はじめまして安田祐輔です。私はこれまで不登校や引きこもりの子どもたちのための学習塾「キズキ共育塾」を運営してきました。また、様々な地域の貧困世帯の子どもたちのための学習支援にも取り組んできました。私が経営するキズキグループのミッションは「何度でもやり直せる社会をつくる」です。
来年、私は新しいチャレンジを始めたいと思います。それは、うつや発達障害が理由で、務めた会社を休んだり辞めたりせざるを得なくなった若者たちのための「ビジネスカレッジ」をつくるという挑戦です。
今回のチャレンジは私自身の忘れられない体験に根ざしています。私は新卒で入社した総合商社に数ヶ月勤務したのちに休職し、そのまま退職することになりました。当時、私はうつ病と診断されており、後に発達障害の診断も受けました。
退職後の生活を思い出すと今でも何とも言えない気持ちになります。当時、私は家での引きこもり生活からなかなか外に出ることができず、二度と社会に出られないのではないか、自分は「失敗者」になってしまったのではないかと自らを責めていました。
同時に、自分にはもっとできるはずだ、こんなところで終わるはずがない、という気持ちも持っていました。しかし、その気持ちが、順調に働いているように見える友人や、メディアに映る他人の生活を覗き見する中で、自分自身の無力を呪うことにもつながっていました。
私はその後、数々の偶然や奇跡のおかげで現在の仕事にいたる起業をし、たくさんの先輩や友人、社員のおかげで何とかやれています。しかし、今でも生来の発達障害とは付き合い続けており、社会の中で働き続けることが当事者の若者にとっていかに難しいことかをよくわかっています。
この問題は私やごく少数の人たちだけの問題ではありません。発達障害や(その二次障害としての)うつ病、適応障害を抱え、働き続けることが難しくなってしまう人は決して少なくないのです。
近年うつ病の患者数がおよそ100万人の規模にまで増加するなか、2014年に実施されたある調査(※)によれば、働いている人の中で過去3年間にメンタルヘルスの不調を経験した人は4人に1人以上(25%以上)と言われています。また、メンタルヘルスの不調から退職にいたった人はそのうちの13.3%にのぼるという結果も出ています。
私は、これまで主に10代の学生の支援をしてきました。それは、過去の10代だった頃の私に必要だった学習塾を作るような取り組みでした。これから私は、キズキは、20代、30代の若者の支援にも取り組んでいきます。「学ぶ」ことのサポートに加えて、「働く」ことのサポートにも取り組んでいきます。
そのために今回、皆さんの力を借りて立ち上げたいのが「キズキビジネスカレッジ(KBC)」です。
KBCの最大の目的は、ネガティブに捉えがちな離職中の時間を、「人生やキャリアを見直すためのポジティブな時間」に変えることです。
自分の経験から、「周りに遅れを取ってしまっている」という感覚が、逆説的に新しい一歩を踏み出すことを難しくしている実感があります。だからこそ、私はむしろ離職中の時間を有意義に活用するきっかけとしてKBCを提案したいのです。
うつ病だから何もできない、発達障害があるから何もできない、そんなことはありません。誰にも得意なことと不得意なことがあり、だからこそもっとも重要なのは「自己理解」と「職場との相性」です。
思い通りにいかなかった過去の出来事を一緒に見つめ直し、冷静に、自責100%でも他責100%でもない分析をすることが、「もう一度働きたい」を実現するうえで無くてはならないプロセスだと信じています。
だからこそ、KBCの本質は以下3つのサポートに凝縮されます。つまり、①自己を理解し、②自分が学ぶべきスキルを選択し、③自分と相性の良い働き方や職場を見つけ出す、ということです。
なお、KBCは「就労移行支援」という枠組みを活用するので、うつ病や発達障害の診断を受けていて離職中の方は、(前年度の収入に応じて)無償またはわずかな金額でKBCを活用することができます(離職中ではない方に対しても、将来的に有償の別枠での利用を可能にしていく予定です)。利用者の募集開始は12月を予定しています。
以下、KBCの3つのサポートについて順に説明していきます。
KBCへの入学後、まず最初に行うのが「キャリアセッション」です。その目的は(1)過去のキャリアの客観的な振り返りを通じて、(2)一人では気づきづらい自らの特性(強み・弱み)を理解し、(3)自分に合った時間割りを組むことです。
また、「自己理解」のサポートは入学時のキャリアセッションだけでなく、その後も様々な形で行っていきます。自分自身を他人に説明するための「自分の取扱説明書」の作成とプレゼンテーションや対話のトレーニング、時間割り設計を越えたより広い視点でのキャリアの短期/長期目標の構築などをサポートしていきます。
KBCの授業で大事にしたいことは「多様性」と「専門性」です。何を学ぶかを狭く決めきって時間割を組むのではなく、プロフェッショナルな講師陣による様々な従業を受ける中で、自分に合ったスキルは何なのか、これから特に集中して伸ばして行くべき能力は何なのかを見極めていただけたらと思っています。
KBCではキズキ内外の専門的な講師陣が、自らの専門性に沿った多様な授業を提供します。以下はKBCで選択可能な授業例です(予定)。
最後に、KBCの就職支援は、既存の障害者就労支援の枠組みにとらわれず、幅広い働き方・働き先の中から自分の特性に合ったゴールを選択することをサポートします。
既存の障害者就労支援の多くは、大企業の障害者雇用枠での就職が一般的です。KBCでももちろん、障害者就労の選択肢も見据えながら、大企業のみならずベンチャー企業も、障害者枠だけでなく一般枠も、そしてフリーランスや起業という選択肢も含めて検討できるよう、幅広く知る機会、実践する機会、そして実際の就職活動に挑戦する機会を提供します。
例えば、「知る」機会としては、外部から様々な職種の人を講師として招致し、職務内容や各職務において必要な能力を知る機会を提供します。また「実践」の機会としては、外部企業へのインターンや、オンラインで外部から業務を受注する実践機会、個人事業主の方に同行してフリーランスとしてのキャリアを模索する機会を提供します。
そして「挑戦」の機会としては、民間人材会社やハローワークとの連携、KBC独自の受入企業等(ベンチャーやNPOも含む)の開拓、またフリーランス志望の方向けの創業支援を通じて、利用者のキャリア選択をサポートします。
KBCが大切にしたいのは「変えられるところは変えてみて、変えられないところは別の方法で工夫する」という考え方です。自分自身を変えることで相手や環境に合わせられるところと、どうしても変えるのが難しいので相手に配慮を求めるべきところ、その二つをきちんと分けて整理することが大切だと考えています。
そうした考え方に立って、KBCではそれぞれに合った働き先・働き方を見つけるサポートをするだけでなく、入社後についても、継続的面談や、任意研修(専門スキル、時間管理や忘れ物対策等「ライフハック」となるノウハウ、他)の提供を通じて、利用者の方の定着支援をより効果的に行っていきます。
はじめまして、林田絵美と申します。私は、この事業を立ち上げるために、キズキに転職しました。転職前は、新卒で入社したPwCあらた有限責任監査法人で公認会計士として3年ほど働いていました。
実は自分もADHD当事者です。子供時代からハプニングは多く、社会人になって仕事で支障を来して以降は特に自分を責める感情が深化し、社会人1年目が過ぎた頃にADHDの診断を受けました。
現在は薬(コンサータ)に助けられ、生活も仕事ぶりも前よりマシになりました。また今まで自分のダメっぷりを自己嫌悪感で捉えていましたが、より理屈で捉えて合理的に対策できる様になった点は、診断前との大きな違いだと思います。
そもそも公認会計士という職業も、自分は皆と同じやり方だと経済的自立が困難になるに違いないから国家資格を取ろう、という発想が発端でした。専門分野を持っていた事ですごく救われたし、やりがいや面白さも感じているので、結果的に当時の判断は間違い無かったと感じていますが、強いて言えば、公認会計士の仕事は慎重さや正確性が欠かせない場面が非常に多く、自分の注意欠陥特性を考えると「自分は最も自分に適性がない職業を選んでしまったのではないか」と悩んだ時期もあります。
資格取得を決めた高校3年生の当時は、適性というものを重視していませんでしたが、自分の能力と仕事で求められる能力を理解し、相性を考えることが、長期的にみていかに大事かをこの三年間で学びました。
PwCも大好きでしたが、それでもあえてキズキに来たのは上記の原体験があるからです。他の当事者と話す過程でも、このような事象は私個人の悩みの域を超えていると感じており、まだ満たされていないニーズを満たすために、KBCを実現したいと考えています。
工藤啓さん(認定NPO法人育て上げネット 理事長)
「ご自身の経験や悩みから、同じ想いを持つ若者のために作られた『場』は、安田さんの優しさと想いで溢れています。『働きたい』を実現されたい若者の中には『ファイナンス』『プログラミング』『マーケティング』を学ぶ就労移行支援事業所の存在を待っていたひとがいるのではないでしょうか。このクラウドファンディングは、安田さんだけでなく、参加したみんなのカレッジとして若者の希望になるはずです。心から応援します。」
赤石千衣子さん(NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長)
「不利な育ちや、うつや発達障害、虐待歴やいじめなどで対人関係がむずかしく、社会の中で居場所がないまま、つらい思いをしている子どもたち、若者がいます。そんな若者は、ひとり親の子どもたちにもいますし、そのほかの家庭の子どもたちにもいます。
でも、わたしたちがていねいに付き合っていくうちに、なにかのチャンスが活かせて粘る力を発揮し行動できるようになった若者も見てきました。障害の受容がむずかしい。既存の就労支援の枠に入れない若者もたくさんいます。
今回のキズキは、既存の障害者就労支援の枠組みにとらわれず、プログラミングなど専門性を持ちながら幅広い働き方・働き先の中から自分の特性に合ったゴールを選択することをサポートするそうです。
専門性とちょっとの変人性をもって社会で生きられるなら、この世の中、ほんとうに捨てたもんじゃない。キズキビジネスカレッジに期待しています。」
小澤いぶきさん(児童精神科医)
「誰もがもっているかもしれない弱さや痛みと、だからこそ生まれる優しさをなかったことにしない安田さんの想像力から生まれるチャレンジは、いつも優しさに溢れています。
今回のキズキさんのチャレンジは、学校をつかう人と共に既存の『働く』だけに捉われない、『自分にとってのプロセス』を紡いでいくチャレンジでもあります。
新たな働くプロセスを通して生まれる物語は、『一人一人が尊重されるプロセス』という道を社会につくることにも繋がっていきそうで、心から応援しています。」
皆さまからご支援いただいた資金は、KBCの立ち上げに必要な初期の物件費(敷金・礼金・仲介手数料・保証料など)および初期の人件費や水道光熱費等として大切に活用させていただきます。
うつや発達障害などを理由に離職せざるを得なかった若者の「もう一度働きたい」「もう一度チャレンジしたい」という気持ちに寄り添った事業をつくります。
誰もが何度でもやり直せる、自尊心をもって新しい一歩を踏み出すことができる、そんな社会をつくるために、ぜひ皆さまに「キズキビジネスカレッジ」の最初の一歩を応援いただけたら嬉しいです。いただいたお金は必ず無駄にしません。よろしくお願いいたします!
キズキビジネスカレッジ 安田祐輔/林田絵美
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