人が「疲れる」のは「ウイルス」が原因だった…「お酒が好きな人」ほど注意が必要なワケ
どこへ行っても「ああ、疲れた……」という嘆きが聞こえてくる日本は、一億総疲労社会だ。だが、そんな日本だからこそ疲労の研究は深化し、そのメカニズムを解明する、常識を覆す新説が登場した。
誰もが持つウイルスのせい
「最も愚かなウイルスでさえ、最も優秀な学者よりも頭がいい」
ウイルス研究者の世界にはこんな格言があるという。では、そんなに賢いウイルスならば、疲労の研究にも利用できないものか?
そう考えて、全く新しい角度から、人が疲れるメカニズムを研究し、ノーベル賞級の新発見をした学者がいる。今月、『疲労とはなにか』(講談社ブルーバックス)を刊行する、東京慈恵会医科大学ウイルス学講座教授の近藤一博氏だ。
「筋肉の疲労は、筋力の低下が測定できれば良いので、定量化が簡単です。しかし、仕事や運動による疲労はどうすれば正しく測定できるのか?
われわれの研究チームは、疲れると口唇ヘルペスが出てくるという現象を利用できることに気づいたのです」
ヒトに感染するヘルペスウイルスの中で、6番目に発見されたHHV-6に近藤氏は注目した。
HHV-6はほぼ100%の人が幼い頃に感染し、その後、身体に潜伏する。残業する程度の疲労でも、新しい宿主を探そうと再活性化し唾液中に出てくるので、その量で疲労の度合いが計測できるというのだ。
それだけではない。究極的な疲労とされるうつ病もまた、そのHHV-6に由来するのではないかというのである。
疲労の原因はウイルス―そんな信じがたい新発見について述べる前に、そもそも「疲労とは何か?」から考えていくことにしよう。
今年、日本人約10万人を対象に実施した調査(日本リカバリー協会)によると、実に78・5%の人が「疲れている」という。「過労死」という単語が英語の辞書にも記載されているように、疲労は日本の国民病なのだ。
疲労のメカニズムとそれを減らす方法を知れば、あなたも楽に生きられるかもしれない。