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『GTA6』の物語を『GTA:Vice City』と比べて予想したら、最悪なくらい悲惨な物語が見えてきた

限られた情報から推測すると、そこからは私たちに馴染み深い悲惨さが想像され……。

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彼女の明日はあるのか? 『GTAV』から10年。ついに続編となる『GTA6』のトレイラーがRockstar Gamesより公開されました。トレイラーでは久しぶりのバイスシティの姿がお披露目されたほか、人物設定が確立されたキャラクターとしてはシリーズ初の女性主人公である、ルシアの姿が断片的に映されているのも確認できました。

今回、公式に発表されたのはこれだけであり、本編がどんな内容なのかを想像するにはまだまだ具体的な情報が足りていないのは確かでしょう。ただ、未来を予想するとき、まず過去を探ることから見えてくるものもあります。

我々は現在公開されているさまざまな展望に加え、『Grand Theft Auto: Vice City』(以下、Vice City)という最大の過去を振り返ることで、『GTA6』の物語を予想できるのではないでしょうか

“俺たちに明日はない”

トレイラーに映るルシアからは、彼氏と思われる男性と過ごす時間、そしてふたりで強盗に向かうシーンが見受けられます。こうしたシーンからすでにTHE GAMERなど英語圏メディアでは、「ボニーとクライドのようなラブストーリーが中心となることを示唆しており、過去の『GTA』シリーズと一線を画す」という評がいくつか挙がっています。

Game*Sparkでも取り上げた、ジャーナリストのジェイソン・シュライアー氏が昨年ブルームバーグに寄稿した『GTA6』の展望も、確信に変わったと見ていいでしょう。


それにしても――改めて “ボニーとクライド”とは何でしょうか?これは1930年代に、強盗と殺人を繰り返した実在したカップルです。これだけの情報なら、最悪の犯罪者として唾棄すべき人間でしょう。ところが当時のアメリカでふたりは、人々によって英雄視されたそうです。

なぜなら時代は世界恐慌の真っ只中。失業者があふれかえり、人々の希望が見えないなかで敵視されたのは銀行と警察だと言われています。そこで強盗を繰り返し、警官を殺すボニーとクライドのニュースは、もはや守るべき社会も規範も見えない時代の人々が支持した、と言われています。

だが警官殺しも銀行強盗も永遠に続くことはなく、2人は最後、車に乗車中、待ち伏せした警察が発射した100発を超える弾丸を浴びて死亡。銃弾で穴だらけになった車はしばらくのあいだ見世物とされたそうです。

それから数十年。ボニーとクライドの2人の伝説が再び目を覚まします。それが1967年の映画「俺たちに明日はない」。かの60年代は今までの社会から逸脱しようとするカウンターカルチャーが活況を呈していた時代でした。ベトナム戦争反対運動やブラック・パワー・ムーブメントといった社会運動が吹き荒れる時代を、ロックなどのポピュラー音楽が彩った頃です。そんなさなか、犯罪者カップルの伝説は時を経て、社会への反抗のアイコンとして再び人々に支持されたわけです。

すると “ボニーとクライドのようなストーリー”と目されている『GTA6』は、これまでもストーリー作りで映画をモデルとしてきたRockstar Gamesらしく「俺たちに明日はない」のような形になるのでしょうか? これが単純にそうは言えないだろうと思われます。さあ今いちど、今から20年前に生み出された過去の街、『Vice city』におけるトニーの物語を思い出しましょう……。

“スカーフェイス” “カリートの道”

時は1986年。トミー・ベルセッティはマフィア「フォレッリ・ファミリー」の一員として活動し、ファミリーのために刑務所に服役するまで忠誠を誓っていました。ところがボスは冷たく、トニーの出所後に迎え入れることはなく、バイスシティへと遠ざけるのでした。トミーは海の見える街の裏社会で成り上がっていく、というのが『Vice city』の大まかなあらすじです。

『Vice city』のあらすじは、アルパチーノの主演した「スカーフェイス」「カリートの道」といったマフィア映画や「マイアミ・バイス」にインスパイアされたことがよく知られており、当時のRockstar Gamesの作品がメインストーリー作りに映画を引用する代表例のような作品でもあります。

2000年代初頭、ビデオゲームが進歩したとはいえ、世界観やストーリー作りに映画を参照する事例は日本はもちろん他の国も例外ではなく、この時代は「インスパイア先の映画そのまんま」という印象は少なくありませんでした。

ただ、当時のRockstar Gamesのクリエイティブが映画にそのまま憧れることが安易だということではなく、これはRockstar Gamesならではのアメリカに対するパロディやシニカルな目線を描く延長で映画がある、という風に感じます。

トニーが車で疾走した、海沿いでビルが立ち並ぶ道路、そして夜中にぎらぎらと光るネオンに彩られた風景、『Vice city』の鮮やかな街並みは、消費文化が無邪気に花開く80年代の煌めきとともにあります。

そんな街の煌めきは、どうやら『GTA6』でも生き続けているようです。トレイラーにはバイスシティの街並みが、この20年で圧倒的に進歩したグラフィックスによって映されています。

トレイラーにはトニーが足を運んだであろうストリップクラブや、マリブクラブを思わせる場所も見受けられます。トニーはもともとのファミリーから島流しに遭ったわけですが、そこで一念発起して成り上がってゆく過程は(たとえ映画のパロディとか、80年代カルチャーの総体だとかあったとしても)爽快なものがありますよね。

あの80年代の煌めきも『GTA6』に引き継がれ、そして映画をリファレンスしたような豪華なストーリーがあるということでしょうか。でも私が考えるに、それはありえないでしょう

“ナチュラル・ボーン・キラーズ”

過去と同じ街を舞台としながら、まったく違う物語を提示する。それはすでに2008年の『GTAlV』の時点でも行われていたことでした。

『GTAlV』は『GTA3』と同じリバティーシティを舞台としながら、描かれたのは旧ユーゴスラビア出身の不法移民の主人公であり、アメリカン・ドリームを求めながら、アメリカン・ドリームが遠ざかるという冷たい現実を描いています。

本作が発売された同じ年、アメリカでリーマンショックが発生し世界金融危機が発生するというシンクロニシティもあり、「アメリカン・ドリームが通用しない現代」という嫌なリアリティを決定づけて見せたのでした。

『GTAlV』からRockstar Gamesはアメリカのパロディやシニシズムに加え、現代アメリカに対する批評とも言うべきストーリーテリングへ深化したと言うべきでしょう。では『GTA6』もまた、Rockstar Gamesによる現代アメリカの批評となると仮定すれば、なにが描かれるのでしょうか?

そのヒントは『GTA6』のトレイラー自体が現実のフロリダ州の出来事を引用した映像の繋ぎ合わせにあるでしょう。あれは「現代のテレビやインターネット、SNSをひっくるめたマスメディアの総体が現実を為している」という批評性を抱えています。

そして『GTA6』のストーリーを予想するうえで興味深いのが、顔面に刺青を入れた男「フロリダのジョーカー」ことローレンス・サリヴァンです。彼は『GTA6』のトレイラーを観て、「これは自分ではないか」と自らのTikTokにて告発する動画を投稿しました。

ここで私が注目したいのは、サリヴァンのRockstar Gamesへの訴訟金額でもなんでもなく、TikTokのようなソーシャルメディアを通し、ある人間が強力にアテンションを稼いでいくという風景です。

『GTA6』の主人公ルシアの話に戻しましょう。本作がボニーとクライドをモデルにするということで免れないのが、マスメディアの存在です。銀行強盗のカップルは1930年代の新聞で大々的に報じられ、失業し、貧困に追いやられた人々から喝采を浴びました。世界恐慌下のアメリカにおける銀行と警察という明確な相手と別に、なにより「マスメディアを通して存在を拡大する犯罪者」という、現代的な問題を先行していたとも言えます。

ボニーとクライドの犯罪劇から半世紀以上が経過し、むしろマスメディアは新聞からテレビ、ネット、そしてSNSと拡大を続けました。それはルシアの物語を予想するうえで興味深いでしょう。ルシアとそのパートナーがバイスシティで繰り返すであろう犯罪によって、SNSなどのメディアで存在を拡大させていく、というシナリオはありえそうな気もします。

この予想をベースにすると、映画「俺たちに明日はない」よりもむしろ1994年の映画「ナチュラル・ボーン・キラーズ」に似てくるのではないでしょうか。

こちらはミッキーとマロリーというカップルが全米で殺人を繰り返す姿に大衆が熱狂するという映画ですが、ふたりの殺人にはボニーとクライドのように、貧困に喘ぐ人々の心を癒す意味はありません。殺人犯の凶行がマスメディアによって拡大していくこと、その構造自体を問題とした一作です。

こうした映画の例を考えると、『GTA6』のルシアが起こしていく犯罪というのも、現代のSNSなどを通じて存在を拡大させていくというものになるのではないか、と思います。SNSによって拡大する危険な存在とは、日本でも無縁な存在ではないでしょう。

たとえば本邦では私人逮捕YouTuberや、女性支援団体に私怨から陰謀を見出し執拗に攻撃を続けるSNSアカウントとその一群など無視できないものであり、「俺たちに明日はない」と思わず呟いてしまいそうな、最悪なくらい悲惨な現実も広がっていますからね。

ここ10年、SNSや匿名掲示板を通して陰謀論が拡張していくような現実を目の当たりにしてきましたし、『GTA6』のルシアもまた、犯罪を注視する人間たちのやましい欲望に晒されるというストーリーもありえそうな気がしています。『Vice city』のトミーが見せた爽快な成り上がりのドラマから20年、現代のドラマは割り切れないグレーゾーンの世界になりそうだな……と感じます。

ルシアは老人となったトミーと出会うことはあるのでしょうか? トレイラーにはトミーが暮らした邸宅がある場所だって見えます。 いずれにせよ、Rockstar Gamesの現代世界を見つめる批評性が強く発揮されそうだというのは確かです。

ところでこの予想がひとつも当たってなかったら? 私に明日はない。予想を外しちゃったけど100万ドルとか200万ドルよこせとか言わないでね、とTikTokで配信するのみです。私がゲムスパジョーカーと化して配信するかどうかは2025年、『GTA6』発売の時に審判が下されるでしょう。


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《葛西 祝》

ジャンル複合ライティング 葛西 祝

ビデオゲームを中核に、映画やアニメーション、現代美術や格闘技などなどを横断したテキストをさまざまなメディアで企画・執筆。Game*SparkやInsideでは、シリアスなインタビューからIQを捨てたようなバカ企画まで横断した記事を制作している。

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  • スパくんのお友達 2023-12-18 10:09:36
    暇アノンぶちギレで草www
    3 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2023-12-18 9:19:15
    くっさ
    最後の最後に政治的な思想をねじ込むなよ気持ち悪い
    10 Good
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  • スパくんのお友達 2023-12-18 8:37:59
    ボニー&クライドみたいになるなら、パクリでいいからあのラストにして欲しいなあ。あんな○の無駄遣いもないけど、映画だからね。
    1 Good
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  • スパくんのお友達 2023-12-18 0:37:36
    ビューを稼げたモン勝ちのこの記事みたいな民度って…コト?
    22 Good
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  • スパくんのお友達 2023-12-17 23:00:09
    悪いことをするほど配信で人気になって金が入るぜ! みたいなシステム面白そい
    8 Good
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  • スパくんのお友達 2023-12-17 22:14:33
    トミーの物語は一見爽快な成り上がりに映るけど、そうでもないんだよな。特にリカルドの言動とそのリカルドから屋敷を乗っ取った後のトミーの振る舞いが同じなんだよな。部下を「無能」と罵るリカルド、部下に「乗れ、役立たずども」と罵るトミー。花瓶やビデオデッキにキレまくる短気なリカルド、仕事でミスるランスにも容赦なくキレる短気なトミー。優秀なトミーに死に際のリカルドは「信用していたんだぞ」と手を伸ばす。裏切ったランスを手にかけたトミーはのちにランスを偲ぶ。そのランスは最初こそトミーを「最高にクレイジーな奴」と褒めるも終盤で屋上へと追い込まれていく最中、「ヒステリー!」と言い方を変えていた。トミーの凶行っぷりに恐怖心を抱いていたのかもしれない。生き残ったケンすら「精神科に相談した方が」と心配していた。のちにケンは自業自得もあるがトミーに見捨てられてしまう。ランスには裏切られ、ケンも見捨ててしまうトミーはその時何を思ったのだろうか。ロビーナから「家族」と呼ばれて喜んだり、印刷所のおっちゃんに父親の面影感じて親身になったり、トミーベルセッティは豪快に見えて繊細で魅力溢れるキャラクターだったよ。
    15 Good
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  • スパくんのお友達 2023-12-17 21:00:41
    考察してる時が一番楽しいと個人的に思う
    妄想のネタになりそうだからこう言う記事はもっと欲しい
    16 Good
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  • スパくんのお友達 2023-12-17 19:47:30
    ゲムスパの記事は出来が悪いほど盛り上がるのでこういうので問題ない
    高品質な記事は他のメディアにまかせて、ゲムスパはあくまでも東スポ路線でいくべきだよ
    19 Good
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  • スパくんのお友達 2023-12-17 19:36:52
    GTAのことなら人気でるから無理に書いた出涸らし記事
    今の情報だけで考察なんて無謀だよ
    23 Good
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  • スパくんのお友達 2023-12-17 19:26:26
    誤字ってるのとちょっと残念な記事名を除けば、かなりの良記事。ボニー&クライド的なストーリーになることと、SNSもメイン要素になるのは何となくわかってたけど、その関連性には気付けなかったなぁ。もしこの予想通りだったらほぼほぼ「俺たちに明日はない」のリメイクみたいになりそう。
    12 Good
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