「監視社会」の名残りの「同調圧力」
黒田さんは2008年、韓国・慶尚南道の泗川市に旧日本軍の太平洋戦争犠牲者の慰霊碑建立を目指し、やっとのことで実現にたどり着いた。しかし、除幕式の前日に市から突然式典の中止を求められたのだ。その後、慰霊碑も破壊されてしまった。
「当時の朝鮮人日本兵は日本の戦争に協力した親日派だ」と主張する反日団体の圧力があったためだった。
「市は親日のレッテルを張られるわけにはいかなかったのでしょう。慰霊碑も市に壊されてしまいました。日本人の私としてはまさか行政に裏切られるとは思ってもみませんでした。しかし、そういうことがままあるのが韓国なんです」
さらに目に見えない「同調圧力」が拍車をかける。
「その『同調圧力』が生まれた原因を私はこう考えています。朴正煕(パク・チョンヒ62〜79大統領)までは軍事政権でした。その当時は、北に対して『打倒共産主義』を掲げていましたから、国民に対する監視がすごかった。だから、国民が監視されていた時代の記憶が残っている世の中と言ったらいいのかな。私たちくらいの世代だったら、家に盗聴器が仕掛けられているかもしれない、と真面目に思ってしまう。で、電車に乗ると『スパイ申告』のポスターがある。『怪しい人を見たら申告しましょう』と伝えてるんですね。だから、『監視社会』の名残りとして『同調圧力』が強くなってしまった。
彼らの中ではコロナ感染のようなことがあれば、追跡調査してこの人はどこに立ち寄ったかすぐに調べられる。人権やプライバシーが守られないような監視社会なんです。本当は心の中では『日本の言ってることは正しい』と思っていたとしても、社会的にそれを言うと恐ろしいことになる。実際それを言って撲殺された老人もいるんです。つまり反日は『伝家の宝刀』。これに逆らえば韓国社会では抹殺されてしまう。
ようするに心でどう思っていようが、そのことを自分が顔出しして語れないと言う国家なんです」