アンドリュー英王子の証言求める方針 死亡米富豪の人身取引裁判で弁護士

Virginia Giuffre and Prince Andrew

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ヴァージニア・ジュフリーさん(左)は17歳の時にアンドリュー英王子(右)との性行為を強要されたと主張するが、王子は否定している

性的人身取引で起訴され勾留中に急死した米富豪ジェフリー・エプスティーン被告による被害を訴える女性5人の弁護士が、アンドリュー英王子の証言を求める方針だと明らかにした。これを伝えたBBC番組はほかにも、王子のこれまでの主張を覆すと思われる複数の新情報を伝えた。王子は同被告と交流があり、それに伴い未成年女性と性的関係をもったのではないかと疑惑が取りざたされている。

2日夜放送のBBC調査報道番組「パノラマ」で、故エプスティーン被告を訴えている女性5人を代表するデイヴィッド・ボイス弁護士が、5人全員の裁判でヨーク公爵アンドリュー王子に対して召喚状を送り、証言を避けられない状態にするつもりだと話した。

弁護士によると、エプスティーン被告によって性的に取引されたと訴えている女性5人は、同被告の自宅で女性たちが客をマッサージさせられる様子を、アンドリュー王子が目撃していたと話している。

(編集部注・ Jeffrey Epstein被告の姓は、日本語メディアで「エプスタイン」と表記されることもありますが、BBCでは当人を知る関係者たちの発音に近い「エプスティーン」と表記しています)

ボイス弁護士は番組で、「当時の様子をどう説明するのか、私たちはアンドリュー王子から直接聞きたいと希望してきた。(エプスティーン宅を)頻繁に訪れていたので。聞き取り調査に応じるべきだ。何を見たのか話すべきだ」と述べた。

アンドリュー王子はこれまで、エプスティーン邸で性的斡旋などの問題行動が行われていたとは知らなかったと発言している。

弁護士によると、法廷での証言を義務づける召喚状はすでに原告5人分が用意されており、王子がアメリカ国内に入った時点で裁判長が承認すれば、王子は出廷しなくてはならなくなる。出廷した上で、証言を拒否することはできる。

「パノラマ」はさらに、アンドリュー王子が当時未成年の女性と性交したという疑惑について、王子がBBCに話した内容に矛盾する新情報をいくつか伝えた。

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問題の写真について新情報

Prince Andrew with Virginia Giuffre, and Ghislaine Maxwell standing behind, in early 2001 (said to have been taken at Maxwell’s London home)

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2001年にロンドンでアンドリュー王子と写真に収まったジュフリーさん。ギレイン・マックスウェルさん所有のこの家の浴室で暴行されたと話している。

BBC「パノラマ」は、アンドリュー王子が当時17歳のヴァージニア・ロバーツ(現ジュフリー)さんと一緒に写った、今や問題の写真について新事実を探り当てた。

エプスティーン被告を訴える原告の1人になっているジュフリーさんは、17歳だった2001年3月当時、ロンドンで王子と夕食をとり、ナイトクラブで一緒に踊ったと主張している。ナイトクラブ「トランプ(Tramp)」には、エプスティーン被告と当時の恋人ギレイン・マックスウェルさんも同行し、そこからマックスウェルさんの自宅に向かった後、王子と写真を撮り、その後に性行為をしたという。

ジュフリーさんは「パノラマ」に対して、マックスウェルさん宅へ向かう車内で「ギレインから、ジェフリーにしていることをアンドリューにもしなくてはならないと言われ、本当に気持ち悪くなった」と話した。

マックスウェルさん宅に着くと、家族に見せたいからと王子に一緒の写真を撮ってもらい、それからギレインさんの指示に従い王子をもてなしたとジュフリーさんは述べた。

「まずはお風呂から始って、そこから寝室に移って、あまり時間はかからなかった。やったことの全ては」、「本当に気持ち悪かった。意地悪とかそういうのではなかったけれども。(王子は)立ち上がってありがとうと言ってから、歩いて出て行った」などと、ジュフリーさんは話した。

「写真は本物」とカメラマン

アンドリュー王子は11月半ばにBBCの単独インタビューに応じ、ジュフリーさんと会った覚えはなく、問題の写真を撮った記憶もないと繰り返し言明した。

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アンドリュー英王子、未成年女性との性行為を否定 BBC取材

2人の写真は2011年に英タブロイド紙メイル・オン・サンデーが最初に公表したもの。同紙は当時、ジュフリーさんを探り当て、独占インタビューに16万ドルを支払っている。

この写真について王室関係者は今年になってから、偽物説を口にし始めた。王子自身はBBC番組「ニュースナイト」のインタビューで、偽物だとは断定しなかったものの、この写真の真贋について「調査をした」が「写真の写真の写真」なので偽物だと立証できなかったと話した。

王子は、ジュフリーさんが自分と会ったと主張している2001年3月の夜、自分はロンドン南郊にあるピザのチェーン店に娘を連れていき、その後は自宅で過ごしたと説明。写真の家の上階に上がったことがあるか記憶にないし、自分はロンドンにいる時には写真でのような服装はしないのが通常だと指摘。さらに「あの手が私の手なのか、確証はない」と述べた。

一方でジュフリーさんは「パノラマ」に対して、写真は本物で、2011年の時点でオリジナルを米連邦捜査局(FBI)に提出したと話した。

「馬鹿げた言い訳ばかりで、もう世界中が飽き飽きしていると思う。本物の写真なので。捜査のためにFBIに渡した、本物です。現像された日付が裏に印字されている」

「パノラマ」は2011年に最初にこの写真を接写したフリーランス・カメラマンのマイケル・トマス氏に接触した。

トマス氏は、写真は本物だと確信していると番組に話した。エプスティーン被告やマックスウェルさんに同行した旅行中のたくさんの写真の中から、トマス氏が見つけ出したものだからという。

「複雑な話は何もなく、チェーンの薬局で普通に現像した5x7の写真に見えた。10代の子供にありがちな普通のスナップ写真だった」

番組はさらに、ジュフリーさんが現像されたオリジナルの写真をFBIに提出したという主張を裏づける証拠も発見した。

一部が黒塗りされた裁判資料によると、ジュフリーさんは2011年にFBIに写真20枚を提出し、FBIはそれぞれの裏表をスキャンしたという。しかし、公開されている裁判資料では写真は19枚しかない。

アンドリュー王子の写真は王子のプライバシーを保護するため、公開資料から削除されたのだと「パノラマ」は報じている。

王子の旧友が故被告に協力か

Prince Andrew and Ghislaine Maxwell attended Ascot in June 2000.

画像提供, Tim Graham

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2000年6月にアスコット競馬を訪れたアンドリュー王子とギレイン・マックスウェルさん

エプスティーン被告による被害を訴える別の原告、サラ・ランソムさんは「パノラマ」に対して、アンドリュー王子の旧友で故被告の恋人でもあったマックスウェルさんが、エプスティーン被告の犯行に全面協力していたと話した。

「ギレインが女の子たちを管理していた。まるでマダムみたいに」

「性的人身取引の仕組みを動かす肝心要が彼女で、自分の島にいるジェフリーをしょっちゅう訪ねては、女の子たちがちゃんとやるべきことをやっているか確認していた」

「ジェフリーの好みを知っていたので。ジェフリーの価値を維持するために協力していた。女の子たちを脅すことで。なのでこれはまったくの共同事業だった」

BBCはマックスウェルさんにコメントを求めようとしたが、連絡がつかなかった。過去には、エプスティーン被告による虐待行動について何も知らず、いっさい関与していないと主張してる。

マックスウェルさんに対する性的虐待の訴えは2009年の裁判資料で初めて公になったが、アンドリュー王子は交友を続けている。

「パノラマ」が入手した2015年のメールでは、ジュフリー氏による告発にどう対処すべきか、アンドリュー王子がマックスウェルさんに協力を求めている様子さえうかがえる。ジュフリーさんは当時、旧姓の「ヴァージニア・ロバーツ」と呼ばれている。

メールで王子はマックスウェルさんに対して、「いつ話ができるか教えて。ヴァージニア・ロバーツについていくつか具体的な質問をしたい」と書いている。

これに対してマックスウェルさんは、「多少のことを知っているので、お手すきの時に電話して」と返信している。

「パノラマ」の詳細な問い合わせにアンドリュー王子は回答しなかったものの、人間の搾取はいかなる形でも唾棄(だき)すべきことで、自分は決してそのような真似を容認したり参加したり奨励したりしないと声明を出した。

王室は、「ヨーク公爵はジェフリー・エプスティーンとの不見識な交際をはっきりと後悔している。エプスティーンの自殺によって、数多くの疑問が疑問として残った。特に被害者たちにとって。被害に遭い、何らかの区切りを求める人たちに、公爵は深く同情している。いずれその人たちも人生を立て直すことができるよう、公爵は願っている。適切な法執行機関による捜査について、公爵は必要となれば手伝う用意がある」とコメントしている。

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<解説> 王子の発言と矛盾――ジョニー・ダイモンドBBC王室担当編集委員

エプスティーン被告とその客人たちがマッサージを受ける様子をアンドリュー王子が目撃していた――。女性5人がこう主張し、王子がアメリカに入国すれば出廷させられる召喚状が用意されたというのは、王子にとって色々な意味でよくない展開だ。

王子はこれまで、自分は各地のエプスティーン邸で疑わしい行為が行われているのを目撃していないし、疑ったこともないと発言している。女性たちの主張は、これに真っ向から反対するものだ。

出廷と宣誓証言を義務づける召喚状が用意されるとなれば、王子が訪米する可能性はほとんどなくなる。これは実に異様な事態だ。女王の次男が、今や実質的にアメリカに行くことができないのだ。宣誓証言をしようというのならともかく。

出廷した上で召喚状の要請に反論し、証言を拒否することは法律上はできる。しかし、そんなことをすれば王子がアメリカの司法の仕組みに巻き込まれていくことになり、リスクは巨大だ。

数々の新情報やジュフリーさんの強力なインタビューを伝えた今週の「パノラマ」によって、アンドリュー王子とエプスティーン被告との関係、そして王子による数々の否定発言が、あらためて注目されることになった。

この問題の幕引きはまだない。むしろ、問題はどんどん膨れ上がっている。

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