今や謝罪会見は報道機関の記者だけではなく、誰でも気軽にスマートフォンやパソコン、テレビ越しに視聴できる時代だ。だからこそ会見に臨む経営者のちょっとした態度が火に油を注ぎかねない。では何に注意すべきか。心理学の観点から解き明かしていこう。

(写真=女性と人工知能:metamorworks/stock.adobe.com、背景:Stillfx/stock.adobe.com)
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 コミュニケーションデザインを研究するアップウェブ(東京・千代田)の藤田尚弓代表によれば、謝罪には許しを得るための王道の段取りがある。それは①謝罪を言語化する②相手をいたわる③責任を受容する③補償を約束する④原因を説明し、今後の対応を表明する──の5段階を踏むことだ。

 まず「申し訳ない」と謝り、「迷惑をかけ、大変な思いをさせた」と相手の立場に立つ。次に「私が悪かった」と認める。そして弁償について説明した上で、最後に「再発防止策をつくる」と打ち出す。この順番を間違えれば、相手の心理を逆なでしてしまう恐れがある。

 そして、いざ会見に臨む時には「負け戦」だと思うべし。こう説くのは、産業カウンセラーや人事コンサルタントとしても活動する東北大学の増沢隆太特任教授。増沢氏は「謝罪しなければいけないことがある時点でビジネス上、プラスにはならない。事態の沈静化を念頭に置くべきだ」と訴える。

■「炎上防止の新流儀」の連載予定
ビッグモーターとジャニーズ、会見後に炎上投稿23倍
・心理学から見る謝罪会見、NG行動ご用心 誰でも気軽に視聴時代(今回)
・博報堂系、過大請求で新疑惑 SNSでの内部告発が火種に
・正しい謝罪会見は日ごろの積み重ねから 速く誠実に、正確に
・ラーメン店vs酒蔵 非がなくても炎上、動じぬ姿勢で鎮火を
・危機管理のプロに聞く「2023年の謝罪会見どうだった?」

負け戦、記憶に残らないように

 負け戦という危機においては、経営者や組織はうろたえがちだ。平時から強権的なトップが右往左往するとなおさら、組織は力を発揮できなくなる。トップに対して部下が抱く尊敬の気持ちが悪い方向に働くからだ。

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