ビタミンB1不足のせい
ここまで、疲労感と疲労の違いを見てきた。ここからは疲労を減らす方法を考えていこう。
疲れを和らげてくれるものといって思いつくのは、栄養ドリンクなどのドリンク剤である。
だが、飲みすぎると恐ろしいことが起こる。
「ドリンク剤を飲むと炎症性サイトカインが減少するため、たしかに疲労感は減少します。しかし、それによって脳は『まだ疲れていない』と解釈し、身体を休ませるシグナルを出さなくなってしまう。このため、身体が無理を続けて、組織の障害や突然死を招いてしまう可能性があるのです。エナジードリンクを飲むことを『命の前借り』などと表現する人たちがいますが、うまい言い方をするなと感心します」(近藤氏)
ドリンク剤は気づかぬうちに、命に関わるような過度の疲労を招いてしまうのだ。
この例に限らず、一般に「疲労に効く」とされる食品の多くは、疲労ではなく疲労感を抑えるものばかりだという。
では、どうすれば疲労そのものを減らすことができるのか?
近藤氏が研究したところ、疲労の回復にはビタミンB1の継続的摂取が効果的だということが明らかになった。
ビタミンB1が豊富に含まれる食材としては、豚肉の赤身やうなぎ、たらこ、全粒粉パン、ごま、えんどう豆などが挙げられる。
「飲酒によってビタミンB1が大量に消費されてしまうので、飲酒量が多い人ほどビタミンB1不足になりやすいことがわかっています。日本人の約3分の1がビタミンB1不足であるという報告もあります」(近藤氏)
後編記事『「過剰なトレーニング」はうつ病になる?…疲労を感じやすい人がやってしまっている「ダメな習慣」』へ続く。
「週刊現代」2023年12月16日号より