Kei, Ph.D.

Kei, Ph.D. (工学博士)と申します。専門は有機化学です。X (Twitter…

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Kei, Ph.D. (工学博士)と申します。専門は有機化学です。X (Twitter)で書ききれない事を書くためにnoteを始めました。化学に関する内容を中心に、メンタルヘルスやその他思うことについても書いていこうと思います。化学の内容は一般~大学生向けを紹介しようと思います。

最近の記事

VRChatを始めた流れ

しばらく前にX(Twitter)でVRChatを始めた流れを紹介するタグが話題になりました。私はVRChatもやっています。以下にVRChatを始めた流れを紹介します。 新型コロナが流行り始めた。オンラインの飲み会をリアルの友人とした時にVRChatを勧められた。当時は遊び方が分からず、飲み会の時に友人と1回だけ遊んで休眠。 ↓ うつ病になり、ほとんど寝たきりになってしまい外出ができなくなる。 ↓ 症状が落ち着き始めた時に、VRChatなら外出しなくても人と会えるかもしれな

    • ほうれん草とシュウ酸塩

      緑黄色野菜として知られるほうれん草。茹でてサラダやおひたし、さらにはカレー(サグカレー)まで様々な料理に使われています。ところで、なぜほうれん草は生で食べられないのでしょう?よく言われるのが、アクが強いので食べられないということです。このアクにはどんな成分が含まれるのでしょうか?(生でも食べられるサラダ用ほうれん草という品種も出回っているようです。) ほうれん草のアクの成分は、シュウ酸(図1左)というカルボン酸のナトリウム塩または、カリウム塩である、シュウ酸ナトリウム(図1

      • かっこいい名前(?)の単位"カイザー"(cm¯¹)

        長さの単位であるcm(センチメートル)。m(メートル)に接頭語のc(センチ)を付けてmの100分の1の長さを表したものです。ところで、日常では見かけない単位ですが、cmの逆数(cm¯¹)という単位があります。逆数とは元の数に掛けると1になる数のことです。例えば、3の逆数は1/3です。 その単位、cm¯¹はカイザー(kayser)と呼ばれます。なんだか少しかっこいいですね。ドイツの科学者ハインリヒ・カイザー(Heinrich Kayser)の名前が由来¹⁾のようです(ちなみに

        • ユズの香り成分

          もうすぐ冬至ですね。ユズを湯舟に浮かべてお風呂に入るという方もおられるかもしれません。ユズ風呂は体を温める効果¹⁾があると言われています。また、ユズに含まれる香り成分がお湯の熱で揮発しやすくなるため、香りがより強く感じられるようになり、リラックス効果が高まるのではないかと思います。ユズは香り高い柑橘類であり、湯船に入れるほかにもハチミツ漬けや砂糖漬け、また、漬物にも香り付けとして使われることがあります。さらに、ユズの精油も販売されており、アロマテラピーにも活用されています。そ

        VRChatを始めた流れ

          エタノール(CH₃CH₂OH)

          「この世には2種類の○○しかいない。●●か、●●以外か。」という言い回しがあります。アルコールにもこの言い回しを当てはめると、「この世には2種類のアルコールしかいない。飲めるアルコールか、飲めるアルコール以外か。」ということになるのかもしれません。 一般的にアルコールといえばエタノール(CH₃CH₂OH, 図1)や、それが含まれる酒類のことを指しますが、化学でのアルコールはヒドロキシ基(-OH)を持つ有機化合物のことを指します。 よって、メタノール(CH₃OH, 図2左)

          エタノール(CH₃CH₂OH)

          銀杏の臭いとカルボン酸

          紅葉の季節も終わりに近づいてきました。イチョウの木の下に広がる黄色い絨毯に目を奪われますが、銀杏の臭いが漂ってくるとその喜びも束の間、一気に興が覚めてしまう方もいるのではないでしょうか。多くの方が不快に感じるあの臭いの元は一体どんな物質なのでしょうか?それは酪酸(図1, 左)とへプタン酸(図1, 右)という物質¹⁾になります。これらはカルボン酸と総称される物質です。 分子内にカルボキシル基(-COOH)を持つ化合物をカルボン酸といいます。身近なカルボン酸の例を挙げると、お酢

          銀杏の臭いとカルボン酸

          良い匂いのアルデヒド

          前回の投稿ではカメムシの臭い成分がtrans-2-ヘキセナール(図1)というアルデヒドであるというお話をしました。もしかすると、アルデヒドは臭いものというイメージになってしまったかもしれません。今回はアルデヒドの名誉回復のために良い匂いのアルデヒドたちを紹介します。 シトロネラール(図2)はレモンの香り¹⁾を持つアルデヒドで、レモングラスの仲間であるシトロネラやレモンユーカリに含まれる香りの成分²⁾の1つです。レモンユーカリの精油は、私がアロマテラピーに役立てているお気に入

          良い匂いのアルデヒド

          カメムシの臭いとパクチーの香り

          今年はカメムシが大発生している地域がありました。今は落ち着いているのでしょうか?カメムシといえば部屋に入ってきたのを追い出そうとして臭いを出されてしまった経験がある人は多いと思います。ところで、カメムシの臭いの元になる物質は何でしょうか?それは、trans-2-ヘキセナール(図1)¹⁾です。 trans-2-ヘキセナールは青葉アルデヒドとも呼ばれるアルデヒドの一種で、カメムシ以外には、キュウリやキャベツなどの野菜にも含まれており、植物の持つ青臭さの元になっています。また、イ

          カメムシの臭いとパクチーの香り

          エーテルとは何か?

          時折ファンタジー作品などに名前が登場するエーテル。実は古代ギリシャの時代から存在する単語であり、科学がまだ哲学から分化していない時代の名残を感じさせてくれます。当初は形而上学的な用語でしたが、現代の化学でいわれるエーテルとはどのようなものなのでしょうか?(ちなみに英語でエーテルは“ether”と綴り、”イーサー”に近い発音です。日本語と読み方が大きく違うので戸惑う単語の1つです。) エーテルとは酸素原子(O)に炭素原子(C)2つが結合した構造(エーテル結合, -C-O-C-

          エーテルとは何か?

          研究室選びの基準

          学部3年生は卒業研究のためにそろそろ来年度から在籍する研究室を決める時期かもしれません。研究室を選ぶ条件は自身が取り組みたい分野や、指導教員、コアタイムの長さなど人それぞれだと思います。私が研究室を決めた理由は、取り組みたい分野である有機化学であるかに加えて、学生の指導に熱心な先生かどうかが大きかったと思います。せっかく授業料を払って大学に通い¹⁾、多くの時間を使って研究をするわけなので、勉学と研究に励める雰囲気の研究室が良いと思いました。家族と過ごす時間よりも研究室で過ごす

          研究室選びの基準

          蛍石とフッ素

          蛍石(フローライト)は見た目が美しく、コレクションとしても人気がある鉱物の1つです。蛍石はUVライト(ブラックライト, 紫外線ランプ)の照射や、加熱により発光(蛍光)するという性質があります¹⁾。(美品ではないですが、私も1つ持っています。UVライトで光らせると楽しいです。) 蛍石の主成分はフッ化カルシウム(CaF₂)であり、これに硫酸(H₂SO₄)を反応させることでフッ化水素(HF)を得ることができます。これには化学の授業で習う弱酸の遊離の性質が利用されています。このフッ

          蛍石とフッ素

          クエン酸

          日頃運動をしないのに急に運動すると起こる筋肉痛。それが数日後にやってくるという話題で盛り上がることもしばしばあります。最近、ちょっとした登山をする機会があり、筋肉痛の予防と回復にはクエン酸(図1)が良いと教わってきました。ところで、クエン酸の「クエン」とは何でしょうか?調べてみると柑橘類の一種に枸櫞(クエン)¹⁾というものがあるようです。 英語にすると分かりやすくなりますが、クエン酸はcitric acidです。柑橘類(citrus)と関係がありそうな名前ですね。他にもシト

          クエン酸

          大麻グミと危険ドラッグ

          報道されているように、各地で健康被害が発生した大麻グミの成分であるHHCH(ヘキサヒドロカンナビノール, 図1右)が12月2日から規制されました。既にHHCHを含む製品の製造、輸入、販売、使用などは禁止¹⁾になっています。大麻の成分(THC, テトラヒドロカンナビノール, 図1左)そのものは既に違法なので、当時は未規制であった構造と作用が大麻に似ている化合物を混ぜた食品が売られていたのです。こうした化合物の構造をわずかに変えて規制をかいくぐる手法は約10年前にも問題になった危

          大麻グミと危険ドラッグ

          将来使わない教科は要らないのか?

          教育に関して度々話題になることの1つに、「学校で教える教科や科目のうち将来使いそうにないものは要らないのではないか」というものがあります。確かに将来使いそうなものだけを勉強するのは一見して合理的なように思われます。しかし、それは組み立て途中のプラモデルのパーツを捨ててしまうようなものです。 残念ながら将来のことを正確に予測できる人はいません。なので、役立つものだけを選択して学ぶというのは難しいと思います。将来どこで何がどのように役に立つかもわかりません。また、年齢と共に興味

          将来使わない教科は要らないのか?

          硫酸(H₂SO₄)

          最も有名な酸と言えば何でしょうか?乳酸、クエン酸、塩酸と様々な候補が挙がりますが、おそらく硫酸(H₂SO₄)はその候補に入るでしょう。硫酸は分子内に硫黄を含む酸の1つです。何でも溶かすというイメージを持たれているかもしれない硫酸ですが、溶かせないものもあります。金、ガラスや一部のプラスチック¹⁾などは硫酸で溶かすことができません。そんな硫酸ですが、実は身近なものに使われています。車のバッテリー(鉛蓄電池)の液は硫酸です。 硫酸は濃度にかかわらず取り扱いに注意するべき物質です

          硫酸(H₂SO₄)

          身近な硫黄化合物

          温泉地を旅行した時にどこからか腐った卵のような臭気が漂ってきたといった体験があるかもしれません。それはよく硫黄(S)の臭いだと言われますが本当なのでしょうか?答えを言ってしまうと、それは硫黄化合物の一種である硫化水素(H₂S)の臭いであり、硫黄そのものの臭いではありません。黄色の固体で存在する硫黄は無臭です。 硫黄単体では無臭ですが、硫黄化合物は独特の臭気を持つ物が多いことが知られています。硫化水素以外にも、ガスの着臭剤の一種¹⁾であるt-ブチルチオール(図1)、タマネギや

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