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「著作権侵害チェック支援ツール」の課題

2023年10月16日に開催された、文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第3回)。

ここで公開されている情報通信研究機構の資料のP13以降にて、NICTで開発中の「著作権侵害チェック支援ツール」について紹介がされていました。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoseido/r05_03/pdf/93954701_02.pdf

簡単に言うと「学習データとの類似度を計算して、一定の値以上であれば警告を出す」という形になっています。

人間が書いた文章でもたまたま似た文章になってしまうことはあるので、作成者が人間であっても、こうしたツールでチェックすることが義務付けられるといいなと思います。

ツールに公的な認証制度を設けて、このツールを使えば仮に著作権を侵害してしまっていたとしても罪には問われない、みたいな保証をしてくれるとうれしいのですが、どうなんでしょうね。

一方で、もろもろ開発における課題も挙げられています。技術面だけでなく、創作性の認定といった法律とのすりあわせも難しそうです。また警告の提示方法や品質、コスト面での課題も指摘されていました。

しかし私は、もっと他にも課題はあるように感じているので、ざっくり書いていこうと思います。

1: あらかじめ大量に著作物を生成しておき、それをチェック対象に登録することで、他者の著作物を訴えることができるのではないか

これはいわゆる商標権の先回り問題と同じようなことが起きるのではと言う話です。

ちょっと前に問題になった「ゆっくり茶番劇」の商標登録のアレです。

1年ほど前に、これを題材に短編小説を書いたこともあります。

『AI絵師イラスト集を販売している謎の業者に、自分で描いた同人誌を訴えられた件について』

「先に作ったもの勝ち」となるのは、クリエイターとしては困った事態になるでしょう。

AIなら新しい言語を作って回避しそうですけど。

2: 過去の著作物に新たな「盗作」が発見されるのではないか

大体の作家は「AIなんて使わなければ関係ない」みたいな顔をしていますが、こういうチェックツールが当たり前に使われるようになれば、過去の著作物への「身体検査」が行われるようになるでしょう。

そして類似箇所が一つでも見つかれば、それが意図的だったか偶然だったかにかかわらず、SNSに晒されて魔女裁判にかけられるわけです。

SNSのインプレッションも稼げるし、やる人は絶対出てくるでしょう。私人逮捕系YouTuberがいるくらいですから。

楽しいですね。見てる分には。

もし万が一、多くの作家にそうした類似点が見つかるようになったら、「それならAIが書いた方がいいよね」みたいな世界にもなるかもしれませんね。

3: ニュース記事が、直前に出された記事と類似する可能性があるのではないか

ニュースなんてネタは同じなわけで、直前に出たニュースとの類似度はかなり高くなると思われますが、それは許容されるべきなのでしょうか。

ニュースだけ特別扱いになるのは、ちょっと理解できませんね。

それに、もしも速く大量にいくつものパターンのニュース記事を出すメディアが存在した場合、他社は記事を出せなくなりそうです。

楽しいですね。

これは人間の作家でも同じことが起こりそうです。

作家は一年以上かけて大作を書くことだってあるわけで、三年書いて「さぁ出そう」というタイミングで、類似した作品が出てしまう・見つかることもあるでしょう。

その場合は書き直しになるんでしょうが、切羽詰まった出版社なら見てみぬふりして出版してしまうケースもあったりするんですかね。実情を知りませんが。

4: 歴史的・科学的事実は類似せざるをえないのではないか

事実についての記述も、少なからず類似してしまうものの一つだと思われます。

「宮沢賢治は1896年に生まれた。」なんて文章は、生年を「明治29年」に変えたり、「生まれた」を「誕生した」に変えるなど、ある程度パターンこそ作れますが、それなりに限界はありますよね。

そこにも作者の創意工夫をしなきゃならない、というのは現実的ではないと思います。太陽系の中心に太陽を置けなくなる日がくるのでしょうか。

「もう少し長い範囲で類似度を計算すればいいのでは?」という考えも浮かびます。

しかし五七五で構成される17音の俳句にも、著作権は発生するとされています。さっきの文章は17音以上ですからね。どう判断するべきでしょうか。

文章に創作的寄与があれば、みたいな話にもなりそうですが、小説という観点でいえば、「『宮沢賢治は1896年に生まれた。』という文章から始まらなければダメなんだ!」という作品が生まれる可能性は否定できないと思います。

そういう作品は、生まれてはいけなかったのでしょうか。

悲しいですね。

この記事は思いつきで適当に書いたので、オチはありません。

終わり。

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AIを執筆に取り入れた小説で、第9回日経「星新一賞」優秀賞(図書カード賞)。第2回AIアートグランプリ佳作。AI共作小説が『SFアンソロジー 新月/朧木果樹園の軌跡』掲載。日本SF作家クラブ会員。
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