pixivは2023年6月13日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴
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ずく、ずく、ずく、と一定のリズムで感じる痛みに目を閉じる。眉間を自らの指でほぐしてみても和らがない痛みに大きく息を吸った。
今日は朝から雨だった。シトシトと降り続くソレはお昼を過ぎた今も降り続いている。空が鈍色に染まっているせいで部屋が薄暗い。いつもなら陽の光だけで十分明るいのに。
昨日の夜から違和感があった。目の奥が疼くように痛くて、明日の天気予報は雨。気圧が下がるんだろうなと、この痛みは片頭痛の前ぶれだ。
ソファの上に体育座りをして、額を膝に押し付ける。痛い、痛い、と頭の中がずくずくした痛みでいっぱいになりそれしか考えられない。寝てしまいたい、でも寝れる気もしない、痛い。体勢を変えるのも辛くそのまま目を閉じやり過ごす。ドクドクと血液の巡る音がする。暗い脳の中は痛みと音でいっぱいだ。痛い、つらい、ドクドク、キリキリ、痛い、ずくずく、痛い、寒い、痛い。浅い呼吸を繰り返しながら眠りに意識を飛ばせずにぼんやりと時間が過ぎていく。
不意にギシリとソファのスプリングの音がして左側に傾く自身に、ハッと顔を上げれば七海さんがいた。
「おかえり、なさい」
「ただいま戻りました、頭痛ですか?」
「はい、すみません、出迎えもせずに」
「気にしないでゆっくりしてください」
ひどい顔をしている自覚があったが、七海さんは私に触れることなく寝室に着替えに行ってしまった。こんなみっともない姿見せたくなかったな、眠れなくとも無理にでもベッドに横になっていればよかった。頭を巡る後悔も、すぐに痛みが加わってきたので思考を止めた。
「顔色が悪いです、少し横になっては?」
「横になるの辛くて」
膝を抱えたまま顔だけ少し動かせば、ラフな部屋着になった七海さんがマグカップを二つテーブルに置き隣に座った。
「カフェインが痛みを和らげる効果があるそうです、飲めるようでしたら」
「ありがとうございます」
返事をするも手を伸ばす気力もなく、七海さんがこちらを向いて何かを考えているようだ。そもそも仕事帰りの七海さんに気を使わせてソファに居座っているよりベッドにいった方がいいだろう。七海さんもゆっくりしたいだろうし。思考を働かせれば追いつくように痛みがやってくる。なんて厄介なのだろう。早く、少し寝てきますっていって立ち上がりたいのに。
「少しこちらを向けますか?」
優しい声に顔を上げ体勢を七海さんの方にゆっくりと向けば、失礼しますという言葉と同時に子供を抱えるようにひょいと向かい合うように膝の上に乗せられた。驚きもあるが、優しいその手つきに一瞬頭痛というワードが頭から吹き飛んだようだ。
「体を預けていいので楽にしてください、寝てしまってもかまいません」
ぽんぽんと優しく優しく撫でられる背中に掌の温かなぬくもりが伝わる。広い胸に頭を預ければトクトクと鼓動の音が聞こえる。
七海さんはすごい、体温や匂いや仕草、すべてが特効薬の様に私の体に染み込んでいく。ずくずくと痛みしかなかった頭の奥に少しずつ微睡が広がっていく。
「ななみさん」
「なんですか」
「寝ちゃいそうです」
「それはよかった」
優しさしかない声色に、嘘みたいに眠気に支配される。温かい、気持ちがいい、安心する。目覚めたときはきっと頭痛も和らいでいるだろう。そんな核心のもと七海さんに包まれたまま意識を微睡に飛ばした。