私と後輩(ショートショート)
(息抜きで書いたものです。あまり期待しないで下さい。少し過激な性表現が出てきます。苦手な方は閲覧をお控え下さい。)
性欲が旺盛なのだろうか、もしくは極度の寂しがりだろうか。
私の後輩は、大学内で知り合った先輩、同級生、後輩問わず、しかも異性に限らず同性まで喰らっていると噂されていた。
つい最近は、彼女が所属するテニスサークルの後輩の女の子とそういった関係を持ったという噂でサークル内は持ち切りであった。私も一度彼女に直に噂の真偽について聞いてみようと思ったことがあったが、否定されることは明らかだったし、その嘘は彼女自身の体裁を保つためではなく、相手を必要以上に傷つけないための嘘だということは明白であった。彼女はそういう人間だ。
偶然、帰り道に彼女と遭遇したので二人で歩いた。
「そういえば先輩って彼氏とうまくいってないんでしたっけ」
紙パックのいちごミルクから飛び出たストローを加えた後輩が、髪の根元が茶色になったプリン色の金髪ボブを揺らして言った。彼女の興味なさげな声色に呼応して、私もカラスが鳴くように「あー」と答えた。
「どうすんすか就職。彼のいるとこでするんすか、それともここでするんすか」
「んー、ここかなあ」
「へー、じゃあ別れるってことすか」
「だぁそんな簡単にいかないじゃない。まあでも遠距離が別れる理由になれば、それでいいかなと思ってるかな」
「んー」
「どう?どっちがいいと思う」
「いや私はここにいてほしいですけどね。先輩といつでも遊べるし」
ここで私が「あ!もしかして私まで食べるつもり〜〜??」なんてちょけて言ったとしたら、いや、大真面目に言ったとしても、彼女はこちらに目もくれず「はは」と噂を肯定も否定もしない返事することを私は知っていた。だから何も言わなかった。
「あんたは彼氏とかいらないの?」
「いらないとかそういうもんじゃないっすね、好きな人ができたら、その人を恋人にしたいです」
「告白されたらどうするの?」
「あー、でも私って私が好きな人のことが好きなんで、付き合うかもしれないっすね」
後日、例のテニサーの女の子が後輩に告白し振られたという噂が立った。ただこの場合は女の子がサークル内で泣きじゃくって女友達を囲わせていたので、ほぼ事実だろう。
「モテる女は辛いね〜〜〜〜」
「まあ、辛いっすね」
食堂で偶然会ったとき、嫌味たっぷりに後輩をイジったら嫌味たっぷりに返された。
「面白くないですか。ヤリマンがモテるのは」
「お」
初めてだった。彼女の口から彼女の噂に関する発言が飛び出た。しどろもどろになった私はラーメンをすすり
「ま、まあ、あなたの場合はヤリチンだかヤリマンだか分からないですけどね」
なんて、ひどくデリカシーのない発言をした。明らかにミスったことは確かだったが、それを聞いた彼女はニヤリと笑ってプリンを一口食べた(こいつは食堂に来たくせに何も買わず席だけ取りやがって、代わりに売店で買ったプリンを食べることで、食堂に居座る権利があると暗に主張していた)。
「なんすか、それ」
本当に、情けない話だが、私は彼女のその笑顔にキュンとしてしまったのである。
「そういえば先輩って、処女でしたっけ」
ああ、こいつやっぱりクソだ。
「彼氏いるんですけど」
「じゃあ、1人だ」
否定できなかった。事実だからである。
黙っていると、彼女が意地悪そうに私の顔を覗き込んで言った。
「地元に就職するんすよね。楽しみにしてますね」
……………………………………………………好きかもしれない。
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