるために、女性を必要とするという……。
佐藤 「おっぱいを揉む」という共通の目的があれば男同士で向き合う必要がなくなるし、キャバ嬢がいたり、飲みの場に女性がいてくれると、その人が聞き手や司会役になってくれて、これまた男同士で向き合う必要がなくなる。だから楽なんだよね。男はそれを無意識でやってると思うけど、田房さんはその構造を見抜いた。これはすごいことだと思うわ。
清田 そう考えると、下ネタで盛り上がるのも同じ類かもね。「女の人をコミュニケーションの道具に使ってる」ってことに変わりはないわけで。確かに盛り上がるけど、根底にあるのがそんな心理だとしたら、かなりダサいような気がしてきた……。