少女ら虐待疑惑の米富豪、MIT機関と日本人所長に出資 研究者ら抗議の辞任
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【8月22日 AFP】米名門マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究機関MITメディアラボ(MIT Media Lab)と所長の伊藤穣一(Joi Ito)教授が、多数の未成年の少女を性的目的で人身取引したとして米国で起訴され勾留中に自殺した米富豪ジェフリー・エプスタイン(Jeffrey Epstein)被告から、資金援助を受けていたことが発覚した。研究者らが抗議の辞任をする事態となっている。
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メディアラボ傘下のMITシビックメディアセンター(Center for Civic Media)所長のイーサン・ザッカーマン(Ethan Zuckerman)准教授は、2019~20年度の学期終了と共に辞任すると表明した。
ザッカーマン氏はブログプラットフォーム「ミディアム(Medium)」への投稿で、「私の論理はシンプルだ。私のチームの研究の主眼は、社会正義や、社会の主流から置き去りにされた人々や考え方を包摂することだ」と説明。「エプスタインと協力し、またその関係を隠蔽(いんぺい)したことは、こうした研究の価値観をあからさまに損なうものだ。そのような場所で、澄ました顔でこれらの研究に取り組むのは難しい」と述べた。
さらにザッカーマン氏は、メディアラボが科学界におけるセクシュアルハラスメント撲滅に貢献した人に授与する「不服従賞(Disobedience Prize)」の2018年の受賞者3人に謝罪したことも明かした。
「メディアラボ設立時からエプスタインが深く関与していた事実によって、私が今後もそこで研究を続けることは不可能となった」とザッカーマン氏は述べている。
メディアラボでは、女性や社会的弱者をインターネット上で虐待やハラスメントから保護する研究プロジェクトを主導してきたJ・ネイサン・マティアス(J. Nathan Matias)客員研究員も、伊藤氏とエプスタイン被告との関係が明るみに出たことを理由に辞意を表明している。
伊藤所長は今月になって、公開書簡でエプスタイン被告との関係を謝罪。2013年にエプスタイン被告と知り合い、被告の自宅を訪れたことや、メディアラボと伊藤氏個人の投資ファンドに資金援助を受けたことを認めた一方、被告との交流の中で「起訴罪状にある恐ろしい行為に関わったことはおろか、本人が話しているのを聞いたことも、何らかの証拠を見たことも一切ない」と言明した。
エプスタイン被告は伊藤氏と知り合う5年前の2008年、少女たちに金銭を支払って性的なマッサージをさせたとして米フロリダ州で有罪判決を受けている。
学界では、ハーバード大学(Harvard University)のジョージ・チャーチ(George Church)教授(遺伝学)ら複数の科学者が、エプスタイン被告との関係を謝罪している。被告は生前、自身を「科学界のフィランソロピスト(篤志家)」と称し、著名な科学者らと交友があった。
米メディアが報じた裁判所記録によると、性的搾取の被害者の一人とされるバージニア・ジュフリー(Virginia Giuffre)さん(36)は、10代の時にエプスタイン被告の自宅でメディアラボの共同創設者マービン・ミンスキー(Marvin Minsky)氏とのセックスを強要されたと証言している。人工知能(AI)研究の一人者だったミンスキー氏は、2016年に88歳で死去している。(c)AFP